「ミスをしても謝れない」
「素直にごめんなさいが言えない自分が嫌だ」
ごめんなさいが言えない……と、悩みを抱える大人の中には、発達障害の特性が関係していることがあります。
自分では悪気がないのに、謝れないために人間関係に支障をきたしてしまい、職場や家庭で孤立してしまうことも少なくありません。
この記事では、大人の発達障害と「謝れない心理」の関係性、原因や対策についてわかりやすく解説します。
大人なのに「ごめんなさい」が言えないのは発達障害が原因?

「なぜか素直に謝れない」という原因には、発達障害の特性が関わっている可能性があります。
発達障害の特性として、謝罪に対して極端に抵抗感があったり、戸惑いやストレスなどを感じる場合があるためです。
特に、ASD(自閉スペクトラム症)やADHD(注意欠如・多動症)を抱えている方には、謝罪の場面で上記のような感覚を覚えるといった傾向が見られます。
ASDの方は、相手の気持ちや場の空気を読み取るのが苦手で、なぜ謝るべきなのかが感覚的に理解しにくいことがあります。
自分の言動が相手に与えた影響に気がつきにくく、謝るべきと判断できないまま会話がすれ違ってしまうのです。
また、ADHDの方では、衝動的な言動が原因でトラブルになったあとに、急な謝罪要求にうまく対応できず、混乱したりパニックになったりすることもあります。
謝れない=反省していないと誤解されがちですが、本人は内心深く後悔している場合も多いです。
ごめんなさいが言えない性格として片付けるのではなく、特性として理解することが、人間関係のストレス軽減につながるでしょう。
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ごめんなさいが言えない大人に考えられる弊害

発達障害の特性などによって「ごめんなさい」がうまく言えないままでいると、本人の意図とは関係なく周囲との関係が悪化してしまうことがあります。
ここでは、その代表的な弊害について解説します。
人間関係の構築が難しくなる
謝罪ができないことで、「反省していない」「自分勝手」といった誤解を受けやすくなります。
特に、職場のような集団生活の中では、ミスよりもその後の対応が重要視される場面も多いものです。
ごめんなさいが言えないために、「謝らない方である」といった印象を与えてしまい、信頼を失うこともあります。
また、本人にとっては謝りたい気持ちがあっても、言葉にすることが難しかったり、どう伝えればよいかわからなかったりする場合もあります。
謝罪ができないことによるすれ違いは、誤解や孤立を生み、人間関係の構築を難しくしてしまう原因です。
ミスが大きな問題になってしまう可能性がある
小さなミスでも、素直に謝罪できればその場で収まることは多くあります。
しかし、謝らない方といった印象を与えてしまうと、問題が必要以上に深刻化することが少なくありません。
実際、信頼を損ねてしまい、任されていた仕事から外されてしまったり、ともに協力していたチームからの脱退を求められたりする可能性があります。
場合によっては、謝れない態度が反抗的な態度と誤解され、職場内での評価や関係性が悪くなることも考えられるでしょう。
なぜ?発達障害の大人がごめんなさいを言えない理由

「謝ればよいのに、なぜそれができないの?」と言われても、本人もよくわからないことが多いです。
うまく言葉が出なかったり、自分でも理由がわからないまま固まってしまったりすることもあります。
ここでは、発達障害の大人が「ごめんなさい」を言いにくく感じる、主な原因や心理について解説します。
他人に共感することが苦手
発達障害を抱えている大人の中には、他人に共感することが苦手な方がいます。
特に、ASDの特性を持つ方は、他人の感情を感じ取る力が弱い場合があり、ごめんなさいが言えない原因の一つです。
相手が傷ついていても、それを表情や雰囲気から読み取るのが難しく、何が問題だったのかを自覚できない場合があります。
相手の気持ちを自分のことのように感じる感覚は、ASDの方にとっては、頭では理解できても、それを実感するのが難しい傾向にあるのです。
