「発達障害かもしれない」と言われたとき、すぐに受け入れられる人ばかりではありません。
むしろ「認めたくない」と感じるのは自然な反応ともいえます。
近年、発達障害に関する情報を目にする機会が増え、世間的にも少しずつ理解が広がってきました。
しかし、いざ自分が発達障害の傾向があると指摘されても、当事者である本人としては「認めたくない」と感じることもあります。
本人が発達障害について認めたくない様子を見せている場合、周囲としてはどう伝えるべきか悩んでしまうものです。
特に、家族やパートナー、同僚など身近な関係であるほど、相手の反応が心配で、踏み込んでよいのか迷う場面も多いでしょう。
そこで、今回は、発達障害を認めたくないと思っている本人に対して、どのように声をかけるべきか、伝えるタイミングや配慮すべきポイントを詳しく解説します。
本人が発達障害を認めたくないと感じる理由

本人が発達障害を認めたくないと感じるのは、一体なぜなのでしょうか。
まずは、発達障害の可能性がある方が感じる、抵抗や不安感などについて解説します。
社会の偏見を恐れている
本人が発達障害を認めたくないと感じる理由として、まず挙げられるのが社会の偏見を恐れていることです。
一昔前と比べると、発達障害に対する偏見は少しずつ軽減され、特性についての理解も広がりつつあります。
しかし、まだまだ発達障害に対するネガティブなイメージを持つ方は多いのが現状です。
実際、発達障害=問題がある、といったイメージや、発達障害はコミュニケーションが苦手などのレッテルを貼る方も存在します。
「普通でいたい」「目立ちたくない」という感情が強い方であれば、なおさら発達障害の事実は受け入れにくいものになるかもしれません。
結果的に「発達障害かもしれない」という指摘を受けても、本人が否定し、必要な支援や治療を受けられなくなってしまう可能性があります。
職場で評価が下がることを懸念している
発達障害を認めたくないと感じる背景には、職場での評価が下がることが関係している場合があります。
発達障害の診断があることで、「仕事ができないと思われるのではないか」「異動や降格につながるのでは」といった不安を抱える方は少なくありません。
発達障害の特性に応じた配慮がされにくい職場であれば、甘えているだけといった評価や適応できない方といった誤解につながることもあります。
そのため、職場での信頼関係や評価を守ろうとして、診断を避けたり、自分の悩みを話したりすることに、抵抗を示す場合があるのです。
治療に経済的な負担が発生する
本人が発達障害を認めない理由の一つが、経済的な問題です。
発達障害と診断された場合、その後の通院やカウンセリング、場合によっては薬物療法など、長期的な支援が必要になることがあります。
仮に、通院やカウンセリングなどにかかる費用が保険適用であっても、頻度や地域によっては負担が大きいものです。
収入に不安がある方や養っていく家族がいる方にとって、治療にかかる経済的な負担は大きな問題でしょう。
経済的なリスクを避けるために、「今はまだ大丈夫」と無理してしまう方も少なくありません。
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発達障害について本人に伝える必要性

発達障害の特性は、本人としては性格や自分の欠点だと感じていることが多く、気づかないまま苦しんでいるケースもあります。
周囲が違和感を抱いても、本人が問題を自覚していなければ、必要な支援につながりません。
丁寧に特性について伝えることは、本人が自分について正しく理解し、より生きやすい環境を整えるためにも重要です。
実際、発達障害の特性を知れば、努力不足やわがままとされがちな行動に理由があると気づけます。結果的に、本人が自己否定から解放される場合もあるかもしれません。
また、特性を踏まえた職場環境の調整や、適切なコミュニケーション方法について考えるきっかけにもつながりやすくなります。
発達障害の特性について本人へ伝えることは勇気がいりますが、自分自身の理解を深めてもらい、適切な支援につなげるきっかけを作るという点では、意義のある行動といえるでしょう。
発達障害の可能性を本人へ伝えるタイミング

