投稿日 2026年04月28日
「些細なことで強くイライラする」「自分でも感情が抑えられずイライラが止まらない」
こうした状態が続くと、「性格の問題なのでは」「我慢が足りないだけでは」と自分を責めてしまう方も少なくありません。
しかし、双極性障害ではイライラが主要な症状として現れることがあります。
とくに躁状態や混合状態では、本人の意思とは関係なく感情が高ぶり、衝動的な言動につながりやすいです。
この記事では、双極性障害におけるイライラの特徴を状態別に整理し、対処法や受診の目安までを詳しく解説します。
双極性障害でイライラすることはある?

双極性障害では、気分の落ち込みや高揚だけでなく、イライラや怒りっぽさが目立つことも少なくありません。
こうしたイライラは、性格や我慢不足によるものではなく、以下のような要因が関与していると考えられています。
- 脳内の神経伝達物質(ドーパミン・セロトニンなど)の働きの乱れ
- 感情や衝動を抑えるブレーキ機能の低下
- 刺激に対する感受性の高まり
- 睡眠不足や生活リズムの乱れによる影響
これらが重なることで、普段であれば自然に抑えられる感情が、強いイライラとして表に出やすくなるのです。
そのため、本人も「なぜこんなに怒ってしまうのかわからない」と戸惑うことがあります。
▶イライラが止まらないのはうつ病のサイン?感情のコントロールが難しいときの原因と対処法
▶うつ病と双極性障害(躁うつ病)の違いは?症状・原因・治療法とセルフチェックリスト
双極性障害のイライラはなぜ起こるのか

双極性障害のイライラは、単純なストレス反応ではなく、気分の状態によって現れ方が変わるという特徴があります。
躁状態・うつ状態・躁とうつが重なる混合状態で、イライラの質や背景は異なります。
躁状態で見られるイライラ
躁状態というと気分が高揚して元気になる状態というイメージを持たれがちですが、実際には落ち着きのなさや刺激への過敏さが前面に出ることもあります。
この時期は思考や行動のスピードが速まり、自分の考えが次々に浮かびやすくなります。
その一方で、周囲のペースが遅く感じられたり、思い通りに進まない場面に強い不満を覚えたりすることがあります。
その結果、短気になったり、攻撃的な言動が増えたりすることがあります。
うつ状態で見られるイライラ
うつ状態では気分の落ち込みが目立ちますが、同時に焦りや苛立ちが強くなるケースもあります。
思うように体や頭が動かないことへのもどかしさや、集中力の低下による失敗が重なることで、自分自身や周囲に対する不満が募りやすくなります。
この時期のイライラは、無力感や自責感と結びつきやすいのが特徴で、「こんなはずではないのに」という思いが怒りとして表に出ることもあります。
躁とうつが重なる時期(混合状態)のイライラ
双極性障害では、躁とうつの特徴が同時に現れる時期があります。
この状態では、気分は沈んでいるのに内側は落ち着かず、焦燥感やイライラだけが強く表れやすくなります。
エネルギーが完全には低下していないため、感情の動きが激しくなりやすく、本人にとっては非常につらい状態です。
周囲からは気づかれにくい一方で、強い不安や怒りを抱え込みやすいという特徴があります。
混合状態でのイライラは、数日で収まることもあれば、数週間続く場合もあります。
個人差が大きく、症状の強さや生活環境、治療の状況によって持続期間は異なります。
躁状態と混合状態のイライラの違い
躁状態と混合状態のイライラは、以下のような違いがあります。
状態 | イライラの特徴 |
躁状態 | 攻撃的・自信過剰・衝動的 |
混合状態 | 焦燥感・怒り・絶望感が同時に出る |
どちらも本人の意思で簡単に抑えられるものではなく、状態に応じた理解と対応が必要になります。
双極性障害のイライラへの対処法

