寝つきが悪い、夜中に目が覚める、朝早く起きてしまうなどの不眠症状は、心と体がリラックスできていないサインかもしれません。
仕事や人間関係などでストレスが溜まると、それが不眠の原因となることがあります。
ストレスが続くと脳が興奮状態になり、自律神経のバランスが崩れて睡眠に影響が出やすくなるのです。
この記事では、ストレスによる不眠の特徴や原因について解説します。
自分でできる対処法などもまとめているため、ぜひ参考にしてみてください。
眠れない原因はストレスにある?

眠れない原因の一つとして、ストレスが挙げられます。
仕事や人間関係、家庭の悩みなど、日常生活の中で感じるストレスは、人間の脳と体にさまざまな影響を与えます。
ここでは、ストレスが睡眠に与える影響について解説しましょう。
ストレスによって睡眠が妨げられることがある
ストレスを感じると脳が緊張モードになりやすくなり、眠りにくくなります。
これはストレスによって自律神経のうち交感神経が活発になり、副交感神経への切り替えが難しくなるためです。
副交感神経は体をリラックスさせて心身を休める働きを持っていますが、ストレスがあるとその作用が十分に発揮されず、寝つきが悪くなったり、夜中に目が覚めたりします。
さらにストレス時にはコルチゾールというホルモンの分泌が促され、これが夜になっても高い状態が続くと、眠気が訪れにくくなります。
例えば仕事のプレッシャーや人間関係の悩みなどが続くと、こうした状態が慢性化しやすく、結果として睡眠の質が大きく低下してしまうのです。
睡眠不足によってさらにストレスが悪化する
睡眠不足になると心身の回復が追いつかず、ストレスに対する耐性が著しく低下します。
脳の働きも鈍くなり、些細なことでもイライラしたり、感情的になったりすることが増えてしまうのです。
また集中力や判断力の低下、意欲の減退といった影響も表れやすく、仕事や勉強のパフォーマンスも下がってしまいます。
こうした状況が続くと、できない自分に対する苛立ちや自己否定感が強まり、さらに強いストレスを感じるようになるのです。
睡眠不足はストレスに起因する問題を深刻化させるだけでなく、新たなストレスを生み出す引き金にもなります。
つまり、不眠とストレスは互いに影響し合う関係にあり、一方を放置するともう一方も悪化するリスクが高まります。
この負のサイクルを断ち切るには、まずは睡眠の質を高めることが大切です。
不眠の原因となり得るストレス要因
不眠の原因となり得るストレス要因には、さまざまなものがあります。
代表的なものとして、仕事に関するプレッシャーや人間関係のトラブル、経済的な不安、育児や介護の悩みなどが挙げられるでしょう。
特に職場の人間関係は長く続くストレスの元となりやすく、眠りに悪影響を及ぼします。
家庭内でも、夫婦関係のトラブルや育児の負担、子どもの進路や友人関係の問題などがストレス要因となることがあります。
さらに女性では妊娠や出産、更年期などライフステージごとの変化がストレスとなり、不眠につながるケースも少なくありません。
また、現代ではSNSやニュースからの情報過多も知らず知らずのうちにストレスとなっていることがあります。
このように不眠を引き起こすストレスの種類は多岐にわたるため、まずは自分にとってどんなことがストレスになっているかを客観的に把握することが大切です。
ストレス以外に考えられる不眠の原因

