ADHDやASDなどの発達障害のある方のなかには「なぜこんなに人より疲れやすいのか」「つらい疲れをどうにかしたい」と思ったことのある方もいるかもしれません。
発達障害の方は、脳や神経の特性、周囲の環境とのミスマッチによって、知らず知らずのうちに多くのエネルギーを使っています。
その結果、疲れが抜けにくく、日常生活や仕事、人間関係に支障を感じやすくなることがあります。
この記事では、ADHDの方が疲れやすい理由をはじめ、年齢や性別による違い、今日からできる対処法、医療や支援の選択肢までをわかりやすく解説します。
発達障害とは

発達障害の特性の現れ方や困りごとは人によって大きく異なり、周囲からは分かりにくいケースも少なくありません。
そのため、本人が「なぜこんなに疲れるのだろう」と悩みを抱えやすい傾向があります。
ここでは、発達障害の種類と疲れやすさに関わる特性について紹介します。
発達障害の種類
発達障害とは、生まれつき脳の働き方に特性があり、その特性によって日常生活や対人関係、仕事や学業で困りごとが生じやすくなる状態を指します。
発達障害は、主に以下のような種類に分けられます。
ADHD | 不注意、多動性、衝動性といった特性があり、集中の維持や行動のコントロールに困りやすい傾向がある |
ASD | 対人コミュニケーションの難しさや強いこだわり、感覚の過敏さなどが特徴 |
LD | 知的発達に遅れはないものの、読む・書く・計算するなど特定の学習分野に困難が生じる |
これらの特性は、子どもの頃から見られることもあれば、大人になってから気づくこともあります。
疲れやすさと関係しやすい特性
発達障害のある方が疲れやすいのは、日常生活の中で見えない努力を重ねていることが多いためです。
たとえば、次のような特性が疲労と結びつきやすいとされています。
- 多動性・衝動性
- 感覚過敏
- 過集中
- 不眠・過眠
- 察することが苦手
こうした負担は周囲からは気づかれにくく、普通にできているように見える分、本人だけが消耗してしまうことも少なくありません。
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女性のASDの方は特に疲れやすい傾向がある
女性のASD(アスペルガー症候群)の場合、社会に適応するためのカモフラージュ(擬態)がとても上手な方が多いと言われています。
その一方で、その適応努力が大きな疲労につながることがあります。
カモフラージュによる消耗 | 「周りと同じように振る舞わなければ」と、無意識のうちに表情や言動を調整し続けることで、心身のエネルギーを消耗してしまう |
普通にできているように見えるプレッシャー | 周囲から「問題なさそう」「しっかりしている」と見られるほど、助けを求めづらくなり、ひとりで抱え込んでしまうケースもある |
人間関係の気遣いによる疲労 | 相手に合わせすぎたりすることで、自分の気持ちを後回しにしがちで、その積み重ねが、強い疲れや帰宅後の感情の爆発につながる |
このように、発達障害でも疲れやすさに男女差があるケースもあります。
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子どもの発達障害も疲れやすさを感じやすい
子どもの発達障害も、実は心や体に大きな負担を抱えていることがあります。
じっと座っているだけで苦しかったり、衝動を抑えるために常に我慢していたり、周囲に遅れないよう必死に頑張っていたりと、子どもなりの見えない努力が続いているのです。
その結果、放課後にぐったりしてしまったり、家で癇癪が出たりすることもあります。
対処法としては以下のようなものがあります。
- 疲れているサインを責めずに受け止める
- できている部分を意識的に言葉にする
- 休憩や気持ちを切り替える時間を意識的につくる
- 必要に応じて、医療機関や専門家に相談する
「怠けている」「甘えている」と決めつけず、背景にある疲れに目を向けることが、子どもの安心につながります。
ADHDの方が疲れやすい理由は?

