気持ちの浮き沈みが激しい、些細なことで涙がこぼれる、理由のない不安やイライラに振り回されるなど、心が不安定な状態を経験したことがある方は多いでしょう。
誰にでも感情の波はあって当たり前ですが、このような「情緒不安定・精神が不安定・精神状態が悪い」といった状態が続くと、仕事や日常に支障が出てしまうこともあり、早めに対処することが大切です。
この記事では、情緒不安定とはどんな状態か、症状の特徴や原因、対処法や医療機関を受診すべきかどうかなどについて詳しく解説します。
情緒不安定の背後に、うつ病や適応障害といった病気が隠れている可能性も考えられるため、軽く考えて放置せず、自分の感情へ目を向けてみましょう。
情緒不安定とは?どんな状態を指す?

情緒不安定(じょうちょふあんてい)とは、感情が大きく揺れ動き、自分でも気持ちをうまくコントロールできない状態を指します。
心が不安定になり、普段なら気にならないことに敏感になったり、涙もろくなったり、反対に強い怒りが湧きやすくなったりと、日常生活に影響を及ぼすことがあります。
情緒不安定になること自体は、決して珍しいことではありません。
ストレスや疲労、睡眠不足、ホルモンバランスの変化などによる一時的な情緒不安定は、多くの方が経験することです。
しかし、情緒不安定の程度が強い場合や長期間続く場合、精神疾患のような原因が隠れている可能性もあり、適切な見極めが必要です。
一般的な意味
一般的に「情緒不安定」という言葉を使うときは、気持ちの浮き沈みが激しかったり、ちょっとしたことにも過剰に反応してしまうことを指す場合が多いようです。
仕事のミスやつらい出来事があったとき、誰かと喧嘩をしてしまったときなどに、感情が不安定になったり怒りっぽくなってしまった経験がある方もいるでしょう。
このような情緒不安定の多くは一時的なものであり、十分な休養や気分転換によって改善するケースが一般的です。
医学的な定義
情緒不安定は、医学的な用語や疾患名ではなく、厳密な定義はありません。
精神疾患の世界的な診断基準として知られる『DSM-5(アメリカ精神医学会)』や『ICD-10(WHO/世界保健機構)』では、さまざまな疾患や心身の不調で起こる症状や状態を指す表現として使用されています。
例えば、「境界性パーソナリティ障害」や「双極性障害(躁うつ病)」では感情の変動が大きくなり、情緒不安定になる症状が見られることがあります。
また、病気ではなくても、脳の神経伝達物質のバランスの乱れやホルモンバランスや睡眠不足、生活リズムの乱れでも情緒不安定を引き起こすことがあります。
情緒不安定なときに見られる症状

情緒不安定なときは、以下のようなさまざまな症状が見られることがあります。
- 悲しくないのに急に涙が出る・涙が止まらなくなる
- 理由がないのに悲しく憂鬱な気分になる
- 原因がないのにイライラする・怒りっぽくなる
- 気分の浮き沈みが激しくなる
- 衝動的に行動してしまう
- 何かに依存することがある
- その他の症状
ここでは、それぞれの症状について解説します。
悲しくないのに急に涙が出る・涙が止まらなくなる
情緒不安定なときは、テレビを見ているだけ、家事をしているだけなど、特に悲しいことがあったわけでもないのに急に涙が出ることがあります。
急に涙がこぼれる、涙が止まらなくなるなどは、抱えきれなかった感情やストレスが涙としてあふれ出しているのかもしれません。
悲しい出来事があって泣くことはあっても、理由もなく涙が止まらなくなるのは、健康な方ではあまり見られない症状です。
自分でもなぜ涙が出るのか理解できないと、不安や戸惑いが強くなる可能性もあるため、心が限界を迎える前に精神科や心療内科で相談してみましょう。
理由がないのに悲しく憂鬱な気分になる
特別なストレスやきっかけはないはずなのに気分が沈み、憂鬱になる、将来への不安が強くなることもあります。
普段は気にしないことでも、悲観的に考えてしまうこともあるでしょう。
憂鬱な状態が続くと生活リズムが崩れたり、社会生活に影響が出る場合もあり、見過ごさないことが大切です。
原因がないのにイライラする・怒りっぽくなる
情緒不安定な状態では、普段なら気にならないような雑音や人の言葉、ちょっとしたトラブルなどに過剰にイライラしたり、怒りっぽくなったりすることもあります。
怒りの感情のコントロールも難しくなり、苛立ちを誰かにぶつけてしまい、後で自己嫌悪に陥ってしまうケースもあります。
気分の浮き沈みが激しくなる
情緒が不安定だと、「さっきまで元気だったのに、急に不安で涙が出る」「穏やかだったのに、イライラが急に襲ってくる」など、感情の起伏が激しくなります。
気分や感情の波が激しい状態が続くと、自分でも何が本当の気持ちかわかりにくくなることもあるでしょう。
信頼関係に影響したり、コミュニケーション上のトラブルにつながることもあり、注意が必要です。
衝動的に行動してしまう
情緒不安定なときは、衝動的な行動を取ってしまうこともあります。
普段ならよく考えて行動する場面でも、感情に突き動かされるように、思い付きで大きな買い物をする、急に出かけたくなる、大声で口論するなど後先を考えない行動をしてしまいます。
こうした行動は後から後悔する場合が多いだけでなく、人間関係の悪化や思わぬトラブルにつながることもあります。
何かに依存することがある
感情の不安定さが続くと、ストレスを和らげようとして、何かに依存してしまうケースもあります。
例えば、過度な飲酒、過食、衝動買い、SNS、ギャンブルなど、依存の対象はさまざまです。
一時的に安心や快感を得ることはできても根本的な解決にはならず、むしろ依存行動が悪化すると健康に被害が及ぶ可能性があります。
その他の症状
上記に挙げた症状の他にも、情緒不安定な状態では以下のような症状が見られることもあります。
- 集中力の低下
- 仕事・家事への意欲低下
- 不眠や過眠
- 食欲の変化(食欲が増えた、減った)
もしもこのような症状が見られるなら、心が不安定な状態になっているかもしれません。
こうした症状が複数重なるほど、日常の負担が大きくなっている可能性が高く、早めに休息やリフレッシュを取ったり、専門家に相談してみましょう。
情緒不安定になる原因

