「気付いたら食べ過ぎてしまう」
「満腹なのに食べるのを止められない」
「ストレスがかかると過食してしまう」
過食が続いたり、自分で食欲をコントロールするのが難しかったりして、不安や自己否定感を感じていませんか?
過食は周囲から誤解されがちですが、単なる「甘え」や「食習慣の乱れ」ではなく、うつ病や過食性障害といった病気が背景になって起こることもあります。
この記事では、過食とうつ病の関係、考えられる原因、過食性障害の特徴、セルフケアの方法、医療機関での治療方法などについて詳しく解説します。
食べ過ぎてしまうことに不安やつらさを感じている場合は、一度症状に向き合い、適切な対処法を考えてみましょう。
うつ病では過食が起こることがある

うつ病と聞くと「食欲が落ちる」というイメージを持つ方が多いかもしれません。
しかし、実際には食欲が増す・過食に傾くケースも多く見られます。
気分の落ち込みや不安を和らげる手段として食べる行動につながることがあり、本人の意思だけで制御するのが難しいことが特徴です。
ここでは、うつ病と関連して見られる過食について、3つのケースを紹介します。
1:「うつ病の症状」として過食が起こるケース
うつ病では食欲が低下することが多い一方で、過食が見られることもあります。
強い不安や抑うつ状態が続くと心身は常に緊張し、交感神経が優位な状態になります。本来は休息を担う副交感神経がうまく働かない状態です。
そこで、過食と消化を通じて副交感神経を働かせ、バランスを保とうとしていると考えられています。
また、気分の落ち込みや不安を紛らわすように過食してしまうケースもあります。
しかし、過食による満足感は長く続かず、食後は自己否定感や自己嫌悪感が強まってしまいがちです。
2:「非定型うつ病」が背景にある過食のケース
非定型うつ病はうつ病の一種で、一般的なうつ病と異なり、過食や過眠が目立ちやすいことが特徴です。
気分が一時的に回復する場面がある一方で、拒絶への過敏さや強い疲労感を伴うことが多く、日常生活に支障をきたします。
非定型うつ病での過食も、不安や虚しさ、焦燥感を一時的に和らげ、気分を調整するための行動であると考えられています。
特に欲求が強くなるのが、甘い物です。
糖分には抑うつ感を和らげる作用があり、特にチョコレートはセロトニンの材料になる物質が含まれているため、自己治癒のための行動とする説もあります。
ただし、甘い物による気分の改善は一時的で、食後には後悔や自己嫌悪が強まり、それが再び気分の落ち込みにつながるという悪循環につながってしまいます。
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3:「過食性障害/むちゃ食い症(BED)」を併発しているケース
うつ病と同時に、過食性障害(BED:Binge Eating Disorder)を併発している場合もあります。
過食性障害は「むちゃ食い症」とも呼ばれ、明らかに食べ過ぎな量を食べることを繰り返してしまう病気です。本人は強い苦痛を感じているにもかかわらず、食べ過ぎをコントロールできません。
うつ病と過食性障害は併存しやすく、うつ病による抑うつ気分や自己否定感が、過食性障害の発症や悪化に影響することもあります。(過食性障害について詳しくは後述)
過食と「食べ過ぎ」「大食い」との違い

過食と「食べ過ぎ」「大食い」は混同されがちですが、異なるものです。
「食べ過ぎ」は、外食やイベント時などに一時的に量を多く食べてしまう状態を指し、満腹感に応じて自然に止められることがほとんどです。
後悔はあっても、日常生活に強い支障をきたすほどになることは多くありません。
「大食い」も同様で、多少食べすぎたとしても、食べ過ぎて気持ちが悪くなるまで食べ続けたり、強い罪悪感を覚えるということはあまりないでしょう。
一方で過食は、短時間に大量の食事を摂り、「やめたいのにやめられない」という強い苦痛を伴う行動です。
美味しい食べ物をたまに食べ過ぎてしまうものの、健康を損なうほどではなく、心が元気になるのであれば、問題にはならないことが多いでしょう。
しかし、食べ過ぎを繰り返し、自分の意思ではコントロールできない状態の場合は、何らかの疾患が背景となった過食の可能性が考えられます。
過食・食べ過ぎにつながる原因

