自閉症の手の動きの特徴は?動きが気になる場合の対処法も解説

更新日 2026年02月26日

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自閉症(自閉スペクトラム症/ASD)の子どもが見せる独特な手の動きに、驚いたことのある方も多いのではないでしょうか。

一見すると意味のない動作に見えるかもしれませんが、実はこの行動には深い意味が隠されています。

感情が高ぶったときに自然と出てくる表現であったり、不安を和らげるための手段であったりと、子どもにとってはとても大切な行動なのです。

この記事では、自閉症の手の動きの特徴について詳しく解説します。

常同行動がみられる理由・原因や対処法などもまとめているため、ぜひ参考にしてみてください。

自閉症の子どもの手をひらひらする動きとは?

自閉症の子どもが見せる手をひらひらする動きは、一見するとただの癖のように見えますが、実はその子なりの感情表現や心を落ち着けるための手段であることが多いです。

2歳〜3歳頃に見られるようになることが多く、嬉しい・楽しいなどの感情が高まったときや、特定の刺激に反応したときに現れます。

またこの動きは、常同行動(同じ動作を繰り返す行動)の一つでもあります。

自閉症の子どもは環境への感受性が高かったり、感覚の捉え方が独特であったりすることが多く、そうした背景が「手をひらひらする」といった身体の動きとして現れるのです。

特に感情のコントロールがまだ未熟な幼児期には、このような動作が顕著に見られやすい傾向にあります。

また、『逆さバイバイ』といって、手のひらを自分の方に向けたままバイバイと手を振る動きが見られることもあります。

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感情が盛り上がったときにする動作

手をひらひらさせる動きは、感情が高ぶった際によく見られます。

自閉症の子どもにとって嬉しいことや楽しい出来事があると、それを体で表現する手段としてこのような動作が自然に出てくるのです。

例えば大好きなキャラクターを見たときや、楽しみにしていた遊びが始まる瞬間などに、目を輝かせながら手をひらひらと振る姿が見られることがあります。

このような動作は、本人が感情をコントロールしきれずにあふれ出してしまうサインともいえます。

また言葉で感情を上手く伝えられない子どもにとって、動きは重要なコミュニケーション手段です。

手をひらひらさせるのは単なる癖や異常な行動ではなく、その子の内面を表す大切な表現方法と捉えられるでしょう。

セルフスティミュレーションと呼ばれる行動

手をひらひらさせる動作は、専門的には『セルフスティミュレーション(自己刺激行動)』と呼ばれるものです。

これは自分で自分の感覚を刺激し、感情のバランスを取るための行動で、自閉症の子どもによく見られます。

この行動は感情が高まっているときだけでなく、不安や緊張を感じている場面でも見られることがあります。

例えば慣れない場所や人が多い環境にいるときなど、ストレスを感じやすい状況で手をひらひらと動かすことで、安心感を得たり気持ちを落ち着けたりしているのです。

逆に、楽しい気持ちをより強く感じるためにこの動作をすることもあります。

つまり、セルフスティミュレーションはポジティブな感情とネガティブな感情の両方に関係しています。

手をひらひらする動きは定型発達児にも見られる

手をひらひらさせる動きは、自閉症の特徴として語られることが多いですが、実は定型発達児にも一時的に見られる行動です。

特に乳幼児期の子どもは、感情が高ぶったときや興味を引くものを見つけたときに、思わず手をひらひらと動かすことがあります。

これは発達段階における自然な表現の一つであり、成長とともに少しずつ減っていく傾向があるものです。

しかし自閉症や知的発達症のある子どもは、このような動作を長期的に繰り返す『常同行動』として示すことがあります。

自閉症の子どもは感覚の受け取り方に特徴があり、視覚や触覚など特定の刺激に強く反応する傾向があります。

そのため自分の感覚をコントロールするために、手をひらひらさせるなどの『セルフスティミュレーション(自己刺激行動)』を行うことがあるのです。

とはいえ手をひらひらする動きは定型発達児にも見られる動きでもあるため、過度に心配する必要はありません。

気になる場合は専門家に相談するというスタンスでいるのが望ましいでしょう。

自閉症の子どもによく見られる常同行動とは