情緒不安定は多くの場合、複数の要因が重なって生じると考えられています。
ここでは、代表的な4つの原因とそれぞれの概要を表でまとめました。
身体的要因 | ホルモンバランスの変化、睡眠不足、疲労、自律神経の乱れ、アルコールやカフェインの摂取 など |
精神的要因 | ストレス、悩み、慢性的な不安やプレッシャー、トラウマ、性格傾向 など |
環境要因 | 人間関係の変化、職場や家庭環境のストレス、引っ越し、転職、結婚、離婚、育児 など |
脳の神経伝達物質の乱れ | セロトニン・ドーパミンなど感情を調整する物質の不足・過剰 |
身体的な疲労や睡眠不足は、脳の働きを低下させ、感情のコントロールを難しくします。
特にホルモンバランスの変化は感情に影響し、女性では月経(生理)前後、更年期、妊娠・産後に情緒不安定になりやすくなる傾向にあります。
職場や家庭でのストレスや過去のトラウマなども、情緒不安定の引き金になる原因です。
生活環境の変化や、住まいや職場環境などの外的な変化も心に影響し、例えば季節の変わり目に気持ちが不安定になる方や、冬になると気分が落ち込む「冬季うつ(季節性感情障害/SAD)」が見られることもあります。
情緒不安定になりやすい人の特徴

情緒不安定はどんな人にも見られますが、以下に当てはまる人は情緒不安定になりやすい傾向があります。
- ストレスに対する耐性が低い
- 自己肯定感が低く劣等感がある
- 物事を否定的に考える傾向にある
- 感受性が高く他者の感情や環境の変化に敏感(HSP)
- コミュニケーションが苦手
- 完璧主義・責任感が強い
- 周囲のサポートを得にくい環境にいる
性格や考え方が「情緒不安定になりやすさ」に影響するのは、外部の環境やストレスに対する受け止め方や反応が異なるためです。
性格だけで決まるわけではなく、日常のストレス、考え方の癖、周囲の環境、サポートの有無など複数の要素が影響しています。
情緒不安定に男女差はある?

情緒不安定は男女どちらにも起こり得ますが、女性の場合はホルモンバランスの変化によって感情がゆらぎやすい傾向があると考えられます。
日英両国の若者のメンタルヘルスの男女格差についての国際比較研究では、女性の方が男性よりも抑うつ症状が重く、成長につれて差が大きくなるという結果が出ています。
うつ病や不安障害、心的外傷後ストレス障害(PTSD)の有病率は、男性よりも女性の方が2倍程度高いこともわかっており、情緒不安定な症状が続くようであれば我慢せず、早めに適切な対処を取ることが大切です。
ただし、性別だけが情緒不安定に影響するわけではありません。男女関係なく、どんな人でもストレスや生活環境などによって情緒不安定になることはあります。
「男性だから、女性だから」と考える必要はなく、つらさを抱えているのであれば、専門家に相談してみましょう。
(参考:公益財団法人 東京都医学総合研究所『思春期に男女のメンタルヘルス格差が拡大-日英両国の出生コホート研究から明らかに-』)
(参考:清水栄司『社交不安症と脳の性差の進化生物学』)
情緒不安定なときに自分でできる対処法