ADHDの疲れやすさは、単なる体力の問題ではなく、脳や神経の特性、環境とのミスマッチ、回復のしにくさなど、いくつもの要因が重なって生じています。
ここでは、ADHDの方が疲れやすくなる主な理由を、いくつかの視点から見ていきましょう。
脳・神経の特性による疲れ
ADHDの方は、脳の情報処理の仕方に特徴があり、日常生活の中で無意識のうちに多くのエネルギーを使っています。
その積み重ねが、慢性的な疲れにつながることがあります。
過集中による脳疲労
ADHDの特性の一つである過集中は、高い集中力を発揮できるという強みでもありますが、そのぶん脳はフル回転の状態が続きます。
食事や休憩を後回しにしてしまうことも多く、集中が切れた瞬間に一気に疲労感が押し寄せることがあります。
「好きなことをしているはずなのに、ぐったりしてしまう」という感覚は、この脳疲労が影響している可能性があります。
日常生活でのエネルギー消費
ADHDの方は、やりたいことが次々と浮かびやすく、行動量や思考量が多くなりがちです。
一つのことに集中し続けるのが難しく、気づけば同時にいくつものことを考えている、という方も少なくありません。
また、「失敗しないように気をつける」「衝動的に動かないように抑える」といった自己コントロールにも、多くのエネルギーを使っています。
こうした見えない消耗が重なることで、日常生活そのものが疲れの原因になってしまうことがあります。
身体をうまく動かせないため
ADHDと高い頻度で併存する発達性協調運動障害では、動作に無駄な力が入ったり、細かい作業に時間がかかります。
そのため、日常の動き一つひとつが負担になりやすく、「普通に生活しているだけなのに疲れる」という感覚の背景には、身体面での特性が関係していることもあります。
環境や対人ストレスによる疲れ
ADHDの疲れやすさには、周囲の環境や人間関係から受けるストレスも大きく影響しています。
ストレスを感じやすい
ADHDの方は、失敗体験を重ねやすかったり、周囲から注意を受ける機会が多かったりすることで、無意識のうちに強いプレッシャーを感じていることがあります。
「また迷惑をかけてしまうかもしれない」「ちゃんとしなきゃ」という思いが続くと、心が休まる時間が少なくなり、疲労感が強くなっていきます。
環境に合わせるために我慢をしてしまう
職場や学校、家庭などで「周りに合わせなければ」と頑張りすぎてしまう方も少なくありません。
休憩時間でさえ、会話に入るべきか、何か行動した方がいいのかと気を張ってしまい、十分に休めないこともあります。
周囲からは問題なく過ごしているように見えても、内側では無理を重ねているケースも多いのです。
感覚過敏によるもの
ADHDの方の中には、音や光、におい、肌触りといった感覚刺激に強く反応する方がいます。
空調の音や蛍光灯の光、人混みのざわつきなど、日常の何気ない刺激が大きなストレスになることもあります。
こうした刺激を完全に避けることは難しいため、外出や通勤・通学だけで疲れてしまうという方もいます。
回復しにくさによる疲れの蓄積
ADHDの疲れやすさは、疲れやすいだけでなく、疲れが取れにくいという点も特徴です。
睡眠の質の低下
ADHDの方は、寝つきが悪かったり、生活リズムが乱れやすかったりと、睡眠のコントロールが難しいことがあります。
十分な時間眠っているつもりでも、眠りが浅く、脳や体がしっかり休めていないケースも少なくありません。
その結果、疲労が回復しきらないまま翌日を迎え、疲れが蓄積していきます。
疲れを自覚しにくい
ADHDの方は、自分の疲れに気づきにくい傾向があるとも言われています。
夢中になっている間は疲れを感じず、限界を超えてから一気に不調が表に出ることもあります。
「気づいたら動けなくなっていた」「突然イライラが爆発した」という場合、実はかなり前から疲れがたまっていた可能性があります。
ADHDの疲れやすさを軽減する対処法

