忘れ物が多いと自分を責めてしまったり、「だらしない性格だから」と感じてしまったりする人も少なくありません。
しかし、忘れ物の原因は単なる不注意だけではなく、ストレスや生活習慣の乱れ、さらには脳や心の働きに関係していることもあります。
心理的な要因や環境の影響、病気が隠れているケースもあるため、原因を知り、適切に対処することが大切です。
この記事では、忘れ物が多い原因とその対処法について詳しく解説します。
考えられる病気の特徴などもまとめているため、ぜひ参考にしてみてください。
忘れ物が多い原因

忘れ物が多いときは、性格や注意力の問題だけでなく、心理的な負担や生活環境、脳の働きなど、さまざまな要因が関係しています。
本人が「うっかりしているから」と思い込んでしまうこともありますが、実際には複数の理由が重なっていることが多いです。
ここでは、心理的要因・環境要因・脳機能の要因の3つに分けて、忘れ物が起きやすくなる原因について解説します。
心理的要因
ストレスや不安、緊張などの心理的な状態は、忘れ物の大きな原因の一つです。
強い緊張やプレッシャーを感じていると、脳が情報を整理しにくくなり、集中力や記憶力が低下します。
その結果、持ち物を確認する余裕がなくなり、必要なものを置き忘れてしまうことがあるのです。
また、悩みごとが多いと注意が分散し、目の前のことに意識が向かなくなります。
特に子どもの場合は、学校生活や人間関係のストレスが原因で集中力が続かないケースも少なくありません。
さらに、睡眠不足や疲労も心理的な余裕を奪い、判断力の低下を引き起こします。
環境要因
周囲の環境も忘れ物の多さに大きく影響します。
例えば部屋が散らかっていたり、物の定位置が決まっていなかったりすると、必要なものをすぐに見つけられず、準備の段階で抜けが生じやすくなります。
また、朝の準備を慌ただしく行う習慣がある人は、焦りや時間のなさから確認を忘れてしまうことが多いです。
家庭や職場など、常に音や人の動きが多い環境も注意を奪う原因になります。
マルチタスクを求められると脳が処理しきれず、持ち物チェックのような小さな作業が抜け落ちやすくなるのです。
環境を整えたり支度をする時間にゆとりを持ったりすることで、忘れ物を減らせるでしょう。
脳機能に関する要因
脳の働きそのものが関係している場合もあります。
注意力や記憶力をつかさどる脳機能が低下すると、情報を覚えたり思い出したりする力が弱くなるのです。
これは加齢や疲労のほか、発達特性によっても影響を受けることがあります。
例えばADHD(注意欠如多動症)の傾向がある人は、注意を持続することが難しく、頭の中では分かっていても行動に移す前に忘れてしまうことがあります。
また、記憶を整理する力が上手く働かないと、「あとでやろう」と思ったことを思い出せなくなることもあるのです。
こうした場合、本人の努力だけでは改善が難しいこともあるため、医療機関での相談も検討しましょう。
脳機能の特性を理解したうえで、リスト化やルーティン化といった対策を行うと、忘れ物を減らしやすくなります。
忘れ物が多いときに考えられる病気

忘れ物が多いときに考えられる病気として、以下の7つが挙げられます。
- ADHD(注意欠如多動症)
- うつ病
- 不安障害
- PTSD(心的外傷後ストレス障害)
- 睡眠障害
- 認知症
- 自律神経失調症
ここでは上記7つの病気についてそれぞれ解説します。
ADHD(注意欠如多動症)
ADHD(注意欠如多動症)は『不注意』『多動性』『衝動性』の3つの特徴を持つ発達障害です。
特に『不注意型』の人は、集中力を維持することが難しく、やるべきことを忘れてしまう傾向があります。
例えば学校や職場で指示を受けても途中で気が散ってしまったり、持ち物を準備している途中で別のことに気を取られたりすることがあります。
ADHDの人は、脳の『ワーキングメモリー(情報を記憶・整理する働き)』が弱いとされており、同時に複数の情報を扱うことが苦手です。
そのため、「次に何をするか」を頭の中で整理するのが難しく、結果として忘れ物やケアレスミスが増えてしまいます。
ADHDの特性は努力不足ではなく、生まれ持った脳の働き方によるものです。
本人の意思ではコントロールしづらい部分もあるため、スケジュール帳やチェックリストを使うなど、外部のサポートを取り入れることが大切です。
困りごとが続く場合は、発達障害に詳しい医療機関で相談することを検討しましょう。
▶ADHD(注意欠如・多動症)とは?発達障害との関係や特徴、対応法を解説
うつ病
うつ病は、強い気分の落ち込みや意欲の低下、興味の喪失が続く病気です。
