突発的な行動とは、本人の意思とは関係なく、瞬間的に思いついたことを実行してしまう行動を指します。
一見すると「落ち着きがない」「空気が読めない」と捉えられてしまうこともありますが、実はADHDなどの発達特性に由来する場合があります。
特にADHDでは、衝動性や多動性によって突発的な言動が表れやすく、日常生活や人間関係に支障をきたすことも少なくありません。
この記事では、突発的な行動をする理由やADHDに関連する突発的な行動の特徴について解説します。
突発的な行動の対処法や治療法もまとめているため、ぜひ参考にしてみてください。
突発的な行動をする理由

突発的な行動をする主な理由として、以下の4つが挙げられます。
- ストレス発散
- 好奇心
- 周囲の影響
- 間欠爆発症やADHD
ここでは上記4つの理由についてそれぞれ解説します。
ストレス発散
強いストレスを感じていると、人は時に思いがけない行動を取ることがあります。
これは、積もりに積もった精神的な負担を一時的にでも解消しようとする無意識の反応です。
例えば、仕事や人間関係でのストレスが限界に達すると、衝動的に遠出をしたり、高額な買い物をしたりする人もいます。
こうした行動は一見、非合理的に思えるかもしれませんが、本人にとっては「とにかく現状から抜け出したい」という切実な感情が反映された行動です。
ストレスの原因に正面から向き合うのではなく、一時的に別の刺激を得て気分を変えたいという心理が働いているのです。
好奇心
好奇心は新しい経験を求める自然な感情ですが、それが突発的な行動に直結することもあります。
「やってみたい」「気になる」といった感情が強くなると、計画や周囲への配慮よりもその瞬間の興味が優先されやすくなります。
突然旅行に出かけたり、普段なら選ばないような行動に出たりするのは、未知の体験をしたいという欲求が根底にあることが多いです。
好奇心による突発的な行動は、前向きなエネルギーの表れでもある一方で、時にはリスクを伴う場合もあります。
周囲の影響
突発的な行動は、自分の内面だけでなく、周囲の人の影響によって引き起こされることもあります。
例えば友人からの突然の誘いや職場の雰囲気、SNS上での盛り上がりに巻き込まれるなど、「なんとなく断れなかった」「勢いに流された」という理由で行動してしまうケースです。
人間は社会的な生き物で、他者との関係性の中で行動を選択することが少なくありません。
特に若年層や自信を持てない状況にある人ほど、周囲に合わせようとする傾向が強くなります。
これは一種の同調圧力ともいえるでしょう。
自分の意思よりも場の空気を優先した結果として、突発的な行動に至ることがあるのです。
間欠爆発症やADHD
間欠爆発症やADHD(注意欠如多動症)といった精神疾患が、突発的な行動の背景にある場合もあります。
間欠爆発症は小さなきっかけでも激しい怒りの爆発を引き起こし、衝動的に攻撃的な言動に出るのが特徴です。
発作的に起こるため自制が難しく、後悔や自己嫌悪に陥ることもあります。
ADHDの場合は、衝動性の高さが突発行動の原因になることがあります。
特に多動・衝動性の強いタイプでは、考える前に体が動いてしまう、状況を深く理解せずに行動に移ってしまう傾向が強く見られるのです。
こうした症状は本人の意思とは無関係に起こるため、自己責任で片づけるのではなく、適切な診断と支援が必要です。
ADHDとは?衝動性・多動性の症状

