うつ病との診断を受けた人の中で、実は発達障害が隠れていた、というケースが最近多くなっています。
発達障害とは、先天的な原因により対人関係や行動・感覚などにさまざまな困難がみられる特性のことです。
発達障害とうつ病が併発している場合、通常のうつ病とは対処方法に違いがあります。
この記事では、発達障害の人は鬱になりやすいのか、発達障害の種類や治療法・診断についてなどを紹介します。
発達障害を背景としたうつ病について、本人も周りの人も理解を深めるきっかけにするために、どうぞご一読ください。
発達障害の人はうつ病になりやすい?

発達障害の人は一般的にうつ病を発症しやすい傾向があります。特に社会不適応やストレスの蓄積により、二次障害としてうつ病を発症するケースも多く見られます。
珍しい症状ではないため、予防も対応も可能です。
ここでは、発達障害の人がうつになりやすい理由を紹介します。
大人になってから発達障害に気付く
発達障害は大人になってからなるものではなく、先天的なものです。しかし今「大人の発達障害」が増えています。
発達障害とは生まれながらにもつ、ものの捉え方や行動に特徴(特性)がある脳機能の障害です。
育て方や環境・本人の性格などが要因で発症するものではない、いわゆる「脳の個性」です。
発達障害の特性上、幼少期から人との関わりや社会生活の中で一定の困難さが見られるため、子どもの頃に発覚することが多くあります。
また一方で、その特性が軽度の場合は目立った問題にならないために、発達障害と診断を受ける機会がないまま大人になる場合もあります。
そのケースで増えているのが、社会人として働くうち、発達障害が持つ特性によって仕事や人間関係につまづき、うつ病を発症するケースです。
このように、発達障害が原因で周囲との不適応が高じてしまい、精神疾患を併発したり問題行動に結びついたりしてしまうことを『二次障害』といいます。
「大人の発達障害」とは、二次障害をきっかけに発達障害が発覚したケースであって、大人になってから発達障害を発症したというものではありません。
▶発達障害で併発しやすい病気や症状とは?二次障害の治療方法についても解説
二次障害でうつ病になる原因
発達障害における脳の特性には、人とうまくコミュニケーションがとれない、ミスや忘れ物・不注意が多いなどがあります。
本来は特性であるため周りの理解が必要で、本人に悪気があるわけでも、親の育て方に問題があるわけでもありません。
しかし、周囲の人からは理解されず、叱られたり責められたりして、なかなか受け入れてもらえない現状があります。
そのような経験を繰り返すうち、自己評価の低下・無力感・罪悪感などによって日常的に心にダメージを受けて、うつ病の発症につながるケースがあります。
しかし、発達障害だからといって必ずうつ病を発症するわけではありません。
発達障害に対して、周囲の人からの適切な理解やサポートがあり、本人自身も意識して生活を工夫することで、二次障害を避けられる場合があります。
発達障害は子どものうちであれば分かりやすい症状ですが、大人になると自他共に生きづらさを感じつつ、気付かないまま生活を続ける人も多いです。
発達障害と診断されないことや自覚に至らないまま苦しい立場に置かれることが、発達障害の人にうつ病が多い原因といえます。
3種類の発達障害

発達障害には以下の3種類があります。
- 自閉症スペクトラム障害(ASD)
- 注意欠如・多動性障害(ADHD)
- 学習障害(LD)
このうちで、うつ病になりやすいといわれている発達障害は、ASDとADHDです。
ASDとADHDは成長とともに症状が変化する場合がありますが、生涯にわたり特性が持続することが多いとされています。
以下では、ASDとADHDについて詳しく紹介します。
自閉症スペクトラム障害(ASD)
自閉症スペクトラム障害(ASD)の症状は以下の通りです。
- 社会的な関係をもちづらい
- 相手の気持ちが汲み取れない
- コミュニケーションが難しい
- 特定のものにこだわるため活動や興味の範囲が広がらない
- 単調な行動など、特徴的な行動や動作が見られる
- 変化に対して不安や抵抗がある
- 音や光などの感覚に過敏
知的障害や言葉の遅れなどがなく、一般的に大人が子どもにする程度のサポートがあれば問題行動が目立たないなどの場合、気付かれないまま大人になります。
記憶力がよい場合は学生時代に勉強で困ることもなく、高学歴の人が多い傾向もあります。
