ふとした瞬間、「どうして自分はミスが多いのだろう」、「周囲と同じようにできないのはなぜだろう」と感じた経験はありませんか?
それは、注意力や衝動性、行動のコントロールに関する特性によるものかもしれません。
特に大人になってから発見されることがある、ADHD(注意欠如・多動症)に当てはまるケースもあります。
この記事では、ADHDかもしれないと感じている方へ、その特徴や診断方法、治療法やサポートまでを詳しく解説します。
ADHDの可能性を感じたら

ADHDかもしれないと感じたとき、どうすればいいのか迷ってしまう方は少なくありません。
ADHDについての基礎知識や診断のポイントを知っておくことが大切です。
身近な困りごとの背景に隠れていることがあるため、特性を理解しておきましょう。
ADHDとは?
ADHD(注意欠如・多動症)とは、神経発達症の一種で、主に不注意・多動性・衝動性の3つの特徴が見られます。
子どもだけに限らず、大人になってから顕在化するケースもあり、大人のADHDと呼ばれる場合もあります。
本人の努力や性格ではなく、脳機能の違いによるものであることが、医学的に明らかになっています。
例えば、注意力を維持する脳の領域や、行動を抑制する機能の働きに違いがあるとされ、結果として生活上の困難につながるのです。
自分だけがつまづいていると感じていることは、実はADHDの特性によるものかもしれません。
ADHDの原因と診断のポイント
ADHDの原因は解明されていませんが、脳内の神経伝達物質(ドーパミン、ノルアドレナリン)の機能に違いがあることがわかってきています。
これにより、情報の整理や自己制御が難しくなるのも特徴のひとつです。
また、家族内に同様の傾向があることから、遺伝的要素も指摘されています。
診断は、心療内科や精神科で問診、行動観察、心理検査など多面的に実施されます。
本人の困りごとの背景を丁寧に探ることが大切で、他の疾患との区別も必要なため、自己判断ではなく専門医の診断が重要です。
ADHDと似た症状を引き起こす他の疾患
ADHDに似た症状は、うつ病や不安障害、睡眠障害などの他の精神疾患でも見られます。
例えば、うつ病による意欲低下や集中困難は、ADHDの不注意と誤認されることがあります。
自閉症スペクトラム症(ASD)や学習障害(LD)などほかの発達障害と併存することもあり、症状が重複するケースも少なくありません。
性格の問題として誤解されると、支援を受ける機会を逃してしまう可能性があるため、専門医による鑑別診断が不可欠です。
ADHDと他の障害の併存については、以下の記事でも解説しています。
▶自閉症とADHD(注意欠如多動症)の違いとは?診断基準や併存について解説
ADHDのセルフチェック・気づきのサイン

ADHDかもしれないと感じたときは、日常の中で見られる兆候を確認することが大切です。
ここでは、自分自身や周囲が気づきやすいポイントや、自己判断のリスクについて解説します。
日常生活で見られる症状とは
ADHDの方は、日常生活の中で以下のような傾向が見られます。
- 些細なミスを繰り返す
- 締め切りや予定を忘れる
- 集中が続かない
- 静かにする・待つのが苦手
- 衝動的に行動するなど
例えば、約束を忘れることが多かったり、重要な書類をなくしてしまったりといった行動が重なると、周囲との関係にも影響します。
このような状態が続くと、本人にとっても大きなストレスになります。
また、努力が足りないと誤解される場合もあるかもしれません。
ADHDは、周囲の理解と適切なサポートが重要です。
自分や周囲が気づきやすいサイン
ADHDの方は、自覚がないまま日常生活に支障をきたしていることがあります。
- 会話中に話を聞いていない
- 忘れ物が多い
- 時間管理が苦手・遅刻が多い
- 落ち着きがなくそわそわしている
- 物事を最後までやり遂げるのが苦手など
家族や職場の同僚から、このような指摘を受けて、初めて自分の特性に気付くこともあります。
サインに気付いた場合は、専門の医療機関へ相談して診断を受けることで、適切な支援につながるきっかけになります。
ADHDの自己診断とリスク
インターネット上には、ADHDのセルフチェックテストがありますが、あくまで簡易的なものであり、正式な診断にはなりません。
自己判断で「自分はADHDだから仕方ない」と決めつけてしまうと、他の疾患の可能性を見逃すリスクがあります。
正確な診断と適切な対応のためには、医療機関で専門医に相談することが重要です。
早期の受診が、将来的な生活の安定につながります。
医療機関の診察と治療の流れ