情緒不安定なときに、自分で試せる対処法はいくつもあります。
「心がそわそわするな」「最近精神状態が良くないかも」と思う場合は、以下の対処法を試してみてください。
ただし、あくまでセルフケアであるため、情緒不安定が続いてつらい場合は、早めに医療機関で医師に相談することが大切です。
しっかり休む | まずは疲労回復を優先。短時間の昼寝や休息でも効果が期待できる |
生活習慣を整える(睡眠・食事・運動) | 睡眠の質を高め、栄養バランスを意識し、軽い運動を取り入れることで心身の安定につながる |
セロトニン分泌を促す | 朝の散歩、深呼吸、リズム運動(ウォーキング・ジョギングなど)が気分の安定に有効 |
自律神経を整える | ぬるめの入浴、腹式呼吸、ストレッチなどで交感神経と副交感神経の切り替えをスムーズに導く |
セルフモニタリングをする | 自分の感情・体調・出来事をアプリや紙にメモすると傾向が見え、対処しやすくなる |
信頼できる人に相談する | 気持ちを言語化するだけで負担が軽減される場合があり、必要なサポートにもつながる |
情緒不安定なときに考えられる病気や障害

情緒不安定や精神状態の悪さは、なんらかの病気や障害が原因になっている可能性があります。
ここでは、考えられる代表的な病気や障害を紹介します。
精神疾患
以下のような精神疾患によって、情緒不安定が生じている可能性もあります。
- うつ病
- 双極性障害(躁うつ病)
- 不安障害
- 適応障害
- 境界性パーソナリティ障害
- 心的外傷後ストレス障害(PTSD)
- 強迫性障害
また、自律神経の乱れによってさまざまな身体症状・精神症状が起こる状態である「自律神経失調症」の可能性も考えられるでしょう。
睡眠障害による睡眠不足も、感情の調整能力を低下させ、情緒不安定の原因になります。
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発達障害
情緒不安定な症状には、注意欠如・多動症(ADHD)、自閉スペクトラム症(ASD)といった発達障害が影響している可能性もあるでしょう。
注意欠如・多動症(ADHD)とは、不注意・多動性・衝動性の3つを特徴とする発達障害で、感情の制御が難しいことがあり、衝動的な発言によってコミュニケーションや日常生活に影響が起こることがあります。
自閉スペクトラム症(ASD)は、強いこだわりや社会的なコミュニケーションの難しさといった特徴を持つ発達障害です。
環境が変わることへのストレス、他者の意図を読み取る難しさやコミュニケーションの難しさ、感覚の過敏さが情緒不安定につながることがあります。
▶ADHD(注意欠如・多動症)とは?発達障害との関係や特徴、対応法を解説
女性特有の病気や状態
以下のような、女性特有の病気や状態が影響している可能性もあるでしょう。
- 月経前症候群(PMS)
- 月経前不快気分障害(PMDD)
- 更年期障害
- 産後うつ
月経前後はホルモンバランスの変化によって情緒不安定が起きやすくなりますが、症状が強い場合は「月経前症候群(PMS)」や「月経前不快気分障害(PMDD)」が原因となっている可能性もあります。
更年期障害や産後うつも、適切な治療によって症状を緩和できるため、我慢せず一度医療機関で相談してみてください。
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情緒不安定なときは精神科・心療内科で相談すべき?

情緒不安定そのものは病気ではなく、誰にでも起こり得るものです。
しかし、長期間続いたり日常生活に支障がある場合は、一度医師やカウンセラーに相談してみましょう。
受診に抵抗がある場合は、オンライン診療・カウンセリングを利用する選択肢もあります。
自宅から診察やカウンセリングが受けられるため「情緒不安定なだけで病院に行ってもいいの?」不安な方も相談しやすいでしょう。
精神科・心療内科での治療法
情緒不安定な状態には決まった治療法はなく、一人ひとりの悩みや症状に合わせて治療方針を決めていきます。例えば、以下のような治療法があります。
- 精神療法(カウンセリング、認知行動療法、自律訓練法など)
- リラクゼーション法(瞑想、マインドフルネス、深呼吸など)
- 環境調整(ストレスの原因を調整し、負担を減らす)
- 薬物療法(睡眠障害、気分の落ち込み、イライラなど症状に合わせた薬を処方)
「なるべく薬は使いたくない」「セルフケアをしっかり行いたい」など、自分の希望を伝えて一緒に治療方針を考えてもらうこともできるため、不安になりすぎず一度相談してみましょう。
情緒不安定なときは心と身体を休めることが大切
情緒不安定は誰にでも起こることがあるものの、長引く場合は仕事や日常生活に支障が出てしまう可能性もあります。まずは休息とリフレッシュで、心と身体を休めてあげましょう。
ただし、情緒不安定はうつ病や適応障害といった病気が背景になっていることもあります。
ネット上の簡易的なセルフチェックでは情緒不安定な状態が病気のせいか診断はできないため、改善されない場合は医師やカウンセラーに相談してみましょう。
オンライン診療・オンラインカウンセリング『かもみーる』では、専門の医師や有資格の心理士にオンラインで相談が可能です。
オンライン診療は24時まで行っておりますので、仕事帰りの夜遅い時間に予約することもできます。
情緒不安定な状態が続いてつらい方、気分の浮き沈みが病気が原因ではないかと不安な方はぜひお気軽にご相談ください。
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