発達障害を持つ方の中には、「どんな仕事が自分に向いているのかわからない」「働き続けられる職場が見つかるか不安」と悩む方も多いでしょう。
発達障害には、ASD(自閉スペクトラム症)、ADHD(注意欠如・多動性障害)、LD(学習障害)などがあり、それぞれ特性や得意・不得意が異なります。
そのため仕事選びでは「苦手なことを避ける」だけでなく、「自分の特性を活かせるかどうか」に着目することが大切です。
この記事では、各特性に向いている仕事・向いていない仕事について解説します。
発達障害を持つ人の就職方法や仕事探しのポイントなどもまとめているため、ぜひ参考にしてみてください。
ASD(自閉スペクトラム症)の特徴と向いている仕事

ASD(自閉スペクトラム症)は、社会的なコミュニケーションや行動の特徴に偏りが見られる発達障害の一つです。
特定の分野に高い集中力や強いこだわりを持つ反面、臨機応変な対応や対人関係が苦手な傾向があります。
仕事選びにおいては、こうした特性を踏まえた上で、自分の強みを活かせる環境を見つけることが大切です。
ASDの特徴
ASDには、対人コミュニケーションが苦手という特徴があります。
例えば相手の表情や言葉の裏にある意図を読み取ることが難しかったり、一方的に話してしまったりする傾向が見られます。
また決まった手順やルールに安心感を覚え、急な変更には混乱してしまうことも少なくありません。
さらに強いこだわりや特定分野への興味を持つことも多く、この集中力の高さが大きな強みとなる場合もあります。
ASDの特徴は一人ひとり異なりますが、「マニュアル通りに進められる」「変化が少ない」など、特性に合った仕事環境を選ぶことで、その人本来の力を発揮しやすくなります。
ASDに向いている仕事
ASDに向いている仕事は、強いこだわりや集中力、論理的思考といった特性を活かせる職種です。
具体的には以下のような仕事が挙げられます。
- プログラマーやシステムエンジニアなどのIT系業務
- データ入力・ライター・翻訳家・校正者
- 法務・経理・財務担当者
- 研究者
- 図書館司書
- 駅員
例えばプログラマーやシステムエンジニアのように、明確な仕様書に沿って作業を進めるIT系の仕事に高い適性があるといわれます。
ほかにもデータ入力や文章の校正、研究職、設備点検や工場のライン作業など、一定のルールに基づいた反復作業が求められる職種も適しています。
これらの仕事は、人とのやり取りが少なく、自分のペースで集中して取り組めることが特徴です。
また在宅でできる仕事であれば、感覚過敏のある方でも快適に働ける可能性があります。
ASDに向いていない仕事
ASDにとって難しいとされる仕事は、対人関係やマルチタスクが多い職種です。
具体的には以下のようなものが挙げられます。
- 営業
- 接客業
- 総務
- パチンコ・ゲームセンターの店員
- 騒音の多い現場での作業
ASDの人にとって重要なのは、過剰な刺激がない環境で、自分の特性に合ったペースで働けることです。
不得意な分野に無理に挑戦するよりも、自分に合った働き方を見つけることが、仕事を長く続けるうえで大切なポイントです。
ADHD(注意欠如・多動性障害)の特徴と向いている仕事