医療機関を受診する際には、あらかじめ流れを知っておくことで安心感につながります。
ここでは、診察の準備から診察の流れ、治療方法までを解説します。
受診前に準備しておきたいこと
初受診のときは、過去の出来事や現在困っていることを記録して持参すると、スムーズな診察ができます。
例えば、どのような場面でミスをしやすいか、子どもの頃から気になっている特性などを、具体的に書き出してください。
家族や知人による第三者の視点からの情報も診断材料になるため、診察前に聞いておくとよいでしょう。
診察時は緊張して上手く伝えられないこともありますが、準備しておくことで診断の助けになります。
医療機関の診察の流れ
診察ではまず問診が行われ、医師が本人や家族に対して現在の生活状況、症状が現れた時期や頻度、日常の困りごとなどを丁寧に聞き取ります。
次に、心理検査や行動評価スケールが行われる場合もありますが、使用ツールは年齢や症状、医療機関により方法は異なります。
代表的な評価ツールには、成人ADHD自己記入尺度(ASRS)やConners成人ADHD評価尺度などがあるため、医師の指示に従って検査を受けましょう。
また、補助診断として、脳波検査(QEEG検査)が行われることもあります。
そのほかに、ADHDと似た症状を示す他の疾患(うつ病、不安障害、甲状腺機能異常など)を判断するための身体検査や血液検査が行われることもあり、これらを総合的に見ていきます。
診断には、DSM-5(精神疾患の診断・統計マニュアル)やICD-10/11(WHO国際疾病分類)を用い、診断基準に該当するか判断します。
診断後は、本人の困りごとや生活状況に応じて、治療方針を立てていく流れです。
脳波検査(QEEG検査)については、以下の記事でも解説しています。
▶ADHDの脳波の特徴とは?QEEG検査による発達障害の診断補助について解説
治療方法
ADHDの治療は、薬物療法と非薬物療法の併用が一般的です。
薬物療法では、脳内の神経伝達を助ける薬(例:コンサータ、ストラテラなど)が処方され、集中力の向上や衝動の抑制効果が期待できます。
一方、非薬物療法としては、認知行動療法、時間管理トレーニング、家族支援などがあります。
日常生活のなかで実行可能な工夫を積み重ねることが、困りごとの解消につながるため、サポートを受けることが重要です。
ADHDと診断された場合の具体的なサポート

診断を受けた後は、症状に合わせたサポートを受けることが大切です。
ここでは、薬物療法・非薬物療法の選択肢や、生活改善、職場・学校の支援について解説します。
薬物療法と非薬物療法の選択肢がある
ADHDの治療には薬物療法と非薬物療法があり、症状や状況、本人の希望を踏まえて選択されます。
薬物療法は、脳内の神経伝達(ドーパミン、ノルアドレナリン)の働きを改善する薬を用いる治療です。
代表的な薬には、コンサータ、ストラテラ、インチュニブなどがあり、集中力や衝動のコントロールを助ける効果が期待できます。
副作用として食欲減退や不眠が出ることがあるため、定期的な診察で効果とリスクのバランスを確認することが必要です。
非薬物療法は、薬を使用しない方法で生活の質を向上することが目的です。
認知行動療法(CBT)、時間管理トレーニングなどが活用されます。
生活習慣や課題に合わせた行動計画を作成し、成功体験を積み重ねることで長期的な改善を目指します。
これらを単独あるいは併用するのが、ADHDの治療です。
生活習慣の改善と工夫のポイント
生活リズムの安定は、ADHDの症状の緩和に大きく影響します。
毎日同じ時間に起床就寝するリズムを作る、バランスの良い食事をする、軽い運動を習慣化するなどが基本です。
タスク管理アプリやアラームを活用して時間を可視化すると、忘れ物や遅刻の予防になります。
特性に合わせ、物の置き場所を固定する定位置管理も有効です。
集中力が途切れやすい場合は、作業を細かく区切って行うなどの工夫もおすすめです。
一度に全て取り入れる必要はなく、少しずつ習慣化していくことで継続しやすくなるでしょう。
職場や学校でのサポート体制
職場や学校では、ADHDの特性を周囲に理解してもらい、サポート体制を整えることも重要です。
職場では、業務の優先順位を明確にする、集中できるように作業場所を静かな環境にする、指示は書面で提示してもらうなどの配慮が効果的です。
学校では、授業中の座席配置や課題の分割提出など、学習に集中しやすい環境づくりが有効な支援になります。
障害者雇用制度や障害者差別解消法に基づく合理的配慮の申請も可能で、これらを活用することで社会生活の不安を軽減し、生活のしやすさが向上します。
早期発見と受診のメリット