過食や食べ過ぎといった症状は、うつ病のような精神的な不調の他、ストレスやホルモンバランスの乱れが影響して起こることもあります。
ストレス
過食の大きな引き金として挙げられるのがストレスです。
仕事のプレッシャー、人間関係、環境の変化、将来への不安などが続くと、心は常に緊張状態になります。
ストレスを一時的に和らげる手段として、食べる行為につながることがあるのです。
「食欲」ではなく、悲しみや不安、怒りなどのネガティブな「感情」を満たすために食べることを『エモーショナル・イーティング(感情的摂食)』と言います。
ストレス解消法が「食べること」である人は過食が習慣化しやすく、注意が必要です。
ホルモンバランスの影響
過食には、ホルモンバランスの影響も考えられます。
女性の場合、生理前に食欲が止まらなくなることがありますが、これは女性ホルモンの「プロゲステロン」が主な原因です。
また、ストレスを感じたときに分泌されるストレスホルモンの「コルチゾール」が過剰になると、食欲を抑制する働きも持つ「セロトニン」の分泌が抑制され、食べ過ぎにつながります。
睡眠不足や慢性的なストレスは、食欲に影響する「レプチン(食欲を抑制するホルモン)」や「グレリン(空腹感を刺激するホルモン)」といったホルモンにも影響します。
うつ病などの精神的な不調
うつ病など精神的な不調では、気分の落ち込みや空虚感を埋める感情調整の手段として、過食が習慣化してしまうことがあります。
「食べることが悪い」と頭で理解していても止められず、苦痛を感じている場合は早めに専門家へ相談しましょう。
過食によってうつ病になることはある?

心と食欲には密接な関係があります。
うつ病やストレスなどが先にあり、その対処として過食が始まる場合もあれば、過食による自己否定感や罪悪感が抑うつ症状を強めたり、うつ病の発症につながる場合もあります。
過食を「意志の弱さ」と誤解して一人で抱え込んでしまうのではなく、早めに一度専門家に相談して、適切な対処につなげることが大切です。
過食性障害/むちゃ食い症(BED)とは

過食性障害は摂食障害の一つで、大量に食べ物を食べる行為が止められないことが特徴です。
ここでは、過食性障害でみられる症状や特徴、神経性過食症(過食症)との違いを紹介します。
症状
過食性障害では、以下のような症状が見られます。
- 食べ過ぎと理解していても止めることが難しい
- 早食いになる傾向がある
- 気分が悪くなるほど大量に食べる
- 空腹を感じていないのに大量に食べる
- 食後に罪悪感や自己嫌悪が強くなる
- 過食をしている恥ずかしさから人目を避けて食べる
- 代償行為(嘔吐や下剤の使用など)はない
特に「食べることをコントロールできず、強い苦痛を感じている」ことが大きな特徴で、これらの症状や「3ヶ月にわたって週1回以上の過食が見られる」といった基準を満たす場合、過食性障害と診断されます。
特徴
過食性障害は、長期化すると、以下のようなさまざまな合併症や障害を引き起こすことがあります。
- 抑うつ状態、うつ病
- アルコール依存症
- 胃腸障害・肝障害・腎臓障害
- 生活習慣病(脂質異常症、高血圧、メタボリックシンドローム、2型糖尿病、心臓病)
特に、うつ病や不安障害、双極性障害といった精神疾患との合併は多く見られます。
また、過食性障害では過体重や肥満の状態であることが多く、食べ過ぎは内臓に負担をかけ、生活習慣病のリスクも高めます。
心身の健康のためにも、放置せず早めに医師に相談することが大切です。
神経性過食症(過食症)との違い
過食性障害と神経性過食症(過食症)の大きな違いが、「代償行為の有無」です。
神経性過食症では、過食後に嘔吐や下剤の使用、極端な運動などの代償行為を行い、体重増加を防ごうとします。一方、過食性障害ではこれらの代償行為は見られません。
ただし、どちらも過食行動そのものに強い苦痛を伴い、適切な治療が必要であるという点では共通しています。
治療によって症状の改善が期待できるため、我慢せずに精神科や心療内科で相談してみましょう。
過食になったときに自分でできる対処法