共感が難しいといった特性から、謝罪の必要性やタイミングがわかりにくく、結果的に謝らない方と見なされてしまうことがあるのです。
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他人の気持ちを推測することが苦手
発達障害を抱えている場合、「相手が今どう感じているか」を察することが難しい場合があります。
相手が怒っているように見えても、自分に怒っているとは気づけない場合も珍しくありません。
他人の気持ちを推測しきれないことで謝るべきタイミングを逃し、誤解やトラブルにつながってしまうケースは実際に存在します。
本人にとってはまったく悪意のない立ち振る舞いでも、結果的に人間関係をこじらせてしまう要因になる可能性があるでしょう。
こだわり・信念の強さが関係している
発達障害を抱えている場合、自分の中に「こうあるべき」という強いこだわりを持つ傾向が見られます。
「自分は間違っていないし謝る必要はない」「意図がなかったのに謝るのは納得できない」と感じている場合、謝罪という行為に強い抵抗を抱くことがあります。
謝罪が、自分の信念に反することとして葛藤し、言葉にできないまま固まってしまうケースも多いのです。
感情を言語化するのが苦手
大人であっても、発達障害を抱えていると自分の気持ちを言葉にすることに苦手意識を感じる方は少なくありません。
何かトラブルが起きても「自分は今、何を感じているのか」「相手にどう伝えたらよいか」が整理できないため、黙り込んでしまうのです。
その結果、「ごめんなさい」と言いたい気持ちはあっても、適切な表現が見つからずに謝れないまま終わってしまうこともあります。
謝罪することで必要以上に罪悪感を覚えてしまう
ADHDやASDなどの特性がある方の中には、過去の失敗経験が多く、謝ることに対して過剰な罪悪感を抱くようになっている方もいます。
何度も謝ることで「また怒られるかも」「自分はダメな人間だ」と強く思い込み、自尊心がどんどん下がってしまうのです。
そのため、謝罪の場面に直面すると、自分を守ろうとする防衛反応として、謝らないという選択を無意識に選んでしまうことがあります。
実際、謝罪の行為自体が心の傷に触れる行為になっている場合も見られます。
謝罪という行為が、過去に受けたトラウマやネガティブな感情を引き出してしまうスイッチになっている可能性もあるでしょう。
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強い羞恥心を感じてしまう
発達障害を抱えていると、謝罪という行為に強い羞恥心を感じてしまうことがあります。
謝罪は、相手の前で自分の非を認めるという意味合いが強いため、恥ずかしさや屈辱として強く感じられてしまうことがあるのです。
謝罪を通して、「また迷惑をかけた」「また怒られた」と感じる経験が増え、謝罪に強い羞恥心や恐怖感を抱いてしまうことがあります。
謝りたい気持ちがあっても、言葉にすることで再び自分の失敗を突きつけられるように感じてしまい、素直にごめんなさいが言えない状態に陥ってしまいます。
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大人の発達障害が原因でごめんなさいが言えないときの対策

「謝りたくないわけじゃないのに、うまく言えない」「謝るタイミングを逃して、また関係が悪化してしまった」など、自己嫌悪に陥っている方は少なくありません。
しかし、発達障害を抱えている方でも、自分の特性を理解したうえで適切な対処をすれば、謝罪の負担を軽くすることは可能です。
具体的な対策について知っておくことで、結果的にトラブルの予防につなげられるでしょう。
ここからは、ごめんなさいが言えない・謝れないときの対策について紹介します。
具体的な謝罪の言葉を準備しておく
ごめんなさいが言えない特性があるとわかっているのであれば、具体的な謝罪の言葉を準備しておくとよいでしょう。
発達障害のある方は、どう謝ればよいかがわからなくなりやすいため、あらかじめ使いやすい謝罪フレーズを用意しておくといざというときに活用しやすいです。