ADHD(注意欠如・多動性障害)は、集中力を持続することが難しかったり、衝動的な行動を取ってしまったりする傾向がある発達障害です。
仕事においては、細かなスケジュール管理や反復作業に苦手意識を持つ一方で、好きな分野や興味のあることに対しては高い集中力を発揮できることがあります。
また行動力や発想力に優れている人も多く、柔軟な思考や素早い行動が求められる仕事で力を発揮しやすい傾向があります。
そのためADHDを持つ人にとっては、自分の特性に合った仕事環境を見つけることが非常に重要です。
▶ADHD(注意欠如・多動症)とは?発達障害との関係や特徴、対応法を解説
ADHDの特徴
ADHDの主な特徴として、「注意が散漫になりやすい」「落ち着きがない」「衝動的な行動をしてしまう」といった傾向が挙げられます。
予定を忘れてしまう、物をなくしやすい、じっとしているのが苦手といった悩みを抱える方も少なくありません。
また気が散りやすいため、同じ作業を長時間続けると苦痛を感じることもあります。
しかしその一方で、好きなことに対しては強い集中力を発揮したり、次々にアイデアを出す発想力に優れている方も多くいます。
このような特性を理解し、自分の得意な分野や興味のあることを活かせる仕事を選ぶことで、仕事へのやりがいや達成感を得られるようになるでしょう。
ADHDに向いている仕事
ADHDに向いている仕事は、自分の興味関心が活かせる仕事や変化や動きのある仕事です。
具体的には以下のような仕事が挙げられます。
- 営業職や販売職
- 記者・編集者
- 研究者
- 清掃業
- 介護職
- Webデザイナー・イラストレーター
- 広告ディレクター
- エンジニア
- プログラマー
営業職や販売職は対人スキルや行動力を活かせる場面が多く、日々異なる業務に取り組むことで集中力を維持しやすい傾向があります。
またWebデザイナーやイラストレーターなどのクリエイティブ系の仕事も、独自の発想力を活かせるため適性があるといえるでしょう。
このように毎日違った刺激がある仕事や柔軟な思考を求められる職種であれば、ADHDの特性が強みに変わる可能性があります。
ADHDに向いていない仕事
ADHDに向いていないとされるのは、細かく正確な作業を継続する仕事や、スケジュール管理が求められる仕事です。
具体的には以下のような仕事が挙げられます。
- 秘書
- 経理
- 総務
例えば秘書は細やかな気配りや臨機応変な対応、スケジュール調整が必要なため、ADHDの人には負担が大きい仕事といえます。
経理や財務も、ミスの許されない正確性と繰り返しの作業が求められるため、集中力が途切れやすい人には向かない場合があります。
デスクワーク中心で身体を動かす機会が少ない職場では、集中力や行動力といった特性を活かしづらく、結果として仕事のパフォーマンスに影響が出る可能性があるでしょう。
LD(学習障害)の特徴と向いている仕事

LD(学習障害)とは、知的な発達に問題はないにも関わらず、「読む」「書く」「計算する」といった学習に関わる特定の分野で困難を抱える障害です。
苦手とする分野は人によって異なるため、自分の特性に合った働き方を見つけることが大切です。
近年では、パソコン・タブレットやアプリなどの補助ツールの活用により、多くの業務を無理なくこなせる環境も整ってきています。
視覚的な理解や表現が得意な方は、デザインや映像分野で活躍することも可能です。
LDの特徴
LD(学習障害)は、特定の学習能力にのみ困難を抱えるのが特徴です。
具体的には以下のような種類があります。
読字障害 | 読み書きに時間がかかる |
書字障害 | メモを取るのが苦手 |
算数障害 | 計算や時間管理が苦手 |
知能全体に問題があるわけではなく、記憶力や創造力に優れた人も多くいます。
また視覚的に物事を捉える力が強い傾向があり、文章よりも図やイラストなどの情報の方が理解しやすい場合があります。
これらの特性を活かせば、苦手な作業は補助ツールによってカバーし、得意な分野で力を発揮することが可能です。
自分自身の特徴を正しく把握し、働きやすい環境を選ぶことが重要です。
LDに向いている仕事
LDに向いている仕事は、読み書きや計算の能力をあまり求められない分野や、視覚的なスキルを活かせる仕事です。
具体的には以下のような仕事が挙げられます。
- デザイナー
- イラストレーター
- アニメーター
- 軽作業
- ライン作業
- 清掃業
デザイナーやイラストレーター、アニメーターといったクリエイティブな仕事は、視覚情報の理解力や表現力を活かしやすく、文章の読み書きに苦手があっても十分に活躍できます。
また軽作業や清掃、ライン作業といったルーティン中心の仕事も、ルールが明確で取り組みやすいため、LDの方に向いているでしょう。
自分の特性と補助手段を上手く組み合わせることで、より働きやすくなります。
LDに向いていない仕事
LDの方が苦手とする業務は、その人の特性に強く左右されます。
例えば読字障害の方が文書を多く読む仕事を任されたり、書字障害の方が手書きでの記録作成を求められたりすると、業務遂行が困難になることがあります。
また算数障害を持つ方が正確な数値の計算や管理を求められる職種に就くと、負担が大きくなる可能性があるでしょう。
ただしこれらの業務でも、読み上げソフトや計算機、音声入力アプリなどの補助ツールを使うことでカバーできる場合もあります。
特性に応じたサポートを得られない職場では、苦手な分野が障壁となりやすいため、自分の弱点をカバーできる環境かどうかを見極めることが仕事選びの重要なポイントとなります。
発達障害を持つ人の就職方法

