解離性障害とは?原因・治療・症状チェックリストや思い込みと言われる理由を解説

投稿日 2026年05月20日

解離性障害
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解離性障害は、強いストレスや心的外傷などの影響により、「気づいたら時間の感覚が抜け落ちている」「自分が自分でないように感じる」といった症状が起こる状態です。

「解離」自体は、ストレスから心を守るための反応の一つであり、誰にでも起こりうると考えられていますが、この仕組みが頻繁に起こり、生活に支障が出ている場合は解離性障害と診断されることがあります。

この記事では、解離性障害とはどのようなものか、正常な解離との違い、原因、治療法、受診の目安などについて詳しく解説します。

解離性障害(解離症)とは

解離性障害(解離症)とは、記憶・意識・自己同一性・感覚などが一時的または持続的にうまくいかなくなる状態を指します。

強いストレスやトラウマ体験と関連することが多く、つらい体験から心を守るための防衛的な働きが背景にあると考えられています。

解離性障害の代表的な症状としては、「記憶が抜け落ちる(解離性健忘)」「自分を外から眺めているように感じる(離人感・現実感消失)」などです。

ドラマや映画、小説などのテーマとして取り扱われることがある「多重人格障害(解離性同一性障害)」も解離性障害の一つです。

健康な状態であれば、意識や記憶、自分が自分であるという感覚は常に保たれており、細かな出来事を思い出せないことはあっても、出来事を丸ごと思い出せない、あるいは自分が誰なのか分からない状態が長く続くことは基本的にありません。

しかし、解離性障害では自分の感覚、記憶などが断片化し、途切れたりする現象がみられます。

転換性障害とは

解離性障害と関連して語られることがあるのが、転換性障害です。

心理学での「転換」とは、ストレスから自分を守るために別の症状が出現することを言います。

転換ではさまざまな症状が現れ、主に精神面に症状が現れるものが「解離性障害」、一方、身体面に症状が現れるものは「転換性障害」といいます。

これまでは別々に診断されていましたが、ICD-11ではまとめて「解離性障害」と扱われるようになりました。

  • 感覚鈍麻、感覚麻痺
  • 歩行困難
  • 不随意運動
  • 心因性非てんかん性発作(けいれん、意識消失)
  • 声が出ない(失声)
  • 心因性疼痛
  • 視力障害
  • 聴力障害
  • 味覚障害
  • 発語障害

転換性障害では、上記のようなさまざまな身体機能の変化(症状)が見られます。

「解離」とは、どんな状態?

解離とは、本来は一つにまとまっているはずの意識・記憶・感情・身体感覚などが、一時的に切り離されたように感じる状態を指します。

解離は誰にでも起こる現象であり、例えば、強いショックを受けたときに現実感が薄れたり、出来事を思い出せなくなったりする体験をしたことがある方もいるのではないでしょうか。

もっと身近な例では、音楽やラジオを聞きながら、あるいは空想に夢中になりながら帰っていたら、気がついたら家にいて、帰宅中のことを覚えていないなどです。

このような解離は「正常解離」といわれ、日常生活で問題になることはほとんどありません。

一方で、解離性障害の場合は、数分間や数時間、またはさらに長期間にわたって、記憶が欠落してしまうことがあります。

解離の頻度が高く長期間続く場合や生活に支障が出る場合には、治療が検討されます。

解離性障害の症状

解離性障害の症状は多岐にわたり、現れ方も個人差があります。

中心となるのは、記憶や意識の断片化、自己同一性(アイデンティティ)の混乱、身体機能の変化などです。

周囲からは気づかれにくい場合もありますが、本人にとっては強い不安や困惑を伴うことが少なくありません。

ここでは代表的な症状ごとに詳しく解説します。

解離性健忘

解離性健忘とは、特定のストレスがきっかけになり、出来事の記憶が思い出せなくなる状態です。

単なる物忘れとは異なり、ある出来事のエピソード自体が抜け落ちてしまうというもので、これまで解離性障害の症状がなかった人でも、大きな精神的ショック(震災、事故、虐待など)を受けたことで解離性健忘が起こることがあります。

数日のうちに記憶が戻ることもあれば、長期間思い出せないこともあります。

カタレプシー

カタレプシーは強硬症とも呼ばれ、外部から体を動かされるとその姿勢のまま固まってしまい、自分の意思で動かそうとしない状態を指します。

緊張病(カタトニア)の一種で、統合失調症や心因性精神障害でも見られ、他の精神疾患との鑑別が重要です。

解離性昏迷

解離性昏迷は、音や光などの刺激に対する反応が著しく低下し、ほとんど動かなくなる状態です。

大切な人の突然の死、事故、災害などの強いストレスやトラウマが原因となって生じることが多く、意識があるのにもかかわらず、周囲に反応できなくなります。

解離性てんかん(心因性非てんかん発作)

