不安神経症とは?症状や原因、診断や治療法、セルフケアも詳しく紹介

更新日 2025年12月30日

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日常の中で心配事や不安な気持ちを持つことは、誰にでもあるごく自然なことです。

しかし不安神経症の場合、不安で仕方ない・頭から離れないなど、その心配が過剰だったり眠れなくなったりするため、日常生活に支障をきたしてしまいます。

この記事では、不安神経症という疾患について、症状や原因・診断や治療方法について詳しく紹介します。

セルフチェックやうつ病との違いなど、不安が強い症状に悩まされている人に役立つ解説をしています。ぜひ参考にしてください。

※この記事では『不安神経症』『全般性不安症』『全般性不安障害』それぞれの名称が混在していますが、これらは一般的に同義で、その解説もしています。

不安神経症とは

不安神経症は、心配性というにはあまりに不安感が強い状態です。どのような特徴がある病気なのかを紹介します。

強い不安が続く不安症(不安障害)のひとつ

不安神経症とは、日常で誰でも考えるような心配事に対して、過剰な不安を抱え、それが日常的に続くという、不安症(不安障害)のひとつです(以下『不安障害』)。

不安障害とは、不適切で過剰な不安や恐怖を生じさせる精神疾患です。

不安障害にはいくつか種類があり、それぞれ以下のように、特定の心配事や恐怖の対象があります。

  • 社交不安障害:他者との交流の場や、人前で何かをすること
  • パニック障害:予期しない発作が起こることへの不安
  • 限局性恐怖症:高所・閉所など特定の対象や状況

不安神経症は特定の対象に固定されず、日常のさまざまなことが不安の対象となるため、心配事を一つ解消しても他のことが目に付き不安を強くするという状態を繰り返します。

心配事の内容自体は通常時と変わりはないですが、生活に支障をきたすほど不安を強く感じてしまう傾向があることと、それが長期的に持続することが通常時との違いです。

うつ病に似ている

不安神経症は不安感が強くネガティブな考えが慢性的に続くため、うつ病に似ています。

不安神経症はそれほど不安を感じていない時もあるのに対し、うつ病は常に気分が落ち込み、無気力で何事も楽しめないという症状が中核にある精神疾患というところが、うつ病との違いです。

しかし、不安神経症とうつ病は併発することがあるため、正確な診断と適切な治療を行うためには専門科の受診が必要です。

不安神経症と不安障害の違い

不安神経症は不安障害のうちの一つであり、不安障害は日常生活に支障があるほど強い不安が続く精神疾患の総称です。

不安障害には不安神経症の他に、以下のような疾患があります。

  • 分離不安症
  • パニック症(パニック障害)
  • 広場恐怖症
  • 社交不安症(社交不安障害)
  • 限局性恐怖症
  • 全般性不安症(全般性不安障害)

不安神経症は現在、一般的に『全般性不安症(全般性不安障害)』と呼ばれており、正式な診断名ではない、いわゆる「古い名称」です。

また不安神経症は不安障害という広い分類の中の、一つの精神疾患を指しています。

不安神経症の症状 

不安神経症は、持続する強い不安や心配に晒されることで、日常生活に支障をきたす症状が現れます。

不安神経症に見られる症状について紹介します。

精神症状と身体症状がある

不安神経症の症状には、不安の強い精神症状の他に身体症状が同時に見られることが多いです。

不安神経症の精神症状である過剰な不安や恐怖心は、自律神経に影響を及ぼして交感神経を優位にするため、自律神経が乱れたような身体症状を引き起こします。

不安は脅威やストレスから身体を守るための正常な反応ですが、本来は短時間だけの働きのものが不安神経症では慢性的になるため、自律神経が疲労して身体症状を招きます。

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不安神経症診断(セルフチェック)

不安神経症の初期症状は以下の通りです。

精神症状と身体症状の両方があるため、セルフチェックを行ってみましょう。

精神症状

身体症状

  • 漠然とした不安がある
  • 落ち着きがない
  • イライラすることが増えた
  • 集中力が低下した
  • 緊張が続いている
  • 神経が過敏になった気がする
  • 不合理を理解していても、その考えが頭から離れない
  • 動悸
  • 胸痛
  • 肩・筋肉のこり
  • 頭痛
  • 胃部の不快感
  • 吐き気
  • 発汗・ほてり
  • 冷え・震え
  • めまい・ふらつき
  • 疲労感・倦怠感
  • 眠れない
  • 喉の詰まり


