うつ病は大人だけでなく、子どももかかることがある病気です。
思春期の中学生という時期は、身体的・心理的・社会的な変化が一度に押し寄せる非常に不安定な年代であり、不登校や引きこもりにつながることもあります。
子どもうつ病では、典型的な症状の「気分の落ち込み」とは正反対の「イライラや怒りっぽさ」が見られることもあり、子どものSOSサインを見逃さないことが大切です。
この記事では、中学生のうつ病の特徴や症状、成人のうつ病との違い、原因や対処法などについて解説します。
中学生もうつ病になることがある

昔は子どもはうつ病にならないと考えられていましたが、1970年代頃になると小児のうつ病についての研究が始まりました。
うつ病は20〜30代で発症することが多いとされているものの、小学校や中学生といった子どももうつ病になることがあります。
うつ病は学齢期の有病率が1~2%、思春期の有病率は2~5%とする報告もあり、成人だけがかかるわけではありません。
(参照:清田晃生『児童・思春期におけるうつ病と自殺行動』)
小学校から中学校への移行期にかけてうつ病が深刻化しやすい
うつ病は、小学校から中学校への移行期にかけて深刻化しやすいとする報告もあります。
小学生6年生では1.4%だったうつ病有病率は、中学1年生では4.1%に増加します。
小学校から中学校への進学は環境変化が大きく、子どもはストレスや不安を感じがちです。
「環境が変わってから様子が明らかに違う」「以前より楽しそうな時間が減った」など、子どもの変化に注意を向けてみましょう。
(参照:松原耕平、佐藤寛、髙橋高人、石川信一、佐藤正二『小学校から中学校への移行期における子どもの抑うつ症状の発達的変化』
中学生のうつ病は早期治療が大切な理由

他の病気と同じように、うつ病も早期発見・早期治療の方が回復が早くなります。
成長過程にある時期だからこそ、早い段階で適切な対応を行うことが、その後の回復や生活の質に大きく影響します。
ここでは、なぜ中学生のうつ病において早期治療が重要なのかを解説します。
悪化や再発のリスクがあるため
うつ病は、症状が軽いうちに対応しないと、徐々に悪化してしまう可能性がある病気です。
また、子どものうつ病は再発リスクが高いため、早めに治療を始めて、長期間にわたって焦らずじっくり向き合っていく必要があります。
他の精神疾患を合併する可能性があるため
うつ病は、不安障害や適応障害、摂食障害など、他の精神疾患を引き起こすこともあります。
また、思春期は気分が高揚する躁状態とうつ状態を繰り返す「双極性障害」を発症しやすい年代であるため、いきなり活動的になった場合にも注意が必要です。
双極性障害はかつては「躁うつ病」といわれていましたが、うつ病とは全く違う病気で、治療法も異なります。
将来の機会損失につながるため
中学生の時期は、学習や人間関係、自己形成においてとても大切な時期です。
うつ病による不調で不登校や成績低下が続くと、「自分はできない」「周囲から遅れてしまった」と自己肯定感が低下してしまい、将来への意欲や挑戦する気持ちにも影響します。
子どもの将来の可能性を守るためにも、早めの対策を検討しましょう。
(参照:清田晃生『児童・思春期におけるうつ病と自殺行動』)
中学生のうつ病で多く見られる症状

中学生のうつ病では、「気分の落ち込み」「憂鬱な気分」「好きだったことへの興味を失う」などの他にも、以下のような身体症状や行動として症状が現れることがあります。
- 朝起きられない
- 元気がない
- 頭痛や腹痛がある
- 食欲がなくなる(もしくは食べ過ぎる)
- 学校に行きたがらない、行けない
- イライラしている、怒りっぽい
- 家族と話さなくなる、無口になる
- 部屋に一人でこもるようになる
- 暴力・暴言が目立つ
- 成績が下がった
- 体重が減る(もしくは体重が増えない)
軽症や初期のうつ病の場合、「ちょっと疲れているのかも」など単なる疲れやストレスと勘違いしやすく、本人や周囲もなかなか気付けないことが多いです。
中学生のうつ病の特徴とは?成人のうつ病との違い