自閉症の子どもによく見られる『常同行動』とは、目的や意味がはっきりしないにもかかわらず、繰り返し行われる特定の行動のことを指します。

例えば「手をひらひらさせる」「同じ場所をぐるぐる回る」「意味のない言葉を繰り返す」といった行動が代表的なものです。

これらは一見すると不思議な動きに見えますが、本人にとっては感情を落ち着けたり、自分の感覚を調整したりするための大切な行動であることが多いです。

常同行動は一般的に3歳頃までに現れ始め、年齢が上がるにつれて減少する傾向があります。

しかし自閉症や知的発達症などの発達障害を持つ子どもは、学齢期以降も継続して常同行動が見られることがあります。

また自傷を伴うような行動(頭を壁にぶつける、自分の体をつねるなど)が出ることもあり、注意が必要です。

常同行動の現れ方は個人差が大きく、すべての子どもに同じ行動が見られるわけではありません。

さらに、その行動の種類や頻度は年齢とともに変化することもあります。

特定の行動だけを見て障害の有無を判断することはできないため、他にも気になる点がある場合は、かかりつけの小児科医や発達相談機関などに相談することが大切です。

なお、常同行動は誰にでも見られる可能性がある行動です。

日常生活に支障をきたすような場合や本人が苦しそうに見える場合には、専門家のアドバイスを受けながら、必要な支援を検討していくと良いでしょう。

自閉症の子どもが常同行動をする理由・原因

自閉症の子どもが常同行動をする理由・原因として、以下の4つが挙げられます。

  • 不快な刺激を避けるため
  • 刺激を求めているため
  • ストレスを和らげるため
  • コミュニケーションの手段のため

ここでは上記4つの理由・原因についてそれぞれ解説します。

不快な刺激を避けるため

自閉症の子どもの中には、感覚に対して非常に敏感な子もいます。

光のちらつきや蛍光灯の音、洋服のタグの感触など、一般的には気にならないような刺激が強いストレスとなることがあります。

そうしたとき、常同行動をとることで不快な刺激を遮断しようとしているのです。

例えば大きな音がする場所で手をひらひらさせる行動が見られる場合、それは耳をふさぎたい、あるいは別の感覚に意識を向けて不安を和らげようとしているサインかもしれません。

視覚や聴覚、触覚など、子どもが苦手とする感覚を特定することで、過剰な刺激を避けやすくなります。

環境を整えることで、子どもが落ち着いて過ごせるようになることもあるでしょう。

刺激を求めているため

自閉症の子どもには感覚の鈍麻がある場合もあります。

このような子どもは周囲の刺激をあまり感じ取れないため、自分から強い刺激を作り出して感覚を補おうとする傾向があります。

これが『自己刺激行動』としての常同行動につながることがあるのです。

例えば物を叩いて大きな音を出したり、自分の体をつねったりするのも、感覚を得ようとするための行動です。

視覚的な刺激を求めて、手を目の前でひらひらさせて動きを楽しむ子もいます。

こうした行動は、子ども自身が快適さや楽しさを得るための方法でもあるため、一概に止めるべきものとは言えません。

ストレスを和らげるため

初めての場所や人が多い環境、不安を感じる状況などでは、自閉症の子どもは強いストレスを感じることがあります。

そのときに現れる常同行動は、心を落ち着けるための『自己調整行動』としての役割を果たしている可能性があります。

例えば病院の待合室で落ち着きなく歩き回ったり、同じ場所をぐるぐると回ったりする場合、それは「いつ終わるのかわからない不安」に対処しようとしているのかもしれません。

子どもにとって「次に何が起こるのか」が見えない状況は大きな不安につながります。

こうした場合には、これから行われることを説明したり、絵カードを使って視覚的に予定を伝えたりすることで、子どもが安心しやすくなります。

コミュニケーションの手段のため

言葉で自分の気持ちを伝えることが難しい子どもが、気持ちや要求を伝えるための手段として常同行動を起こすこともあります。

例えば「おもちゃが欲しい」「楽しい」「不快だ」などの気持ちを、奇声や手の動き、ジャンプなどで表現しているケースがあります。

こうした行動を見たときには、「何かを伝えたいのかもしれない」と視点を変えてみることで、子どもの気持ちを汲み取りやすくなるでしょう。

コミュニケーションの手段としての常同行動を理解することで、親子の信頼関係も深まっていきます。

自閉症の常同行動はやめさせた方がいい?