ADHDは、早期に発見し、適切に対応することで、生活への影響を軽減することが可能です。
ここでは、早めの受診がもたらす効果や、メリットなどについて解説します。
早めの受診がもたらす効果とは
早期にADHDと診断されることで、適切な治療や支援を早めに開始でき、生活上のトラブルや二次的なメンタル不調を防ぎやすくなります。
例えば、仕事のミスが減る、学業での集中力が向上する、人間関係の誤解が減るなどの効果が期待できます。
また、困りごとに対応しようとして過度なストレスにより発症する二次障害であるうつ病や不安障害などの併発症状を、未然に防ぐことにもつながるのです。
本人の自己肯定感やモチベーションが保たれやすくなり、将来的な選択肢も広がります。
特に子どもの場合は、学習支援や学校での配慮を受けられる時期が早いほど、成長へ良い影響を与えます。
発達障害の二次障害については、以下の記事も参考にしてください。
▶発達障害で併発しやすい病気や症状とは?二次障害の治療方法についても解説
受診をためらう方もいる
「他人に障害があると知られたくない」、「診断を受けるのが怖い」といった心境から、受診をためらう方は少なくありません。
また、ADHDに対する社会的な偏見や誤解が影響して、診察を後回しにしてしまうケースもあります。
しかし、ADHDの診断は、本人の価値を決めるものではなく、困りごとを軽減して生活をより良くするためのものです。
診断を受けることで、適切な薬物療法や生活支援を受けることができ、抱えていたストレスや生きづらい感覚を減らすきっかけになります。
医療機関を受診するメリット
医療機関を受診するメリットは、正確な診断と専門的な治療方針を立てられることです。
専門医による問診や検査で、セルフチェックでは見抜きにくい併発疾患や、類似症状の診断も行うことができます。
また、診断を受けることで、職場や学校での配慮や公的支援制度の利用が可能になります。
就労支援サービスや障害者手帳の取得、学習支援プログラムなど、自分に合ったサポートを受けられるのは、大きなメリットです。
これにより、家族や周囲への説明もしやすくなり、理解と協力を得やすくなります。
適切な治療と環境調整をすることで、自分の能力を活かせる生活を送る助けになるでしょう。
まとめ
ADHDは、本人の努力不足や単なる性格の問題ではなく、脳機能の特性による発達症のひとつです。
注意力の持続が難しい、忘れ物やミスが多いなどの特徴があり、大人になってから気づくケースも少なくありません。
自分はADHDかもしれない、と感じたら、正しい知識を持ち、専門の医師に相談することが大切です。
早期の診断と適切なサポートにより、日常生活での困難を軽減し、自分らしい生活を送る助けになるでしょう。
診断を受けることで自分の特性を客観的に理解でき、自己肯定感の回復や人間関係の改善にもつながります。
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ADHDかもしれないとお悩みの方や、日常の困りごとを軽減したいとお考えの方は、ぜひお気軽にご相談ください。
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