中学生のうつ病も多くの部分で成人のうつ病と共通しているものの、いくつかの違いも見られます。
典型的な症状とは異なる場合がある
中学生のような児童思春期のうつ病の場合、成人のうつ病で見られる典型的な症状とは異なる症状が見られることがあります。例えば、以下のような症状です。
- 不安や希死念慮があるものの、食欲はある
- 抑うつ気分よりもイライラや怒りっぽさが目立つ
- 体重減少は見られないが、成長に見合った体重増加がない
うつ病の典型的な症状である気分の落ち込みとは正反対に見えるイライラや攻撃性(親への暴言・暴力など)、多動などが見られることも多いです。
(参照:高橋長秀『小児期のうつ病・うつ状態』)
落ち込みを言葉で表現できず、身体症状が多く見られる
小学校のときと比べればある程度自分の状態の把握や表現ができるようになってくるものの、中学生の成長には非常に大きな個人差があり、自分の気分の落ち込みをうまく表現できない子どももいます。
そのため、子どものうつ病では、「朝起きられない」「頭痛や腹痛がある」「夜眠れない、途中で目が覚める」など身体症状として前面に出ることも少なくありません。
また、自傷行為といった行動として見られることもあります。
親に相談できず一人で抱え込んでしまうことがある
親の顔色や反応が気になったり、家庭環境に問題があるなどの理由で、誰にも相談できずに悩みを抱え込んでしまうケースも少なくありません。
「悲しませたくない」「どう説明していいか分からない」と我慢を続けた結果、保護者が気づいた時には症状が進んでいることもあります。
日常会話の中で体調や気分をさりげなく確認したり、子どもが話しやすい雰囲気を保つ工夫が大切です。
抗うつ薬の効果が期待できないことがある
中学生を含む思春期のうつ病では、抗うつ薬の効果が成人と比べて少ないとされています。
また、18〜24歳未満の方の場合、抗うつ薬によって希死念慮(自殺念慮)が増加するリスクがあるとされ、薬物療法を行うときは効果と副作用を考慮したうえで、慎重に検討する必要があります。
中学生のうつ病の原因

うつ病を発症する原因は明確にはわかっていないものの、環境やつらい出来事、生活習慣や季節などさまざまな要因が複雑に影響していると考えられています。
遺伝も影響するとされており、家族にうつ病の人がいる場合は、本人もうつ病になる確率が高くなります。
中学生のうつ病にもさまざまな原因が考えられますが、特に「環境要因(学校や家庭)」に大きく影響を受けるようです。
環境要因
うつ病の発症には、日常生活を取り巻く環境からのストレスが大きく影響します。中学生は自分で環境を選べず、逃げ場のないストレスを抱えやすい傾向にあります。
学校 | 家庭 |
・友人関係のトラブルや孤立 | ・保護者の過度な期待や比較(兄弟・他人との比較) |
発達障害
子どものうつ病の場合、発達障害が影響しているケースもあります。
発達障害の特性による環境との不一致やストレスの蓄積により、二次障害としてうつ病を引き起こすことがあるとされています。
▶ADHD(注意欠如・多動症)とは?発達障害との関係や特徴、対応法を解説
中学生のうつ病の診断基準

うつ病を含む精神疾患は、DSM-5(精神疾患の診断・統計マニュアル)やICD-10(国際疾病分類)といった国際的な基準を元に評価します。
児童思春期のうつ病に対しても基本的に成人と同じ診断基準が用いられ、問診や検査によって情報を集め、医師が慎重に診断します。
中学生の場合、本人だけでなく保護者や学校の先生など周囲の大人に質問票などを使って問診することもあります。
- 抑うつ気分がある(小児や青年はイライラも)
- 興味や喜びを感じられない
- 無気力感がある、疲れやすい
- 食欲減退または増加がある
- 思考力や集中力の低下がある
- 不眠または過眠がある
- 消えてしまいたいと思う など
上記のような症状がほとんど一日中起こり、2週間以上続くといったことなどが、うつ病の診断基準です。
医師による診断は「他の病気との鑑別」も重要な目的の一つです。
思春期に多く見られる病気の「起立性調節障害(起立時にめまいや動悸が起こる自律神経の機能失調)」でもうつ病に似た症状が起こることがあります。
また、甲状腺機能低下症(甲状腺ホルモンが不足する病気)でも同様の症状が起こることがあり、うつ病以外の病気の可能性を除外するために血液検査を行うこともあります。
(参照:高橋長秀『小児期のうつ病・うつ状態』)
うつ病かも?と思ったときの対処法