ADHDの疲れやすさは、「我慢すれば何とかなるもの」ではありません。
大切なのは、自分の特性に合った工夫を少しずつ取り入れ、疲れがたまりにくい状態をつくっていくことです。
ここでは、今日からできるセルフケアと、ひとりで抱え込まないための支援についてご紹介します。
今日からできるセルフケア
疲れやすさを軽減するセルフケアを紹介しますが、どれも完璧に行う必要はありません。
「これならできそう」と感じるものから、少しずつ試してみてください。
刺激を減らす工夫
ADHDの方は、音や光、人の気配などの刺激にさらされ続けることで、知らず知らずのうちに疲れをためてしまいます。
静かな場所で作業する、照明をやわらかくする、ひとりになれる時間を意識的につくるなど、小さな調整でも負担は軽くなります。
自分が疲れやすいと感じる場面を振り返り、刺激を減らせるポイントを探してみましょう。
タイマー活用
過集中による疲れを防ぐためには、タイマーで行動に区切りをつける方法が効果的です。
「15分だけ」「30分だけ」とあらかじめ時間を決めて取り組み、タイマーが鳴ったら一度手を止めて休憩を入れます。
こうすることで、好きなことに取り組みながらも、無理をしすぎずに済むようになります。
休憩をスケジュールに入れ込む
予定の中にあらかじめ休憩時間を組み込んでおくことで、「休んでいいのかな」と迷う必要がなくなります。
短い休憩でも、こまめに取ることで疲労の蓄積を防ぎやすくなります。
刺激を緩和させるグッズ活用
苦手な刺激がはっきりしている場合は、道具の力を借りるのも一つの方法です。
例えば以下のようなものを活用できる場合があります。
- 音がつらい場合:ノイズキャンセリングイヤホン
- 触覚が過敏な場合:肌触りの良い衣類
- 作業がしづらい場合:持ちやすい文房具
我慢するよりも避ける・減らす工夫を取り入れることで、日常の疲れは大きく変わります。
サプリメント
ADHDの特性による疲れやすさに対して、サプリメントを取り入れる方もいます。
集中力や注意力が続きにくい場合は、神経伝達物質の材料となる亜鉛・鉄・L-チロシンなどが選択肢になることがあります。
気分の波や落ち着きにくさが気になる場合は、オメガ3脂肪酸、マグネシウム、ビタミンDなどが検討されることもあります。
ただし、体質や症状によって合う・合わないがあるため、自己判断での使用は避け、医師に相談したうえで取り入れるようにしましょう。
一人で抱え込まないための支援
セルフケアだけで疲れを抱え続ける必要はありません。
周囲の支援を上手に使うことも、ADHDと向き合う大切な選択です。
会社に合理的配慮を頼む
職場では、業務の進め方や環境について、以下のような合理的配慮を受けられる場合があります。
- 作業手順を明確にしてもらう
- 静かな席への配慮
- 休憩の取り方を調整する
特別扱いを求めるのではなく、働きやすくするための調整として相談することが大切です。
医療機関やオンラインカウンセリング
疲れやすさが続いている場合は、精神科・心療内科やオンラインカウンセリングを利用するのも有効です。
専門家と話すことで、自分では気づけなかった疲れの原因や、無理のかかっているポイントが見えてくることがあります。
薬物療法や環境調整、考え方の整理など、状況に応じたサポートを受けることができます。
「こんなことで相談していいのかな」と思う必要はありません。
疲れを感じている時点で、相談する理由は十分にあります。
▶大人で感情のコントロールができないのは発達障害かも?対処法を解説
ADHDでの疲れを放置すると起こること

ADHDの疲れやすさをそのままにしていると、心身への負担が積み重なり、さまざまな問題が起こりやすくなります。
慢性的な疲労やストレス状態では感情や行動のコントロールが難しくなり、些細なきっかけでイライラが爆発したり、パニックを起こしたりすることがあります。
不安や不快感が強まることで大泣きや癇癪、自傷・破壊行為につながるケースもあります。
また、無理を重ねた結果、不安障害や抑うつ、強迫症状などの二次障害を併発するリスクも高まります。
疲れを軽視せず、早めに対処することが大切です。
ADHDの疲れやすさを軽減する治療法

ADHDの疲れやすさは、気合いや我慢で乗り切れるものではありません。
脳の特性や生活環境に合った治療や支援を受けることで、日常生活で感じる負担や消耗感を軽減することが可能です。
ADHDの疲労軽減に有効とされる代表的な治療法・支援方法は以下のようなものがあります。
治療・支援法 | 内容 |
薬物療法 | 脳内の神経伝達物質の働きを調整する治療。中枢神経刺激薬(コンサータなど)や非刺激薬(ストラテラなど)が用いられる |
カウンセリング | ADHDの特性理解を深め、認知行動療法(CBT)などを通じて対処スキルを身につける |
環境調整支援 | 生活や職場環境を特性に合わせて調整する支援。合理的配慮やタスク管理の工夫、家族・周囲の理解促進などを行う |
これらの治療や支援は、それぞれ単独で行うだけでなく、症状や生活状況に応じて組み合わせていくことが重要です。
その他の治療として、磁気刺激により脳の特定部位を活性化し、脳機能のバランスを整える「TMS治療」がありますが、現時点ではADHDへの効果を裏付ける科学的根拠は限定的です。
ただし、ADHDの二次障害としてうつ病を併発している場合は、うつ病に対する治療効果が期待できるケースもあるため、気になる場合は一度医師と相談してみるといいでしょう。
ADHDで疲れやすいなと感じたら早めに相談しよう
ADHDによる疲れやすさは、本人の努力不足や性格の問題ではありません。
脳の特性や感覚の敏感さ、環境への適応によって、日常的に大きな負荷がかかっている結果として起こるものです。
無理を重ねてしまうと、気分の落ち込みや不安、感情のコントロールの難しさなど、二次的な不調につながることもあります。
だからこそ、「疲れやすい」と感じた段階で立ち止まり、誰かに相談することが大切です。
『かもみーる』では、オンライン診療・オンラインカウンセリングサービスを提供しています。
オンライン診療は24時まで可能で、夜遅い時間でも相談したいと思い立った時に予約をすることができます。
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