突発的な行動がみられる背景に、ADHDが挙げられます。
ADHDは発達障害の一つで、子どもだけでなく大人にも見られるものです。
ここではADHDの特徴である衝動性・多動性の症状について解説します。
ADHDとは
ADHD(注意欠如多動症)は発達に関連する脳機能の特性により、「集中力が続かない」「落ち着きがない」「衝動的な行動を抑えられない」といった症状が表れます。
以前は子ども特有の障害と考えられていましたが、現在では大人にも症状が残るケースがあると広く認識されています。
大人のADHDでは仕事や家庭内でのトラブル、感情の起伏、計画性の欠如などに悩むことが多いです。
『不注意型』『多動・衝動型』『混合型』の3つのタイプに分けられ、それぞれで特徴的な困りごとが生じます。
- 不注意型………物忘れ、期限の管理が苦手といった傾向が見られる
- 多動・衝動型……話しすぎたり思いつきで行動したりして、対人関係に支障をきたすことがある
- 混合型…『不注意型』と『多動・衝動型』の症状が複合的に表れるタイプ
いずれも適切な対策を講じることで、日常生活や仕事での悩みを軽減できます。
▶ADHD(注意欠如・多動症)とは?発達障害との関係や特徴、対応法を解説
ADHDの衝動性の症状
ADHDにおける衝動性の症状は、大人になると日常生活や職場に深刻な影響を及ぼすことがあります。
例えば思いついたことを深く考えずに即座に行動に移してしまう、話の途中で遮って発言してしまう、順番を待てないといった行動が多いです。
こうした衝動的な行動は自分ではコントロールできないことが多く、本人も後悔したり自己嫌悪に陥ったりすることがあります。
感情のコントロールが難しく、怒りが爆発する、相手を責めてしまうといった言動につながることもあります。
また衝動買いや無計画な支出といった金銭面のトラブル、突然の転職や引越しなど、生活に大きな変化をもたらす選択を一時の気分でしてしまう場合もあるため注意が必要です。
ADHDの多動性の症状
ADHDに見られる多動性の症状は、大人になると外見上は目立ちにくくなりますが、落ち着きのなさとして残ることが多いです。
例えばじっとしていることが苦手で、会議中に体を揺らしたり、机の下で足を動かし続けたりといった行動が見られることがあります。
また、話してはいけない場面でも無意識に話し続けてしまう、予定にない行動を取りたがるといった症状も多動性の一種です。
本人は意識していないことが多いため、注意されて初めて気づくこともあります。
長時間のデスクワークが苦手で何度も席を立ってしまったり、一つの作業に集中しきれず、次々と別のことに手を出してしまったりする傾向もあります。
ADHDでよく見られる突発的な行動の例

ADHDでは多動性や衝動性といった症状の一つとして、突発的な行動がみられることが多いです。
日常生活や対人関係に悪影響を及ぼすような行動をとってしまうことも少なくありません。
ここではADHDでよく見られる突発的な行動について解説します。
子どものころに見られる突発的な行動
ADHDの子どもには、衝動的で突発的な行動が多く見られます。
例えば授業中に突然立ち歩いたり、先生の話を遮って発言したり、順番を守れずに列を飛び出してしまったりすることがあります。
これは場面に応じた行動を取るという社会的スキルの発達が追いつかず、自分の思いつきや感情をそのまま行動に移してしまうためです。
静かにする場面でもしゃべり続ける、怒りを抑えられず手を出してしまうといったトラブルも起こりやすく、注意を受けることが増えると自己肯定感の低下にもつながります。
また興味のあることに飛びつきやすく、課題や宿題に集中できない、最後までやり遂げられないなど、学習面でも困難を抱えることがあります。
これらの行動は「わがまま」や「しつけの問題」と誤解されやすいのが実情ですが、実際には本人の意思とは関係なく生じる脳機能の特性に由来するもので、適切な理解と支援が必要です。
大人でよく見られる突発的な行動
大人のADHDでも、突発的な行動が見られることがあります。
ただし子どものように目立つ行動ではなく、より社会的・経済的な影響を伴うケースが多くなります。
例えば計画性のない衝動買いや無理な契約、重要な決定を相談なく一人で進めてしまうといった行動が典型例です。
また会議中に唐突に話し始めたり、相手の話を遮って自分の意見を言ってしまったりなど、対人トラブルにつながる場面も多くなります。
こうした行動の背景には、「思いついたことをすぐに伝えたい」「その場の感情が抑えられない」という衝動性があり、本人の意思に反して行動が出てしまうことが多いのが実情です。
さらに、そわそわと落ち着きがなく貧乏ゆすりをしてしまう、長時間じっとしていられずに離席するなど、表には見えにくい形で多動性が残る人もいます。
突発的な行動は仕事の評価や人間関係に影響を与え、自己肯定感の低下やうつ状態を引き起こすこともあります。
そのため、環境調整や認知行動療法などによる適切な支援を受けることが重要です。
ADHDの突発的な行動に対する対処法