「もしかしてうつ病かもしれない…」と思ったら、放置せず、早めに対処することが大切です。
休みを取りしっかり眠る
「気分の落ち込みがある」「憂鬱な気持ちがある」というときは、無理をするのではなく、まずはしっかり休むことが大切です。
無理に登校を促すのではなく、まずは安心して休める状況を作った方が、本人も悩みを打ち明けやすくなるでしょう。
ただし、真面目で責任感が強い子の場合、学校を休んだり、遅刻や早退をすることに抵抗を持つこともあります。
このような場合は学校の先生や医師と相談して、安心して休める環境を作ることから始めましょう。
生活習慣(食事・運動・睡眠)を整える
生活習慣は子どもの心や身体の健康に大きな影響を与えるため、すぐには無理でも、少しずつ整えていきましょう。
規則正しい食事、適度な運動、質の高い睡眠は、気分の安定を支える土台になります。
保護者の方が「◯◯しなさい」と伝えるだけでは長続きしないため、一緒に食事をとる、短時間の散歩を取り入れるなど、負担が少ないことから始めてみるのがおすすめです。
抱え込まず周囲に相談する
「うつ病かもしれない」と思ったら、一人で抱え込まずに周囲に相談することが大切です。
中学生の場合、保護者の方に相談するか、難しい場合は養護教諭(保健室の先生)やスクールカウンセラーに相談してみてもいいでしょう。
『精神保健福祉センター』や『こころの健康相談統一ダイヤル』といった公的相談窓口もあります。
また、精神科・心療内科で医師に相談するのも一つの方法です。
本人はもちろん、中学生のお子さんのうつ病について保護者の方が相談することもできます。
オンライン診療やオンラインカウンセリングを行っているところもあり、自宅から空き時間に相談することも可能です。
保護者の方自身が相談することで、子どもの状態や関わり方がわかれば、精神的な負担を軽減できます。
中学生のうつ病の医療機関での治し方

精神科や心療内科といった医療機関では、以下の3つの方法を組み合わせて治療を進めていきます。
- 環境調整(ストレスを特定し可能な限り取り除く)
- 精神療法(カウンセリング、心理療法)
- 薬物療法
中学生のうつ病には環境要因が影響していることが多く、ストレスの原因(いじめや学業、家庭の問題など)を特定して、環境調整を行います。例えば、いじめが原因であれば一時的に学校を休むなどです。
精神療法では、認知行動療法やカウンセリングによって、柔軟な考え方ができるよう促したり、思考や行動パターンを改善させ、ポジティブに変えていきます。
症状が強い場合や改善が見られない場合は、薬物療法が検討される場合もあります。
ただし薬には副作用があり、子どもの場合は成人とは異なるリスクがあるため、慎重な検討が必要です。
うつ病の子どもへの接し方で家族が注意するポイント

「子どもがうつ病かもしれない」と思ったら、以下のポイントに注意しましょう。
- よく話を聞き、気持ちを否定しない
- 子どものSOSサインを見逃さない
- 背負いすぎず保護者も相談先を見つけてサポートを受ける
子どもが気持ちを打ち明けてきたときは、まずは話にしっかり耳を傾けることが大切です。
保護者自身も不安や焦りを抱えやすい状況ですが、「治そう」「元気にさせよう」と力を入れすぎないようにしましょう。「親のせい」と自分を責めがちですが、うつ病の原因は複雑で、家庭だけが原因とは限りません。
また、生活リズムの乱れ、表情の変化、好きだったことへの無関心など、小さな変化が続いていないかを観察することも重要です。
▶うつ病の人への接し方│やってはいけないこと&避けるべき言葉や心構えを解説
うつ病は早期発見・早期治療が大切。早めの相談を
中学生のうつ病では、大人とは異なる症状が見られることもあります。
思春期に見られる行動と区別しにくいことがありますが、「以前と比べてどうか」「生活に支障が出ていないか」といった点に注目してみましょう。
うつ病は、早期に気づき、適切な治療を行うことで回復が見込める病気です。
一方で、「思春期だから」「様子を見よう」と判断が遅れると、悪化したり、症状が長引いたりしてしまうことがあります。
うつ病かもしれないと思ったら、一度専門家に相談してみましょう。
オンライン診療・オンラインカウンセリングの『かもみーる』では、ご自宅からオンラインで医師やカウンセラーに相談可能です。
保護者の方もご相談いただけますので、「子どもがうつ病かもしれない」「病院に連れて行くべきか迷っている」など、お悩みや不安がありましたらお気軽にご相談ください。
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