心のエネルギーが不足している状態で、眠れない、食欲がない、疲れやすいといった身体的な症状も現れます。
こうした状態では集中力や記憶力が低下し、仕事や勉強、日常生活の中でうっかり忘れることが増えてしまうのです。
例えば会話の内容を覚えていられない、やるべきことを思い出せない、簡単な手順を間違えるといったことが起こります。
本人は「ちゃんとしなきゃ」と思っていても、脳が情報を整理する力を十分に発揮できないため、自然と忘れ物が多くなります。
うつ病は、周囲から「怠けている、甘えている」と誤解されやすいですが、怠けでも甘えでもありません。脳内の神経伝達物質のバランスが影響している脳の病気です。
心のエネルギーを回復させるには、しっかり休むことと、専門家に相談することが大切です。
早めに治療を受けることで気分や集中力が少しずつ回復し、忘れ物などの困りごとも減っていくでしょう。
不安障害
不安障害は、過度な心配や恐怖が続き、生活に支障をきたす病気です。
大勢の前で話すことや外出することに強い不安を感じる『社会不安障害』、突然の激しい不安発作が起こる『パニック障害』、何度も確認行為を繰り返してしまう『強迫性障害』など、いくつかのタイプがあります。
不安が強い状態では、常に頭の中が「もし失敗したら」「また不安になるかも」といった考えでいっぱいになります。
そのため注意力が分散し、目の前のことに集中できなくなるのです。
例えば外出時に「戸締まりは大丈夫かな」と気を取られて、他の持ち物を忘れてしまうといったケースもあります。
本人の努力のみではコントロールが難しいため、症状が続く場合は心療内科や精神科で相談しましょう。
適切な治療やカウンセリングを受けることで、心が落ち着き、注意力も徐々に回復していきます。
▶不安障害の種類別の症状・診断基準┃セルフチェックや治療法も解説
PTSD(心的外傷後ストレス障害)
PTSD(心的外傷後ストレス障害)は、事故や災害、暴力、虐待など、強い恐怖やショックを伴う体験がきっかけで起こる心の病気です。
トラウマとなった出来事が脳の中で整理されないまま残り、突然その記憶がよみがえる『フラッシュバック』や悪夢に悩まされることがあります。
このような状態では、常に緊張や不安を感じやすく、集中力を維持するのが難しくなります。
頭の中がトラウマの記憶で占められ、他のことに注意を向けられないため、結果として忘れ物やミスが増えるのです。
心の傷を抱えたまま無理に日常生活を続けると、症状が悪化することがあります。
専門家と一緒に少しずつ過去の出来事を整理していくことで、再び落ち着いた生活を取り戻せる可能性があるでしょう。
睡眠障害
睡眠障害とは、寝つきが悪い、途中で何度も目が覚める、早朝に目が覚めてしまうといった不眠の症状が続く状態をいいます。
十分に眠れないと脳の働きが鈍り、集中力や記憶力が低下します。
そのため、朝の準備を忘れたり、予定を思い出せなかったりと、日常生活に支障が出やすくなるのです。
慢性的な睡眠不足が続くと、忘れ物だけでなく、気分の落ち込みやイライラ、不安感も強くなります。
特に、ストレスや生活リズムの乱れが原因で眠れない状態が続くと、自律神経のバランスが崩れ、より眠りにくくなる悪循環に陥ることもあります。
睡眠障害は誰にでも起こりうる身近な病気です。
まずは寝る前にスマホを見ない、就寝時間を一定にする、カフェインを控えるなどの生活改善が大切です。
それでも改善しない場合は医療機関で相談しましょう。
適切な治療を受けることで、眠りの質が改善し、忘れ物などの不注意も減っていきます。
▶TMS治療は睡眠障害にも効果がある?原因別のアプローチ法や効果を紹介
認知症
認知症は、脳の神経細胞が徐々に変化することで、記憶や判断力が低下する病気です。
初期の段階では「昨日の出来事を思い出せない」「物をどこに置いたか忘れる」といった軽い物忘れから始まります。
しかし、症状が進行すると、「朝ごはんを食べたこと自体を忘れる」「同じ話を何度もする」といった深刻な記憶障害が現れます。
加齢による単なる物忘れと違い、認知症では「忘れたこと自体を覚えていない」「日常生活に支障が出る」という点が特徴です。
また、認知症の初期には自覚症状が少なく、家族に指摘されて初めて異変に気づくこともあります。
物忘れが頻繁になったり、時間や場所の感覚があいまいになったりする場合は、早めに医療機関を受診しましょう。
自律神経失調症
自律神経失調症は、体の働きを調整する自律神経のバランスが崩れることで起こる症状です。
自律神経は呼吸や血流、体温、消化などをコントロールしているため、このバランスが乱れると体・心にさまざまな不調が現れます。
主な症状は動悸、めまい、肩こり、頭痛、発汗、手足の冷え、倦怠感などです。