ここでは、過食になったときに自分でできる対処法をいくつか紹介します。
なお、あくまでセルフケアの一つであり、医療機関で行う治療とは異なります。
うつ病による過食、過食性障害や神経性過食症が背景となった過食の場合は、早めに治療を受けることが大切であるため、自己判断せずに医療機関へ相談しましょう。
自分を責めないようにする
過食をしてしまうと、「また食べてしまった」「自分の努力が足りない」と自分を責めてしまいがちですが、責めること自体が症状を悪化させ、次の過食を招くことにつながります。
「過食は意志の弱さではなく、病気の症状によるものである」ことを理解して、自分を責めないようにしましょう。
自分の気持ちを書き出してみる
食べたくなったタイミングで、そのときの気分や出来事を書き出すことで、過食したい気持ちが落ち着くことがあります。
また、書いておくことで「何が引き金になっているのか」「どんなことがストレスにつながるのか」が見えやすくなり、症状の軽減にも役立つでしょう。
食べ物の買い置きをしない
可能であれば、過食につながる食品の買い置きを減らす工夫が有効です。
衝動的な過食は、手の届く場所に食べ物があることで起こりやすくなるため、簡単に食べられるスナックや冷凍食品、インスタント食品を買い置きせず、「今すぐ大量に食べられない環境」を作りましょう。
買い置きやまとめ買いをしないのが難しい場合は、取り出しにくいところにしまう工夫も対策の一つです。
食事のルールを作る
食べてしまったときの罪悪感や身体への負担を減らすため、食べる食品や食べ方のルールを決めておくのも効果的です。
例えば、「お菓子ではなくフルーツを食べる」「野菜をたくさん食べる」「お皿に乗せた分は食べていいことにする」などです。
無理なルールはストレスにつながるため、自分で「できそう」と思える前向きなルールを作ってみましょう。
医師やカウンセラーといった専門家に相談して、対策について専門的なアドバイスをもらうのもおすすめです。
食欲を感じた時の対処法を用意しておく
人には「◯◯のことは考えないようにしよう」と考えるほど、そのことについて強く考えてしまう心理があります。
そのため、食欲を感じたときは「食べてはいけない」と考えるのではなく、事前に代わりの行動を決めておくといいでしょう。
例えば、深呼吸をする、ストレッチをする、ガムを噛む、身体の手入れをする(爪磨き、歯磨き、マッサージなど)、コップ1杯の水を飲むなど、簡単にできる行動がおすすめです。
自分なりの対処法を持っておくことで、過食衝動に対処しやすくなります。
周囲に協力してもらう
信頼できる家族や友人に協力してもらい、食べ過ぎを防ぐ環境を作ることも効果的です。
周囲に状況を共有することで、精神的な負担や孤独感が和らぐことがあります。
家族や友人など、周囲に協力してもらうことが難しい場合は、医師やカウンセラーに相談してもらいましょう。
過食性障害の治療法

過食性障害の治療では、精神療法や心理教育といった心理的なアプローチを中心に、患者さんの状態や症状に応じて薬物療法を取り入れながら治療を行います。
ここでは、医療機関で行われる主な治療法を紹介します。
心理教育
心理教育とは、過食やうつ病、過食性障害などについて正しい知識を身につけ、適切な対処法を知るための教育のことで、治療の土台になります。
過食が「意志の弱さ」ではなく、症状として起きている行動であると理解することで、むやみに自分を責めることをなくし、適切に対処できるようにします。
症状の仕組みや回復のプロセスを知ることは、不安を減らし、治療への納得感やモチベーションを高めることにもつながります。
精神療法
精神療法では、過食を引き起こす考え方や感情、人間関係のパターンにアプローチします。
過食性障害でよく用いられる代表的な方法が、認知行動療法(CBT)と対人関係療法(IPT)です。目的や焦点が異なるため、状態に応じて選択されます。
認知行動療法(CBT) | 過食につながる考え方や行動パターンに注目し、「極端な思考」や生活リズムを修正していく治療 |
対人関係療法(IPT) | 過食の原因となる人間関係のストレスや役割の変化に焦点を当て、対人関係の改善を通して症状の軽減を目指す治療 |
薬物療法
うつ病や不安障害を併発している場合や、精神的な病気が過食にかかわっている場合は、抗うつ薬や抗精神病薬、気分安定薬などの薬物療法が検討されることがあります。
ただし、薬物療法のみで過食性障害の治療は難しいため、精神療法と組み合わせて行われます。
自助グループへの参加
同じ過食の悩みを持つ人と自分の体験を共有することも、回復に役立ちます。
自助グループなど悩みを共有できる場所に参加することで、「一人ではない」と感じることができ、心が軽くなったり、孤独感が軽減する効果が期待できるでしょう。
治療の補助的な役割として有効な方法の一つです。
過食で「つらい」と感じたときが相談するタイミング
過食や「食べ過ぎ」や「大食い」と混同されがちで、「このくらいで医療機関に相談していいのか」と思ってしまいがちです。
しかし、過食で「つらい」と感じているなら、それだけで医師やカウンセラーに相談する理由になります。
食によって気分の落ち込みが強くなったり、生活や仕事に支障が出ている場合は、すでに心身への負担が大きくなっているサインです。
うつ病につながる可能性もあるため、我慢せずに早めに専門家に相談してみましょう。
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「受診するほどではないかも」と迷っている段階でも構いませんので、安心して相談できる場として、ぜひ『かもみーる』をご利用ください。