このような初期症状が続いたのち、以下のようにして日常生活に支障が出るようになります。

  • 日常生活で家事や仕事など、できないことが増える
  • 失敗を恐れ緊張するため集中力が低下し、普段しないようなミスが増える
  • 周囲に理解されづらく楽観視されるため、感情を押し込め、心のバランスを崩しがちになる

その通りにはならないという自覚があっても、不安を制御することは困難であるため、些細な出来事から始まる強い不安状態が長く続くことになります。

不安神経症の原因

不安神経症の原因はまだはっきりと解明されていない段階ですが、さまざまな要因が複雑な形で関わっていると考えられています。

不安神経症を引き起こす原因として考えられている4つを紹介します。

遺伝要因

不安障害において遺伝要因が影響しているということについては研究報告がなされている通り、親兄弟に不安神経症の人がいる場合、発症リスクが高まると考えられています。

参考:不安障害の遺伝研究

これについては、他の不安症や気分障害(うつ病など)についても共通の認識があります。

神経症傾向である

『神経症傾向』の高い人は、環境からの刺激やストレスに対して敏感であり、不安や緊張が強いとされているため、不安神経症になりやすいとされています。

人の性格を判断する方法として提唱されている『ビッグ・ファイブ』と呼ばれる理論では、神経症傾向の他に以下の4つを合わせた5つの特性で人の性格を判断します。

参考:「記述形式による性格構造の分析

  • 外向性
  • 経験への開放性
  • 協調性
  • 誠実性

神経症傾向の人は他にも、心配性・動揺しやすい・イライラしやすいなど、不安神経症の発症リスクが高い傾向がある特徴を持っています。

また、成長の著しい時期にストレスの多い環境に晒されることで、脳の構造や機能に変化が生じるのも、不安症を引き起こす原因が形成される要因と考えられています。

ストレス

不安神経症は、ストレスがかかることが発症リスクを高めるとされています。

ストレスには仕事や学業に関するストレスから、人間関係・経済的・環境的なストレス、またそれらを原因として引き起こされる睡眠不足や体調不良などがあります。

大人になってから体験する社会生活における慢性的なものから、幼少期のトラウマ、重要な人間関係の破綻につながる事故・災害など、発症リスクとなるストレスはさまざまです。

不安神経症の診断

不安神経症において適切な治療を行うためには正しい診断が必要です。

不安神経症の診断における基準や必要な検査などを紹介します。

診断名は『全般性不安症(全般性不安障害)』

不安神経症の診断名は、全般性不安症(全般性不安障害)です。

不安神経症は、かつて全般性不安症(全般性不安障害)と診断されていたこともあり、本質的にこの2つの疾患名は同様の状態を指すとされています。

精神疾患の病名は時代によって変わることがあります。不安神経症の場合でも言われるように、精神疾患の原因がはっきり解明されていないものが多いためです。

研究が進み病気の内容の理解が変わることで新しい病名が登場するという背景もあり、不安神経症は現在、全般性不安症(全般性不安障害)として一般的な認識が進んでいます。

全般性不安症(全般性不安障害)を診断する『DSM-5』の基準

DSM-5の正式名称は『Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders, Fifth Edition』です。

日本語に訳すと『精神疾患の診断・統計マニュアル(米国精神医学会が発行)第5版』です。

日本でも多くの病院で使用されている精神疾患の基本的な定義を記したもので、世界共通の診断基準として用いられています。

DSM-5による全般性不安症(全般性不安障害)の診断基準は以下の通りです。

  1. 複数の活動または出来事に対して過剰な不安や心配がみられる日が、見られない日より多いという状態が、6ヶ月以上持続している
  2. その不安や心配はコントロールが困難であり、かつ以下の症状のうち3つ以上を伴っている
    1. 落ち着きのなさ・緊張感・または感情の高ぶり
    2. 疲れやすい
    3. 集中できない
    4. 怒りっぽい
    5. 筋肉が緊張している
    6. 睡眠障害がある
  3. 精神症状によって苦痛が生じているか、社会的または職業的機能が損なわれている。またその不安及び心配は、物質的使用または身体疾患によるものではない