- 「ご迷惑をおかけしてすみません」
- 「結果としてご不快な思いをさせてしまったようで、申し訳ありません」
- 「自分の意図が伝わらなかったかもしれません、ごめんなさい」
「自分が悪かった」という内容よりも、「相手に不快な思いをさせた」という視点から言葉を選ぶと、謝罪の心理的ハードルも下がりやすくなります。
謝罪が苦手なことを周囲にあらかじめ伝えておく
複数人で連携しながら働く環境である場合は、「とっさに謝れないことがあります」「言葉がすぐ出ないことがあります」と事前に共有しておくことも大切です。
発達障害の特性をオープンにするのは勇気がいるかもしれませんが、誤解されない環境づくりが有効な対策になることもあります。
- 「感情を言葉にするのが遅くて、謝るタイミングがずれることがあります」
- 「悪気はないのに、謝罪が難しいことがあるんです」
上記のような一言があるだけで、周囲の受け止め方も大きく変わります。
人間関係におけるトラブルのリスクを軽減するためにも、事前周知は重要でしょう。
些細なことにも「ごめん」という習慣をつける
普段から自然に謝罪の言葉を口にすることが難しい…と感じているのであれば、日常生活の中で些細なミス・不備にも謝る習慣をつけられるように意識してみましょう。
発達障害があると、謝る行為=大きな失敗のときにする行為と感じてしまい、身構えてしまうことがあります。
謝罪への抵抗感が強い場合には、まずは日常のささいな場面で「ごめん」を言う練習を始めてみましょう。
例えば、資料を渡すタイミングが少し遅れたときや、相手の話を遮ってしまったときなど、謝るほどではなさそうな些細なことにも謝罪する意識を持つのです。
「共有が遅れてしまい申し訳ありません」「すみません、先程何か言いかけていましたよね?」など小さな謝罪の積み重ねを習慣化していきます。
結果的に、いざ謝罪が必要な場面になったときも、強い抵抗感を覚えることなく謝りやすくなる可能性があります。
言葉以外での謝罪方法も持っておく
どうしても口頭で「ごめんなさい」が言えないときには、言葉以外の方法で気持ちを伝える方法をいくつか持っておきましょう。
具体的には、メモに謝罪のメッセージを記して手渡したり、「手伝ってくれて助かりました」と、感謝やねぎらいの言葉を添えたりすることが挙げられます。
また、メッセージではなく、自らの行動で謝罪の意を示すのもよいでしょう。
率先して片づけを手伝ったり、自分のせいで負担が増えてしまった同僚の作業を引き受けたりすることは、言葉以外の謝罪方法として理解してもらえる可能性があります。
どうしても謝罪が怖い・恥ずかしいときはカウンセリングを受けてみる
「謝ると自分が全否定される気がしてしまう」「謝ったあと、ずっと引きずってしまう」と感じている方は、謝罪に強い拒否感やトラウマなど、ネガティブな感情を抱えている可能性があります。
どうしても、謝罪に対する恐怖心や羞恥心が強くなってしまう場合は、医療機関の受診もしくはカウンセリングを受けることをおすすめします。
カウンセリングでは、ごめんなさいが言えない根本的な原因を探ったり、感情のコントロールの仕方についてアドバイスを受けたりすることが可能です。
謝罪の練習など、ロールプレイング形式でチャレンジできる環境を整えている医療機関もあります。
発達障害で「ごめんなさい」が言えなくても自分を責めないで
「ごめんなさいが言えない」ことに悩み、自己嫌悪に陥ったり、孤独を感じたりしてきた方もいるかもしれません。
しかし、ごめんなさいが言えないのは、自分が反省していないからではありません。
発達障害の特性によって、相手の気持ちを察したり、自分の感情をうまく言葉にしたりするのが難しいためなのです。
言葉にできなかった謝罪の気持ちは、少しずつ工夫や練習を重ねて、これから伝えていけるようにすれば問題はありません。
『かもみーる心のクリニック 仙台院』では、発達障害の特性が原因で、素直に謝れない…と悩む方の相談を受け付けています。
「謝りたいけれどどうしたらいいのか分からない」「必要な場面で謝罪の言葉が出てこない」と悩んでいる方は、ぜひ一度お気軽にご相談ください。