しかし情報が多いと総合的に処理することができず、問題を起こすことが多いです。
「やる気がないなら帰れ」の言葉の裏の意味が分からず本当に帰ってしまったり、目上の人が目の前にいても気配りできずに頬杖をついてしまったりします。
人に対しても「✖✖な所が嫌だけど○○な所は尊敬できる」とはならず、自身が小さな失敗をすれば全部が嫌になるなど、白か黒でしか認識しない極端なところがあります。
また、大人の社会生活では金銭や時間の適切な管理が必要ですが、寝ずに趣味に没頭したり収集に大きく散財したり、こだわりが強い故の行動が見られるため注意が必要です。
注意欠如・多動性障害(ADHD)
注意欠如・多動性障害(ADHD)の症状は以下の通りです。
- 忘れ物や失くし物が多い
- 片付けが苦手
- ミスが多く、気をつけていても減りにくい
- 時間内や締め切りに間に合わせる行動が難しい
- 2つのことを同時に行うのが苦手
- 親しみやすさがあるが、カッとしやすい
- じっとしていられない・衝動性がある
- 我慢ができない
年齢相応の落ち着きが見られず、注意を持続することが難しいため、仕事のミスにつながってしまいます。
以上の全てが見られる場合もあれば、どれか1つのみが強く認められる場合など、症状の見え方はさまざまです。
着席していられない・急に喋り出すなど、子どものうちは顕著に表れやすい症状が、大人になるにつれ目立たなくなるケースもあります。
しかし、待たされた時にイラついたり、人の話の途中で割り込んで一方的に喋ったりするような、一般的にありえるような形で症状が現れることがあります。
本人の性格や知能に問題がないのに、社会的な適応性が悪く、人間関係も親密に持続するのが困難であることが多いため、本人も悩んだり自尊心が低下しがちです。
発達障害が背景にあるうつ病の治療

発達障害がベースとなっているうつ病患者の治療について紹介します。
通常のうつ病患者の治療と比べ、何か違いがあるわけではありません。
しかし症状が改善されたとしても、うつ病の発症が発達障害に起因する場合は並行して対処する必要があります。
薬物療法
発達障害に併発したうつ病に対して特別な薬剤はなく、一般的なうつ病治療のガイドライン(厚生労働省など)に従った薬物療法が行われます。
うつ病では一般的に抗うつ剤が投与され、決められた量を指示通りの期間中服用することが大切です。
しかし発達障害のASD・ADHDを併発しているうつ病の場合、双極性障害を合併する率が高く、うつ病だけの治療では双極性障害が悪化する可能性があります。
そして自分に合う抗うつ剤が見つかるまでにも時間がかかるケースもあるため、主治医とよく相談しながら治療を進めていく必要があります。
▶うつ病と双極性障害(躁うつ病)の違いは?症状・原因・治療法とセルフチェックリスト
心理療法
発達障害を背景としたうつ病の心理療法では、認知行動療法(CBT)が一般的です。
CBTはストレスや不安などにより固まったり狭くなったりした考え方や行動を、自身の気付きや練習によって解きほぐしていく、癖を調整するための療法です。
発達障害の認知が歪む原因に、白黒思考や極端な一般化・感情的な決めつけや自己関連付け(全てを自分の所為だと考える)など「自動的な思考の元となる価値観」があります。
CBTでは、ストレスを感じた具体的な出来事を取り上げ、その際の「認知・感情・身体・行動」の4つの側面を整理して考えます。
例えば「友人とすれ違いざまに目を逸らされた」とします。
- 悲観的な考えが浮かぶ(認知)
- 悲しくて不安になる(感情)
- 胃が痛くなった・吐き気がした(身体)
- 人目を避けて急いで帰宅し、部屋に引きこもった(行動)
このようなストレスの強い出来事による4つの反応を「ストレス反応」といい、自身がもつこのパターンに気付いて調整していくことを目指します。
この4つの反応の中で、コントロールしにくいのは感情と身体で、しやすいのは認知と行動です。
この一連の流れから特徴的な癖に気付いて、認知と行動のコントロールを試み、ものの見方を見直し考えの幅を広げるのが認知行動療法です。
個別の対応が必要な場合がある
発達障害を根底としたうつ病の人には、通常のうつ病の人の場合とは違い、個別での対応が必要になる可能性があります。
例えば「ゆっくり休んでください」という声掛けをした場合、何をして休めばいいのか、スケジュールをどうするかなど、戸惑いや不安を感じるケースがあります。