ADHDにおける突発的な行動は本人の意思とは無関係に表れ、日常生活や仕事に支障をきたすことがあります。
このような状態に対処するためには、以下の方法が効果的です。
- 自己理解・自己分析を行う
- 他人の視点や意見に目を向ける
- 自己管理を徹底する
- 医療機関や専門機関に相談する
ここでは上記4つの対処法について解説します。
自己理解・自己分析を行う
突発的な行動を抑えるためには、まず自分自身の思考や感情のパターンを理解することが大切です。
例えば「なぜあのとき衝動的に発言してしまったのか」「なぜ焦って行動してしまうのか」といった経験を振り返り、自分の傾向を把握しましょう。
日々の行動をメモに残しておくことで、自分がどんな状況に弱いのか、どうすれば落ち着けるのかが見えてきます。
これにより同じような場面で冷静に対応しやすくなり、突発的な行動を回避しやすくなります。
また、自分に合った働き方や生活リズムを見直すきっかけにもなるでしょう。
他人の視点や意見に目を向ける
突発的な行動を防ぐためには、他人の視点や意見に目を向けることも大切です。
ADHDは自分の思考や意見を優先しすぎるあまり、無意識のうちに相手の話を遮ったり、一方的に話してしまったりすることがあります。
これにより周囲との信頼関係が損なわれてしまうこともあるため、他人の視点に目を向ける姿勢が大切です。
例えば話をする際にはまず相手の言葉を最後まで聞く、自分が話す前に一拍置くなどの習慣を意識的に取り入れましょう。
相手がどう感じているのか、どのような価値観を持っているのかに関心を持つことで、衝動的な発言を防ぎやすくなります。
また、「自分がこう思うから相手も同じはず」という思い込みを避け、違う意見があることを前提に会話を進めることも大切です。
自己管理を徹底する
ADHDの突発的な行動を防ぐには、自己管理の徹底が非常に重要です。
衝動的に動いてしまう傾向がある場合、日常的にタスクを可視化し、行動の流れを明確にしておくと安心感につながります。
具体的には、やるべきことをリスト化し、優先順位や所要時間を記入して整理する方法が効果的です。
また、スマートフォンのアラーム機能やリマインダーアプリを活用して、予定の確認や時間配分を習慣化するのも良いでしょう。
突発的な業務や変更が生じた場合には、周囲にリマインドを頼むなど、外部のサポートを受けることも大切です。
医療機関や専門機関に相談する
ADHDの症状が強く、日常生活や仕事に支障をきたしている場合は、専門家への相談が有効です。
ADHDの診断は精神科や心療内科で受けられ、必要に応じて薬物療法や認知行動療法などの治療が行われます。
また各都道府県には発達障害者支援センターや保健所などの相談機関があり、無料でアドバイスやサポートを受けることも可能です。
こうした機関では生活支援のみでなく、就労に関する相談や家族への支援なども行っています。
自力では対応しきれないと感じたときには、無理をせず専門家の力を借りましょう。
▶ADHDの脳波の特徴とは?QEEG検査による発達障害の診断補助について解説
ADHDの医療機関での治療方法

ADHDの治療で症状そのものを完全に取り除くことは難しいですが、日常生活における困りごとを軽減し、生きやすさを高めることは可能です。
医療機関で行われる主な治療方法は、薬物療法と行動療法の2つが挙げられます。
ここではこの2つの治療方法についてそれぞれ解説します。
薬物療法
ADHDの薬物療法では、注意力や衝動性、多動性を緩和する薬が処方されます。
主に使用されるのは、『メチルフェニデート』『アトモキセチン』『グアンファシン』などで、いずれも保険適用されている薬です。
これらの薬は脳内のドパミンやノルアドレナリンといった神経伝達物質の働きを調整し、集中力を高めたり、落ち着きを得るのを助ける役割を果たします。
ただし副作用や効果の個人差もあるため、使用中は医師と綿密に相談しながら治療を進めることが大切です。
行動療法
行動療法は、ADHDの症状に対処するための実践的なスキルを習得する治療方法です。
代表的な方法として、認知行動療法(CBT)や時間管理、ストレス管理法などがあります。
これらを通じて、自分の行動のパターンを認識し、必要な場面で適切な対応ができる力を育てていくことが可能です。
子どもであれば、家庭や学校などの環境調整や、保護者向けの『ペアレントトレーニング』が実施されることもあります。
生活の中で実践を重ねることで、困りごとを減らし、前向きな気持ちを持って過ごせるようになります。
突発的な行動に悩んでいる場合は医療機関を受診しましょう
突発的な行動が頻繁に起こる場合、ADHDなどの発達障害の特性が関係している可能性が考えられます。
生活や仕事に支障が出ていたり、周囲との関係が上手くいかなくなっている場合は、一人で抱え込まずに医療機関や専門機関に相談しましょう。
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