「発達障害かもしれない」といった事実を本人に伝えるにあたり、大切なのがタイミングです。
タイミングを誤ると、相手の拒絶・拒否感が強くなってしまったり、自己否定に陥ったりする恐れがあるため注意しましょう。
発達障害の可能性を本人へ伝える際には、以下のタイミングを検討してみてください。
同年代との違いに気づいたとき
本人が「周囲と何かが違う気がする」「なぜ自分はこんなに苦手なのか」と感じ始めたタイミングは、発達障害の可能性を伝えるシーンとしては適しています。
周りの方が自然にできることが自分には難しいと自覚できていれば、発達特性について受け入れやすい状況でもあるでしょう。
子どもに発達障害の疑いがある場合、同年代の他の子どもと比べて違う点が多いと気づければ、早めに適切な支援につなげやすくなります。
人間関係がうまくいかず自尊心が低下しているとき
発達障害の可能性を本人に伝えるにあたって、理想のタイミングの一つが、人間関係が原因で自尊心が低下しているときです。
対人関係でトラブルが続き、「自分はうまく人間関係を築けない」と思い込んでいるときには、あくまでも特性の問題として説明することが有効です。
本人は自分の性格の問題や、会話下手が原因と思い込んで自己否定することがあります。
「実は発達障害の特性によるものかもしれない」と伝えられれば、自己否定から抜け出すきっかけを得られるかもしれません。
仕事で失敗することが多いと気づいたとき
発達障害の可能性を伝えたいと思ったときには、本人が「仕事で失敗することが多い」と気づいたタイミングが望ましいでしょう。
社会人として生活を送っていると、自分の業務能力や対人スキルについて、他者と比較しながら客観的に評価することがあります。
同僚と比べて業務上のミスを繰り返しがちであったり、上司とのやり取りがうまくいかないと感じたりしたときは、自己肯定感が下がりがちです。
本人から、仕事の失敗についての相談があれば、まさに発達障害の可能性を伝えるうえで適しているでしょう。
「怠けているわけではないかもしれない」「能力が低いのではなく発達障害の特性かも」などの声かけができれば、本人が必要以上に悩んでしまうこともなくなるかもしれません。
▶発達障害に向いている仕事は?就職方法や仕事探しのポイントも解説
本人に発達障害の可能性を伝える際の注意点

本人に「発達障害かもしれない」と伝える際、いくつか知っておくべき注意点があります。
必要以上に本人の心の負担を増やさないよう、以下の点に注意したうえで、発達障害の可能性について言及してみましょう。
あらかじめ関係者同士で情報共有しておく
本人に発達障害の可能性を伝える際、まず注意したいのが事前に関係者同士で情報を共有したり、話し合ったりしておくことです。
関係者それぞれが抱えている疑問や気づきを持ち寄れば、特性の傾向や困っていることの全体像も見えやすくなります。
また、どのように伝えるのが最適なのか、話すタイミングや役割分担はどうすべきか、といった点も事前に検討できるでしょう。
発達障害の可能性があるのが子どもであれば、配偶者や担任の先生などが関係者として該当します。
関係者がそれぞれ手を取り合い、連携しながら支援するためにも、情報共有は徹底しましょう。
否定的な言葉を使うのは避ける
発達障害の可能性を本人に伝える際、否定的な言葉を使うのは避ける必要があります。
「あなたはできない人だから」「他の人と比べて異常だよね」「普通じゃないよ」などの否定的な言葉は、本人の自己肯定感を低下させる恐れがあるのです。
そもそも、発達障害の可能性がある場合、本人はこれまでの失敗体験や人間関係のつまずきから、すでに自己肯定感が低下していることも少なくありません。
否定の言葉を重ねてしまうと、自尊心をさらに傷つける可能性があるでしょう。
「あなたの特性を理解したい」「困っていることがあるなら一緒に考えたい」という姿勢を言葉に込めたうえで伝えることが大切です。
絵や図なども可能な範囲で準備しておく
本人に発達障害について説明する場合、口頭だけではなく絵や図を準備しておくこともおすすめです。
発達障害の具体的な特性を言葉で説明するのは難しいうえに、発達障害の特性により口頭だけでの説明では理解が難しい場合があります。
本人に「発達障害とはどういうものか」を説明するのであれば、視覚的にわかりやすい資料の活用をおすすめします。
発達特性をチェックできるリストや、脳の働きを直感で理解できるような簡単な図などがあると、説明の内容がより伝わりやすくなるでしょう。
また、絵や図などは自分で作成しなくても、インターネット上で公開されているものも多いため、スマホやタブレットなどで見せるといった方法もあります。
ただし、「これはあなたに絶対に当てはまること」と断定するのは避け、可能性として考えられることを前提に伝えるのが望ましいでしょう。
発達障害の疑いがある本人を支援につなげるためのポイント