双極性障害では感情が高ぶっているときほど、「何とかしなければ」と焦ってしまいがちですが、状況に応じた対処を知っておくことが大切です。
ここでは、イライラを感じたその瞬間にできる対処と、日常生活の中で備えておける対処に分けて解説します。
その場でできる対処法
イライラが強いときは、考え方を変えようとするよりも、刺激を減らし、心身を落ち着かせる行動を優先することがポイントです。
刺激から離れる
イライラが高まっているときは、音・光・人間関係などの刺激に過敏になりやすくなります。
無理にその場にとどまろうとせず、静かな場所へ移動したり、スマホやテレビから一時的に距離を置いたりするだけでも、気持ちが和らぐことがあります。
「逃げる」のではなく、自分を守るために刺激を減らすという意識で行動しましょう。
判断を保留する
強いイライラを感じているときは、物事を極端に捉えたり、後悔につながる判断をしてしまいやすくなります。
そのため、大事な決断や感情的なやり取りは、可能な限りその場で結論を出さないことが重要です。
「今は決めない」「落ち着いてから考える」と一度区切りをつけることで、トラブルを防ぎやすくなります。
身体を休める
イライラが続いている背景には、疲労や睡眠不足が隠れていることも少なくありません。
横になる、目を閉じる、深く呼吸をするなど、短時間でも身体を休ませる行動を取り入れてみてください。
気分の問題だけでなく、体調を整えることが結果的に感情の安定につながる場合も多くあります。
日常でできる対処法
イライラへの対処は、その場しのぎだけでなく、日頃からの準備も大切です。
日常生活の中でできる工夫が、症状の悪化を防ぐ支えになります。
睡眠リズムを整える
双極性障害では、睡眠の乱れがイライラを引き起こす大きな要因になることがあります。
寝る時間・起きる時間が日によって大きく変わらないよう意識することで、気分の波が緩やかになりやすくなります。
完璧を目指す必要はありません。
睡眠リズムを大きく崩さないことを目標にするだけでも、心身への負担は軽減されます。
日の光をあびて運動する
日中に日の光を浴びながら体を動かすことは、双極性障害におけるイライラ対策としても有効です。
太陽の光は体内時計を整える働きがあり、気分や睡眠リズムの安定に良い影響を与えるとされています。
激しい運動をする必要はなく、散歩や軽いストレッチなど、無理のない範囲で続けられるもので十分です。
外に出るのが難しい場合は、窓際で体を伸ばしたり、ベランダに出て深呼吸をするだけでも構いません。
「調子がいいから運動する」のではなく、「整えるために少し動く」という意識で取り入れることが、イライラの悪化を防ぐポイントです。
イライラのサインを記録しておく
イライラが強くなる前には、眠れなくなる、考えが早くなる、落ち着かなくなるなど、何らかのサインが出ていることがあります。
日記やメモ、アプリなどで簡単に記録しておくと、自分なりの傾向に気づきやすくなります。
記録は、診察時に状態を伝える手助けにもなり、治療やセルフケアを調整するヒントになります。
周囲に共有する
「またイライラしてしまうかもしれない」と一人で抱え込むほど、気持ちは追い詰められてしまいます。
信頼できる家族や職場の人、支援者に、あらかじめ自分の状態や困りやすいポイントを伝えておくことで、理解や配慮を得やすくなります。
また、医師やカウンセラーに相談することで、自分では気づかなかった視点からの助言を受けられることもあります。
ひとりで耐え続ける必要はありません。
双極性障害でイライラが強いときのNG行動

双極性障害では、イライラが強く出たり、続いているときは、冷静な判断が難しくなり、無意識のうちに自分を追い込む行動を取ってしまうことも少なくありません。
症状を悪化させないためにも、やらない方がよい行動をあらかじめ知っておくことは大切です。
ここでは、イライラが強いときに注意したいNG行動について解説します。
感情を抑え込む
イライラを感じると、「こんな感情を持ってはいけない」「我慢しなければ」と無理に抑え込もうとする方も多いかもしれません。
しかし、感情を抑え込むほど、内側に緊張やストレスがたまり、結果的に症状が強まることがあります。
双極性障害に伴うイライラは、性格の問題ではなく、脳の働きや気分の波によるものです。
「今はそういう状態なんだ」と受け止め、信頼できる人や医療者に気持ちを共有する方が、回復につながりやすくなります。
重要な決断をする
イライラが強い時期は、判断力や客観性が低下しやすい状態です。
仕事を辞める、人間関係を断つ、大きな契約をするなど、人生に影響する決断を勢いでしてしまうと、後から後悔する可能性があります。
特に混合状態では、気分は落ち込んでいるのに行動力だけが高まることがあり、衝動的な行動につながりやすいため注意が必要です。
重要な判断は「今は保留する」と決め、症状が落ち着いてから考えるようにしましょう。
自己判断で治療を調整する
「イライラが続くから薬を減らしたい」「調子がいいからもう必要ないかもしれない」と感じることもあるかもしれません。
しかし、自己判断で服薬を中断したり量を変えたりすると、症状が不安定になり、かえって悪化するリスクがあります。
双極性障害の治療では、継続性と医師との連携が非常に重要です。
不安や疑問がある場合は、自己調整をする前に、必ず主治医に相談するようにしましょう。
自分を責める
イライラが抑えられないと、「また感情的になってしまった」「自分はダメだ」と自分を責めてしまう方も少なくありません。
しかし、双極性障害によるイライラは、本人の努力不足や弱さが原因ではありません。
自分を責め続けることは、自己評価を下げ、抑うつや不安を強めてしまう要因になります。
「今は症状が強い時期だから仕方ない」と少し距離を置いて捉えることが、心を守るうえで大切です。
双極性障害でイライラした場合の受診の目安