解離性てんかん(心因性非てんかん発作)は、心理的ストレスが原因となって起こるてんかん発作のことを指します。

けいれん、意識消失、麻痺などてんかん発作に似た症状が起こり、症状だけではてんかんとの鑑別が難しいため脳波検査などを行う場合もあります。

離人感・現実感消失障害

離人感・現実感消失障害とは、身体や精神が切り離された状態が続く、または繰り返されることを指します。

うつ病の症状として見られることもあり、自分が自分でないように感じたり(離人感)、周囲の世界が現実味を失ったように感じる(現実感消失障害)ことがあります。

一時的な離人感や現実感消失自体はよく見られ、例えば強い疲労があるときに起こることがありますが、長期間続いたり、再発を繰り返す場合は治療が必要になることがあります。

解離性遁走

解離性遁走(かいりせいとんそう)は、記憶の一部もしくはすべてが抜け落ち、突然自宅や職場から離れ、これまでいた環境から姿を消してしまう解離性健忘の一種です。

発症はまれですが、解離性障害の中で最も深刻とされ、我に返って元の生活に戻った後も過去のことを思い出せないケースが多く、記憶が戻らないままであることも少なくありません。

解離性同一性障害(多重人格障害)

解離性同一性障害(多重人格障害)は、複数の人格状態が交代して現れ、それぞれで記憶や行動が異なる状態を指します。

幼少期〜児童期に極度のストレスにさらされると、心を守るため「解離」が起こり、自分の経験を一つの人格に統合できなくなることがあります。

解離性同一性障害は、単なる性格の多面性とは異なり、別人格が現れている間は性格、話し方、筆跡なども大きく異なることが特徴です。

解離型の心的外傷後ストレス症(解離型PTSD)

PTSDの中でも、強い解離症状を伴うタイプは解離型PTSDと呼ばれます。

フラッシュバック、悪夢、強い不安や緊張といったPTSDの症状に加えて、離人感や現実感消失が長期間続く・再発を繰り返す場合に診断されます。

解離性障害の原因

解離性障害が発症するメカニズムははっきりとは解明されていませんが、強いストレス体験や心的外傷(トラウマ)が関与していると考えられています。

心的外傷とは、幼少期の虐待やネグレクト、性的トラウマ、家庭内不和、戦闘体験といった繰り返されるストレスのほか、災害や事故などの一過性のストレスなどです。

強いストレスに晒された際、心を守るために自己を切り離す「解離」が、解離性障害につながっていると考えられています。

ただし、同じ体験をしても必ず発症するわけではなく、個人の気質や周囲の環境も影響します。

単一の原因で説明できるものではなく、心理的・社会的要因が複合的に関与した状態といえるでしょう。

解離性障害の症状チェック・受診の目安

「もしかして解離性障害では」と感じたときは、以下のような状態が起きていないか確認してみましょう。

  • 自分を外から見ているような感覚がある
  • 自分の体験や考えが自分のものではないように感じる
  • 周囲の世界が現実味を失うことがある
  • 知らない間に時間が経過している
  • 本人の様子が変わり、その時の記憶がない
  • 気づいたら別の場所に移動していたことがある
  • 複数の人格が存在するように感じられることがある

上記のような症状があり、日常生活に支障をきたしている場合や、不安を頻繁に感じる場合は精神科や心療内科への相談を検討しましょう。

解離性障害は強いストレスが原因になって起こることが多いものの、本人はきっかけがわからず、症状に気づいていないこともあります

そのため、家族や友人など周囲の人の異変に気づいたら、一度専門家への相談を検討することが大切です。

かかりつけ医がいれば、まずは一度相談してみて、その後の受診先のアドバイスをもらうのもいいでしょう。

解離性障害の診断

解離性障害の診断は問診を中心に行われ、症状や生活への影響、トラウマ体験などを聞き取り、慎重に判断します。

本人が自分の症状を自覚していない場合も多く、家族など周囲からの聞き取りも可能な限り行います。

また、他の病気や薬物の影響を確かめるため、必要に応じてMRIや脳波検査、血液検査、心理検査などを実施し、さまざまな角度から調べて診断を行います。

解離性障害の治療

解離性障害の治療では、まずは安心して治療できる環境を整えることが基本です。

家族や友人といった周囲の理解に加え、信頼できる専門家に相談することが、治療の出発点になります。

  • 心理教育……症状や背景、対処法について本人や家族が理解を深める
  • 環境調整……ストレスを減らし、安全で安定した生活環境を整える
  • 精神療法……対話を通じて感情や体験を整理し、心理的要因に働きかける
  • 薬物療法……薬を用いて不安や抑うつなどの症状を軽減する