発達障害の疑いがあっても、「どのように促せばよいのかわからない」「本人が発達障害を認めたくない様子で受診を拒否する」と悩むケースは珍しくありません。
ここからは、発達障害の疑いがある本人を、支援につなげるためのポイントを解説します。
「病気の人が行くところ」ではないことを説明する
発達障害の本人を支援につなげる際、病院は必ずしも病気・障害のある方のみが行くところではないことを説明しましょう。
医療機関への受診が、「自分が病気だから」といった考えにつながってしまうと、支援へのイメージはネガティブなものになってしまう可能性があります。
そもそも発達障害は病気ではなく、生まれつきの特性です。
発達障害における医療機関への受診は、あくまでも自分の特性への理解や、今困っている部分を少しでも軽減すること、生きづらさや生活のしにくさについて工夫できる点を知るため、といえます。
医療機関への受診を促す際には、「病院で病気を治す」といった言い方は避け、困りごとに対処するための「情報収集」「理解を深める」のようなニュアンスで説明するといいでしょう。
無理やり本人を連れていくことは避ける
本人が医療機関や相談機関などへ行くことを拒否している場合は、無理やりすすめるのは避けたほうがよいでしょう。
無理に支援につなげても、自分の発達障害の特性を受け入れられなかったり、その後の支援の受け入れに抵抗を感じたりする可能性があります。
本人が支援に前向きでないなら、しつこく促すことは避け、家族自身が発達障害について理解を深めることを優先しましょう。
家族が発達障害について理解し、本人への関わり方を学べれば、特性によって困っていたことが家族間で軽減できる場合があります。
本人が発達障害の事実を認められなかったり、支援を受けることを拒否したりするようであれば、まずは家族が情報収集をし、特性についての理解を深めてみてください。
必要に応じて家族が支援機関に相談する
医療機関や相談機関では、発達障害の疑いがある本人がいなくても、その家族が支援先に相談することも可能です。
「本人が発達障害を認めたくないと言って受診してくれない」「暴れて支援先の方に迷惑をかけないか不安」など、さまざまな事情で本人の同席が難しいケースは存在します。
もし、本人と一緒に相談することが難しいと感じる場合には、家族だけで一度相談してみるとよいでしょう。
家族の視点で本人の様子を説明したり、日常生活で困っていることや本人の悩みを相談したりできれば、本人が不在でも解決のヒントが得られる可能性があります。
本人が発達障害を認めたくないのには理由がある
本人が発達障害を認めたくない理由として、社会からの偏見や誤解への恐れ、自尊心の低下、将来への不安など、さまざまな心理的要因があります。
また、「障害」という言葉そのものに強い拒否感を抱く人も少なくありません。
だからこそ、周囲の支援者は一方的に決めつけるのではなく、本人の気持ちに寄り添いながら対話を重ねていくことが大切です。
『かもみーる心のクリニック 仙台院』では、発達障害を認めたくない本人はもちろんのこと、そのご家族の相談にも応じています。
発達障害に精通する医師が、現状を確認し、お困りごとや不安なことなどに寄り添っていきます。
日常生活で困ったことがあれば、ぜひ一度相談にお越しください。
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