双極性障害によるイライラは、一時的な気分の変化として現れることもありますが、状態によっては医療機関での対応が必要になるサインである場合もあります。
特に、躁状態や混合状態では本人がつらさを自覚しにくく、受診のタイミングを逃してしまうことも少なくありません。
ここでは、どのような場合に医師へ相談したほうがよいかという受診の目安と、治療の考え方について解説します。
相談するべきサイン
双極性障害のイライラは、放置すると症状の悪化や生活への影響につながることがあります。
次のような変化が見られる場合は、早めに医療機関へ相談することが大切です。
イライラが長期間続いている
数日でおさまるイライラとは異なり、強い苛立ちや落ち着かなさが2週間程度続く場合は注意が必要です。
特に、眠れない状態や焦燥感を伴っていると、心身が十分に回復できず、気分の波がさらに不安定になりやすくなります。
「いつもより怒りっぽい状態が続いている」「自分でもコントロールできない感覚がある」と感じたら、症状のサインとして医師に伝えることが大切です。
周囲とのトラブルが増え日常生活に支障が出る
イライラが原因で、家族や職場、学校での衝突が増えている場合も受診の目安になります。
些細な言動に強く反応してしまったり、後から後悔するような発言や行動が増えている場合、症状が生活に影響し始めている可能性があります。
人間関係の悪化や仕事・学業への支障は、本人の自己否定感を強め、さらに状態を悪化させる要因になりかねません。
早めに専門家へ相談することで、環境調整や治療の見直しにつなげることができます。
自傷・希死念慮のサインがある
特に混合状態では、気分の落ち込みと行動力が同時に強まることがあり、自傷衝動や希死念慮が表れやすくなります。
「消えてしまいたい」「生きている意味がない」といった考えが浮かぶ場合は、緊急性の高いサインです。
本人がつらさを言葉にできない場合でも、周囲が異変を感じたときは、医療機関や相談窓口につなぐことが重要です。
安全を守ることを最優先に、迷わず専門家のサポートを受けましょう。
双極性障害のイライラの治療法
双極性障害によるイライラは、気分の波や脳内の神経伝達の変化と深く関係しており、セルフケアだけでコントロールすることは難しい場合があります。
そのため、症状や生活状況に合わせた医療的な治療と専門的なサポートを受けることが大切です。
代表的な治療法には、以下のようなものがあります。
治療法 | 内容・目的 |
薬物療法 (気分安定薬・抗精神病薬) | 気分安定薬や抗精神病薬を用いて、躁とうつの振れ幅を抑え、イライラや興奮を和らげる。症状の強さや経過に応じて種類や量が調整され、安定した気分を保つことを目指す |
認知行動療法(CBT)などの心理療法 | イライラが強まるときの考え方や行動パターンを整理し、感情に振り回されにくくする力を身につける。気分の変化に早く気づき、衝動的な反応を減らすことに役立つ |
心理教育による病気理解のサポート | 双極性障害の特性や再発のサインを学ぶことで、不安を軽減し、適切な対処がしやすくなる。本人だけでなく、家族や周囲の理解を深める効果もある |
双極性障害の治療は、一人で耐え続けるものではありません。
医師や専門家と相談しながら継続して治療を進めることで、イライラに振り回されにくい、安定した生活を目指すことができます。
▶うつ病かも……何科を受診すればいいの?初めての病院選びと治療の流れをわかりやすく解説
双極性障害でイライラを感じたら我慢せずに相談しよう
双極性障害によるイライラは、気合いや我慢で抑えられるものではありません。無理に抑え込もうとすると、かえって感情が爆発したり、強い自己嫌悪につながったりすることもあります。
早めに専門家に相談することで、症状に合った治療や対処法を見つけやすくなります。
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「こんなことで相談していいのかな」と悩まず、イライラを感じた時点で一度、専門家の視点を借りてみてください。それが、症状を悪化させない大切な一歩になります。
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