上記の治療法の中でも、中心となるのが心理的なアプローチです。

特に、解離性同一性障害ではカウンセリングが重要とされています。

自分の心を自由に表現できない環境が症状を長引かせていた可能性があり、安全な他者との関係を築くことで、解離は徐々に和らいでいくことが期待できます。

薬物療法については、現在、解離性障害に有効な薬はないといわれています。

併存するうつ病や睡眠障害などに対して、対症療法として抗うつ剤や睡眠薬、漢方薬が用いられることがあります。

解離性障害の人に対して周囲ができるサポート

解離性障害のある方を支えるためには、まずは疾患について正しい理解を持ち、安心できる環境を整えることが重要です。

解離症状は多くの場合、幼少期からのつらい体験や強いストレスと深く関係しており、本人は早い段階から違和感に気づいていても、否定される不安や誤解を恐れて周囲に打ち明けられず、症状を隠してしまう傾向があるためです。

職場や学校に対しては、解離症状が起きた場合の適切な対応(すぐに救急搬送するのではなく、静かな場所で見守るなど)を共有しておくことが助けになる場合があります。

しかし、誰にどこまで解離性障害のことを伝えるかは難しい問題で、伝える範囲は本人の意思や状況を踏まえて慎重に判断する必要があるでしょう。

また、解離性障害は家族関係そのものが負担となっている場合もあり、状況によっては第三者の支えが欠かせないこともあります。

今後の治療方針やサポート方法を検討するためにも、専門家への相談を検討してみましょう。

実際の精神科・心療内科に足を運ぶのに抵抗がある場合は、オンライン診療を利用するのも一つの方法です。

自宅からオンラインで自分の都合のいい時間に相談できるため、リラックスして話しやすいでしょう。

解離性障害かもしれないと思ったら信頼できる専門家に相談を

解離性障害は、強いストレスやトラウマと関連して起こる心の反応が長期化した状態です。

解離は誰にでも起こりうる反応ですが、記憶の空白や現実感の消失などが繰り返し起こり、生活に支障が出ている場合は適切な治療が必要になります。

ご自身もしくは周囲の人に、解離性障害の兆候があると考えられる場合は、早めに相談しましょう。

仙台駅西口から徒歩1分の精神科・心療内科『かもみーる心のクリニック仙台院』では解離症状を含むさまざまな心の不調に対し、丁寧な問診と治療を行っています。

不安を抱えたままにせず、まずはご相談ください。

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よくあるご質問

解離性同一性障害で記憶がある場合とない場合があるのはなぜ?

解離性同一性障害で記憶がある場合とない場合があるのは、症状のあらわれ方に個人差があるためです。 解離性同一性障害では強いストレスやつらい体験から心を守るために複数の人格が現れ、ある人格が体験した出来事が他の人格に共有されず、結果として記憶の空白が生じることがあります。 例えば、別の人格が活動している間の出来事を思い出せなかったり、子供時代の出来事に思い出せない期間があったりするなどです。 一方で、人格間で記憶が共有されている場合には出来事を振り返ることができ、この場合は「記憶がある」状態になります。 また、治療が進むと、記憶がある状態が増えることがあります。治療や経過には個人差があるため、詳しくはかかりつけ医に相談してみましょう。

解離性同一性障害は思い込みと言われるのはなぜ?

解離性同一性障害は単なる思い込みや演技ではなく、国際的な診断基準にも位置づけられている精神疾患です。 旧版のICD-10(世界保健機関(WHO)の診断分類)では発生がまれとされていたものの、改訂版のICD-11では独立した障害として明確に分類され、医学的根拠に基づく病気と認められています。 アメリカ精神医学会(APA)が定めた世界的な診断基準のDSM-5(精神疾患の診断・統計マニュアル第5版)でも、解離性同一性障害は明確に定義されています。 一方で、解離性同一性障害の診断に懐疑的な立場を取る専門家もおり、医療機関を受診した際に「そんな病気は存在しない」と否定されるなど、深く傷つく経験をした人がいるのも事実です。 (参考:町沢静夫『解離性同一性障害(多重人格)の原因と治療について An Analysis of the Causes of Dissociative Identity Disorder (Multiple Personality) and Their Psychotherapy』) しかし、本人の感じている苦しみは現実です。 症状を信じてもらえない、あるいは芝居だと思われてしまうという問題は、それ自体がストレスになり、解離性障害の症状を悪化させる原因になります。 自分の苦しみを「思い込み」だと感じたり、つらさを抱えている周囲の人に「嘘だ」と追い詰めるのではなく、まずは「苦しんでいる」という事実を尊重し、専門的な支援につなげることが重要です。