発達障害のある人が就職を目指す場合の就職方法には、『一般採用枠』と『障害者採用枠』の2つの方法があります。
一般採用枠は障害の有無に関わらず応募できるため、求人の幅が広く、収入やキャリアアップの可能性も高いのが特徴です。
一方、障害者採用枠は、障害への理解や配慮を受けながら働けるメリットがあります。
どちらを選ぶべきかは、本人の特性や希望する働き方によって異なります。
ここではそれぞれの特徴を解説するため、ぜひ参考にしてみてください。
一般採用枠での就職
一般採用枠とは、発達障害を開示せず、誰でも応募できる採用枠です。
この枠は求人の数が多く、給与水準も高いメリットがあります。
また他の社員と同じように扱われるため、必要以上に気を遣われずに働けるのも魅力の一つです。
ただし、発達障害に対する配慮が受けにくいケースもあります。
そのため、障害を開示したときに企業が適切な対応を取ってくれるかどうかは事前に確認しておく必要があるでしょう。
2024年4月からは『合理的配慮(企業の過度な負担にならない範囲で、障害者が働きやすい環境を整える配慮のこと)』の提供がすべての企業に義務化されましたが、制度の周知はまだ十分とはいえない状況です。
働きやすさを重視する場合は、就職前に職場とのすり合わせを行うことが重要です。
障害者採用枠での就職
障害者採用枠は、障害者の就職を促進するために設けられた枠です。
発達障害を含む精神障害を対象に、配慮のある就労環境が用意されている点が特徴です。
この枠を利用するには、精神障害者保健福祉手帳や療育手帳などの取得が必要となります。
障害を開示することで、得意・不得意を職場に理解してもらいやすく、作業環境の調整や丁寧な業務指導、ストレスへの配慮などを受けながら働くことができます。
またミスが起きた際も相談しやすく、周囲のサポートを受けられる点も大きなメリットです。
ただし、一般採用枠よりも選べる職種が限定される傾向があるため、その点はあらかじめ理解しておく必要があります。
安定して働くことを重視する方や配慮を必要とする方は、障害者採用枠が適している場合が多いでしょう。
発達障害を持つ人の仕事探しのポイント

発達障害を持つ人の仕事探しのポイントは以下の3つです。
- 障害者の雇用人数・雇用実績をチェックする
- 働き方改革に取り組んでいるかチェックする
- サポート体制が充実している企業を選ぶ
ここでは上記3つのポイントについてそれぞれ解説します。
障害者の雇用人数・雇用実績をチェックする
企業を選ぶ際は、障害者の雇用実績があるかどうかを確認することが大切です。
ホームページや求人票、人材紹介サービスを通じて、障害者の採用実績や在籍人数を調べることで、その企業がどの程度障害への理解や受け入れ体制を整えているかが見えてきます。
特に雇用人数が多い企業ではバリアフリー対応やマニュアル化された業務体制、配慮あるコミュニケーション環境が整っているケースが多く、安心して働ける可能性が高まります。
さらに障害者の平均勤続年数が長い場合は、職場に定着できる環境が整っているとも考えられるでしょう。
会社説明会などの機会を利用して、実際に企業に質問してみるのもおすすめです。
働き方改革に取り組んでいるかチェックする
発達障害を持つ人は、柔軟な働き方ができる企業を選ぶことが大切です。
働き方改革に積極的な企業では、時短勤務やフレックスタイム制度、テレワークといった多様な働き方を導入しており、障害の特性に合わせた勤務スタイルを実現しやすくなります。
特に在宅勤務が可能な職場であれば、通勤の負担を軽減でき、静かな環境で作業に集中しやすくなるメリットがあります。
また定期的に通院が必要な場合にも、柔軟な勤務体制があると予定を調整しやすくなるでしょう。
求人情報だけではわからない場合は、企業説明会や面接時に制度の詳細を確認してみることをおすすめします。
サポート体制が充実している企業を選ぶ
発達障害を持つ人が安心して働くためには、入社後のサポート体制が整っている企業を選ぶことが大切です。
障害者枠での採用であれば、制度として一定の配慮が得られる可能性が高く、静かな作業スペースの提供や業務の可視化などがなされていることもあります。
ただし精神障害者保健福祉手帳を持っていない方は障害者枠での応募が難しいため、一般枠での就職を目指す必要があります。
その場合でも、障害者の在籍実績がある企業や発達障害に理解のある職場であれば、必要なサポートを受けながら働ける可能性があるでしょう。
応募前に企業の姿勢や取り組みをしっかり確認しておくことが大切です。
発達障害を持つ人は自分の得意・不得意を理解して仕事を選びましょう
発達障害を持つ人が仕事を選ぶ際には、自分の特性を正しく理解し、それを活かせる環境を見つけることが何よりも重要です。
ASD・ADHD・LDそれぞれに適した職種や働き方は異なりますが、自分に合った職場を見つけることで、長く安心して働くことができます。
自分に合った仕事がわからないという場合には、医療機関のカウンセリング受診も検討してみてください。
かもみーる心のクリニック仙台院では、対面での心理カウンセリングを行っています。
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