これらの身体的な不調に加えて、集中力の低下や注意散漫、イライラ、不安感といった精神的な症状も伴うことがあります。
こうした状態では仕事や勉強、日常の準備に集中できず、忘れ物が増えやすくなります。
原因はストレスや生活リズムの乱れ、過労、気候の変化などさまざまです。
特にストレスが続くと脳が疲労し、自律神経の働きが乱れやすくなります。
まずは休養を取り、栄養バランスのよい食事や軽い運動を意識することが大切です。
改善しない場合は医療機関で相談しましょう。
忘れ物を減らすための対処法

忘れ物を減らすための対処法は以下の通りです。
- ツールやアプリを活用する
- 環境を整える
- 生活習慣を整える
- 精神療法
- 薬物療法
ここでは上記5つの対処法についてそれぞれ解説します。
ツールやアプリを活用する
忘れ物を防ぐには、頭の中だけで覚えておこうとせず、ツールやアプリを活用するのがおすすめです。
手軽なのは、付箋やメモを使って「持っていくもの」や「やること」を書き出す方法です。
玄関や机など目につく場所に貼ることで、出かける前に自然と確認でき、うっかり防止に役立ちます。
また、スマホのリマインダーやTODOリストアプリも効果的です。
例えば「朝7時に書類を入れる」といった通知を設定しておけば、アラームで準備のタイミングを教えてくれます。
仕事や予定管理が苦手な人は、1日のタスクをアプリに入力し、終わった項目をチェックしていくと抜け漏れを防げます。
環境を整える
忘れ物を減らすためには、身の回りの環境を整えることが重要です。
物の場所がバラバラだと、「どこに置いたか分からない」という混乱が起きやすくなります。
よく使う物は定位置を決め、「鍵は玄関のフック」「スマホは充電器の隣」など、置く場所を習慣化しましょう。
また、部屋が散らかっていると注意が分散しやすく、探し物の時間も増えます。
片付けが苦手な人は、「使ったら戻す」「1日5分だけ片付ける」といったルールを作ると無理なく続けられます。
さらに、持ち物を減らすのも効果的です。
カバンを複数使うと中身の入れ替えで忘れ物が起こりやすくなるため、通勤・通学用は1つに統一するのがおすすめです。
環境を整えることで注意を向けるべき対象が少なくなり、自然と忘れ物のリスクを減らせます。
生活習慣を整える
十分な睡眠、バランスのとれた食事、適度な運動など、健康的な生活習慣を身につけましょう。
寝不足が続くと記憶力や集中力が低下し、ちょっとしたことを忘れやすくなります。
毎日同じ時間に寝起きし、質の良い睡眠を取ることを意識しましょう。
朝の時間に余裕を持つことも大切です。慌てて支度をすると確認がおろそかになり、忘れ物が増えます。
前日のうちにカバンを用意しておく、服を準備しておくなど、朝やることを減らす工夫をすると安心です。
精神療法
ストレスや不安が原因で注意力が落ちている場合は、精神療法が有効です。
カウンセリングを通して、悩みやストレスの整理を行うことで、気持ちを安定させることができます。
『認知行動療法』は、考え方や行動の癖を見直すことで、ミスを減らす方法を学べる治療法です。
例えば「失敗したらどうしよう」という不安な考え方を「できることから準備すれば大丈夫」と捉え直す練習を行います。
これにより心の緊張が和らぎ、注意力も回復しやすくなります。
カウンセラーや臨床心理士と一緒に取り組むことで、日常生活のミスや忘れ物も徐々に減らせるでしょう。
薬物療法
忘れ物が多い原因が脳の機能低下や精神的な病気によるものの場合、薬物療法が必要になることもあります。
例えばADHDでは、注意力を高める薬が用いられることがあります。
また、強い不安や緊張が集中を妨げている場合には、不安を和らげる薬や抗うつ薬が処方されることもあります。
薬物療法はあくまで症状を一時的に改善し、生活を送りやすくするためのサポートです。
薬だけに頼るのではなく、生活習慣の改善や心理療法と併せて行うことでより効果が期待できます。
忘れ物が多くて悩んでいる人は専門家に相談してみましょう
忘れ物が続くと、「努力が足りない」と感じてしまいがちですが、実は脳や心の働きが関係していることも多くあります。
生活環境を整えたり、ツールを活用したりすることで改善する場合もありますが、それでも繰り返すときは専門家への相談を検討しましょう。
『かもみーる』では、医師や臨床心理士や公認心理士といった有資格者によるオンライン診療・カウンセリングサービスを提供しています。
忘れ物に悩んでいる場合や心療内科の受診を検討している場合は、ぜひ利用を検討してみてください。
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