自閉症の子どもが見せる常同行動は、一見すると「やめさせた方がいいのでは」と感じるかもしれません。

しかしこうした行動には子どもなりの理由や意味が込められていることが多く、無理にやめさせようとするのは逆効果になることがあります。

手をひらひらさせるような行動は、感情の調整や安心感を得るための自己調整行動として行われていることもあるためです。

こうした行動を否定してしまうと、子どもは「自分のやっていることはいけないことなんだ」と感じ、自己肯定感が下がってしまうことがあるでしょう。

また「わかってもらえない」「気持ちを伝えられない」と感じることで、親子の信頼関係にも悪影響を及ぼす可能性があります。

ただし常同行動の中には周囲に危害を与えたり、自傷を伴ったりする危険なものもあります。

例えば頭を壁に打ち付けたり、自分の腕を強くつねったりするような行動は、子どもに危険が及ぶため対応が必要です。

この場合は、専門家と相談しながら適切な対処法を考えましょう。

それ以外の行動については、「なぜこの行動をしているのか?」という視点で観察し、子どもの気持ちに寄り添って受け止めることが大切です。

無理にやめさせるのではなく、まずはその行動の背景を知り、必要な支援や環境づくりを考えていきましょう。

自閉症の手の動きが気になる場合の対処法

自閉症の手の動きが気になる場合の対処法は以下の通りです。

  • 環境を整える
  • 行動を置き換える
  • 行動を指示する
  • コミュニケーションを広げる工夫をする
  • 専門家の力を借りる

ここでは上記5つの対処法についてそれぞれ解説します。

環境を整える

常同行動が気になる場合には、まずは子どもが過ごしやすい環境を整えることが大切です。

自閉症の子どもは感覚が敏感で、明るすぎる照明や大きな音などがストレスの原因になることがあります。

そういった刺激を減らす工夫として、間接照明を使う、イヤーマフで音を和らげる、物の配置を整理して視覚的にわかりやすい空間を作るといった方法が有効です。

お気に入りのぬいぐるみやブランケットなど、子どもが安心できるアイテムを近くに置いておくのも良いでしょう。

行動を置き換える

常同行動が、他人の迷惑になったり自傷につながったりするような場合は、別の行動に置き換えるのが効果的です。

例えば自分をつねるような行動がある場合には、触感のよいおもちゃや「プチプチ」などを使って、同じような感覚を安全に得られる方法を与えます。

また刺激を求めて手を動かしている場合には、トランポリンやスライムなど、感覚を満たせる遊びに誘導するのも一つの方法です。

行動を指示する

何をすればいいのかわからずに常同行動が出ている場合は、やるべきことを明確に指示するのが効果的です。

例えば学習時間に椅子に座って体を揺らしている場合、「鉛筆を持って、教科書を開こうね」と具体的な行動を促す声かけを行いましょう。

曖昧な指示ではなく、次にとるべき行動をはっきり伝えることで、子どもも見通しを持って行動しやすくなります。

コミュニケーションを広げる工夫をする

常同行動は、子どもなりの感情表現や意思表示の手段になっていることもあります。

言葉でのやりとりが難しい子どもには、視覚的なサポートやジェスチャーを取り入れて、より多くの方法で気持ちを伝えられる環境を整えましょう。

例えばイラストカードや写真を使って「これがしたい」「今はイヤ」といった気持ちを伝える練習をするのが効果的です。

子どもの動きが何を意味しているのかを丁寧に観察し、そこから会話のきっかけをつかみましょう。

専門家の力を借りる

家庭でできる工夫にも限界を感じるときは、無理をせず専門家のサポートを受けましょう。

例えば作業療法士による感覚統合療法では、感覚のバランスを整えるトレーニングを行い、常同行動を落ち着かせる手助けができます。

またリトミックや音楽療法などにより、楽しく自己表現できる機会を増やすのも効果的です。

地域の療育センターや発達支援施設には、子どもに合った支援方法を一緒に考えてくれる専門家がいるため、悩んでいる方は積極的に相談してみましょう。

自閉症の手の動きは感情や感覚の調整のための重要な役割を持つ

自閉症の子どもが見せる手の動きには、さまざまな意味が込められています。

これらの行動を「変わった癖」として否定するのではなく、「今どんな気持ちでいるのか」「何を伝えようとしているのか」といった視点で受け止めることが、子どもとの信頼関係を築くうえで重要になります。

専門家の力も借りながら、子どもにとって安心できる環境づくりを進めていきましょう。

かもみーる心のクリニック仙台院は、発達障害の診断や児童精神科の分野における診断にも対応しています。

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