そのような場合、「1日に1時間は横になって休んで、次の1時間は運動しましょう」など、具体的な指示が必要です。
また、うつ病の症状がある程度改善しても、根底にある発達障害がそのままだと、うつ病の長期化・悪化・再発につながる可能性があります。
うつ病の治療が優先ですが、同時に発達障害に対しても適切な対処が必要です。
生活習慣の改善
発達障害の人は、注意されたり叱られたりすることで、できない自分にフォーカスしてしまい、それをカバーするために仕事や作業に没頭して、疲労感を強くしてしまう傾向があります。
ストレスや不安で不眠や過眠になり生活リズムが崩れてしまうことで、うつ病などの二次障害に陥りやすくなります。
適度に休んで健康な生活リズムを送ることは、精神疾患の予防にもなるため、健康的な生活習慣をぜひ自身で心がけましょう。
職場の環境を変える
周囲にサポートを求めやすい職場環境にすることは、発達障害が根底にあるうつ病を発症した場合の人にとって大変重要な対応策です。
不得意なことが多い一方で、人よりも得意だったり優れていたりする能力が目立つのも発達障害の人の特徴のため、本人に合った内容の仕事をするのが適切な対応となります。
例えば人とのコミュニケーションがスムーズではない場合、営業や接客業などは苦労するというのが分かります。
以下は、ASDの人の仕事に対する向き不向きの一例です。
- 得意な仕事
- 規則的・計算的な仕事
- 反復作業
- 専門知識がいる仕事
- 扱う情報量が膨大な仕事
- 製品管理・整理
- 苦手な仕事
- 臨機応変な計画変更が必要な仕事
- 顧客ごとに個別対応する仕事
- 対話が主で形にならない要素が多い仕事
一方、ADHDの人が向いている・向いていない仕事は以下です。
- 得意な仕事
- 臨機応変な手早い作業が必要な仕事
- 自主的に動き回る仕事
- ひらめきや企画力を求める仕事
- 新しい情報を求める仕事
- 移動が多く、身体を動かす機会が多い仕事
- 苦手な仕事
- 文字や数字の確認が多い仕事
- 長期の計画を立ててじっくり進める仕事
- 待ちが多い仕事
発達障害が根底にある場合、できていた仕事やその部署から異動・昇進などで苦手な職務内容に変わった際にうつ病を発症することが多くあります。
発達障害の人がうつ病のような二次障害を発症せずに働き続けるためには、まず自分の障害の特性について理解することが必要です。
自身の得意・不得意は何か、どのような場合に問題が生じるかを知った上で、配置転換や仕事内容の変更など、特性に応じた環境への調整をしてもらいましょう。
発達障害の診断

発達障害の診断を受けることは、本人が生きづらさを感じる理由が判明し、適切な治療を受けられ、周囲の人に特別な配慮が得られる可能性にもつながります。
性格や育てられ方に問題があるのではないことを知り、サポートの範囲が広がると、自己肯定感を低くする必要がなく、うつ病などの二次障害の予防も期待できます。
正式な診断によって社会的な偏見を受けたり、将来への不安が生じたりするデメリットがあるとも考えられますが、二次障害を改善するニーズがあれば診断を受ける検討も必要です。
発達障害の診断は、精神科や心療内科などの医療機関で、専門の医師による問診や心理検査等を通じて行われます。
診断の際の内容は以下の通りです。
- 問診……特性の種類や程度、仕事への影響などを確認する
- 今困っていること
- 子どもの頃からこれまでの生活についてなど
- 家族から聞き取ることもある
- CT・MRI(必要に応じて)
- 心理検査(必要に応じて)
- 知能検査。計算問題やパズルなど、問題を解く形で行われる
- 適応能力検査。本人の様子に詳しい人に面接を行う
診断のメリットは何よりも自己理解が深まることと、周りの理解です。
特性を知ると、何に困るのかが分かり、自身も周りも対処法を考えられるため、困りごとを軽減できる可能性が高まります。
うつ病の治療を優先しながら、並行して発達障害にも対処していくことは、悪化や長期化を避けるためにも適切な治療です。
うつ病から発達障害に気付くことが重要
「仕事が長く続かない」「友達ができない」など、うつ病になった人でそういった問題がある場合、発達障害に気付かれていないケースがあります。
社会生活をするうえで重要になる人間関係や環境に大きく影響するため、適切に対応するためにも医療機関での検査・診断が重要です。
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