参考:MSDマニュアル「全般不安症」

この基準に当てはまっている場合は全般性不安症(全般性不安障害。以下、この記事内では『不安神経症』とする)の可能性があります。

ただし、症状は人によって異なり、これによってセルフチェック的に判断しても明確な診断とはならないため、明確な診断のためには医療機関の受診が必要です。

内科的な検査も行う

不安神経症と診断するためには、原因となるような身体疾患がないことが診断の条件のため、身体疾患の可能性を除外するために内科的な検査を行います。

血液検査・心電図・脳波検査などを行い、心血管系疾患や呼吸器疾患、甲状腺機能亢進症や低血糖・薬物中毒・てんかんなどの疾患を除外します。

他の精神疾患との併発を確認する

不安神経症を含む不安障害は、うつ病を併発するリスクが高いとされているため、診断の際は他の精神疾患との併発も確認する必要があります。

併発している精神疾患がある場合、治療方針が変わったり、症状が長引いた場合に治療が難しくなったりするため、適切な治療を行うためにも早めの受診と診断が必要です。

不安神経症の治療方法

「不安神経症は治りますか?」との質問をよく耳にしますが、正しい診断と適切な治療法・ケアによって軽減や安定・寛解を目指すことが可能であるとされています。

不安神経症の治し方について紹介します。

認知行動療法(CBT)

認知行動療法は、不安神経症において広く用いられている精神療法です。

ストレスを感じた具体的な出来事を取り上げ、その出来事が起こった時の『頭に浮かぶ考え(認知)』と『振る舞い(行動)』について見直し、ポジティブな考え方に修正します。

学んだ内容を自宅などで実践する『宿題』も出るため、本人の努力も重要になります。

暴露療法

暴露療法は、怖いと感じるような状況に慣れていく精神療法で、徐々に恐怖心を感じやすい状況に身を置き、慣れていきます。

不安障害の治療では、適切な時点で不安に立ち向かい、克服して自信をつけることが必要です。

専門家のサポートの元で行われるため、調整しながら進められます。

薬物療法

不安神経症の薬物治療では、精神療法で思うような効果が得られなかった場合や、症状の程度が重い場合などに、抗不安薬や抗うつ薬を使用します。

抗不安薬や不安感を和らげ、抗うつ剤は不安や抑うつ症状を改善する効果が期待できます。

脳内の化学物質のバランスを調整するため、症状の緩和が期待できる療法です。

TMS治療

TMS治療(経頭蓋磁気刺激療法)は不安神経症を含む不安障害に対して「おそらく効果が期待できるだろう」といわれている治療法です。

不安症状に対するコントロールを目指して治療が行われますが、効果があった場合、認知の偏りの修正が可能になるのではと期待されています。

不安神経症やPTSDについてはある程度のエビデンスが集まりつつあるため、将来的に適応症になることもあるかもしれません。

参考:「不安障害の治療における非侵襲性脳刺激療法の治療効果に関する系統的レビュー

TMS治療はどんな治療?治療方法やメリット・注意点を徹底解説

セルフケア

不安神経症にはライフスタイルの改善や実践しやすい対処法など、セルフケア(自力)によって改善の手助けが見込める方法がいくつかあります。

以下のようなことが不安神経症の発症予防や経過安定につながると考えられています。

  • ライフスタイルの改善
    • 睡眠は質を上げてしっかりとる
    • 休養を定期的にとり、疲れをとる
    • 飲酒・カフェインをとり過ぎない
    • 適度な運動を習慣にする
    • 足りない栄養を補う
  • 実践しやすい対処法
    • 呼吸法:腹式呼吸法や4-7-8呼吸法などがある
    • ツボ押し:手首の内側のツボ『神門』を押す
    • 段階的筋弛緩法:筋肉を緊張させてから力を抜くリラクゼーション
    • ジャーナリング:感情を書き出して整理する
    • 香りや音楽:自分の好きなことを活用

精神疾患に対して、サプリメントの摂り方で補助的な効果が期待できるものもあります。

  • EPAとDHA:改善に気付く可能性が報告されているサプリメントの筆頭
  • セロトニン:幸せホルモンを増やす効果を期待したサプリ
  • セントジョーンズワート:リラックス効果が期待できるとされている

効果が期待できるといえども食品の域を出ませんが、過剰摂取による副作用の報告も散見されているため、医師に相談の上で用法・容量を守るなど、慎重な検討が必要です。

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不安神経症は早めの受診で適切な治療を始めることが大切

不安を抱えることは人が身を守る普通の反応ですが、心配性を過剰に通り越す不安や心配は、心身の疲弊や別の精神疾患を併発させる可能性があるため注意が必要です。

オンライン診療・オンラインカウンセリングの『かもみーる』では、不安神経症を懸念する人が相談しやすいオンラインでの利用が可能です。

なかなか周囲に理解されない不安神経症ですが、一人で抱え込む必要はありません。

早めの受診で適切な治療を始めるために、オンラインでのご予約をぜひ一度お試しください。

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