ストレス以外に考えられる不眠の原因として、以下が挙げられます。
- 寝る直前の行動
- 生活リズムの乱れ
- 睡眠環境
- 加齢
- 服用している薬による影響
- 不眠を伴う疾患
ここでは上記6つの原因についてそれぞれ解説します。
寝る直前の行動
就寝前の行動で特に注意したいのが、交感神経を刺激してしまう行動です。
具体的には以下のような行動が挙げられます。
- 寝る直前にスマートフォンやパソコンを見る
- 明るい照明の下で作業をする
- 激しい運動をする
- 熱いお風呂に浸かる
- カフェインを摂取する
- 過度な飲酒・喫煙
上記の行動はストレスが溜まった時に眠りづらくなる原因となるため、なるべく控えた方が良いでしょう。
生活リズムの乱れ
生活リズムの乱れは体内時計のリズムを崩し、不眠を引き起こす大きな原因となります。
人間の体には起床や睡眠のタイミングを調整する生体リズムが備わっていますが、このリズムが不規則になると、眠気が起こるべき時間に脳が覚醒していたり、逆に活動すべき時間帯に眠気が強くなったりといった問題が生じます。
例えば平日は早起きしていても週末になると昼まで寝てしまう、あるいは深夜まで起きていて朝は遅く起きるといった生活を続けていると、体内のリズムがずれやすくなるのです。
また、朝食を抜いたり無理に起きて行動したりといった習慣も、体内時計のリズムを乱す原因になります。
このような状態が続くと眠るべき時間になっても眠気が訪れにくくなり、結果として寝つけない・浅い眠りになるという悪循環に陥ってしまうのです。
睡眠環境
不眠の原因として、睡眠環境の悪さが関係していることも少なくありません。
例えば室温が暑すぎたり寒すぎたりする場合や、湿度が極端に低い・高い状態が続いている場合には、寝つきが悪くなったり途中で目が覚めたりすることがあります。
また、外からの騒音や、スマートフォンの通知音、わずかな照明の光なども、無意識のうちに眠りを浅くする原因になります。
さらにマットレスの硬さや枕の高さなどが体に合っていない場合も、寝返りが増えたり体に負担がかかったりすることで、睡眠の質が低下する恐れがあるでしょう。
不眠に悩んでいる場合は、一度睡眠環境を見直してみることをおすすめします。
加齢
加齢に伴う体の機能的な変化によって、不眠が引き起こされることもあります。
人間の体は年齢を重ねるにつれて、睡眠ホルモンであるメラトニンの分泌量が徐々に減少していきます。
これにより睡眠の質が低下したり、眠りにつくまでに時間がかかったりする傾向がみられるようになるのです。
また、年齢を重ねるとともに生活に時間的な余裕ができ、特に退職後は「朝早く起きる必要がない」「日中も自由に過ごせる」といった状況が、かえって生活リズムの乱れを引き起こす場合があります。
過去に「決まった時間に布団に入るべき」という生活を続けてきた人ほど、眠くない時間に床につこうとすることで寝つけず、布団の中で過ごす時間が増えてしまう場合が多いです。
その結果、「寝つきが悪い」「熟睡できない」と感じるようになることがあります。
服用している薬による影響
現在服用している薬の成分が、眠りを妨げる原因になっていることもあります。
特に中枢神経に作用する薬やホルモンバランスに関わる薬には、覚醒作用や興奮作用を持つものがあり、夜間の入眠を妨げることがあります。
代表的なものとして、ステロイド薬や抗がん剤、自律神経に作用する薬などが挙げられるでしょう。
薬による影響は本人が自覚しにくいこともあるため、長期間にわたって不眠が続いている場合は、服薬歴も含めて原因を整理する必要があります。
不眠を伴う疾患
不眠は他の疾患によって引き起こされることがあります。
- 睡眠時無呼吸症候群
- 自律神経失調症
- うつ病
- 適応障害
- 更年期障害
- むずむず脚症候群
こうした疾患による不眠は生活習慣では改善されないことが多いため、医療機関で適切な診断・治療を受けることが大切です。
▶適応障害で起こる不眠症とは?睡眠障害の主な症状や治療法について解説
ストレスが原因で眠れない場合の症状

ストレスが原因で引き起こされる不眠の症状は、主に以下の4つのタイプに分類されます。
- 入眠障害
- 中途覚醒
- 早朝覚醒
- 熟眠障害
これらの症状は単独で表れる場合もあれば、複数が重なることもあります。
慢性的なストレスによって自律神経が乱れ、脳が常に緊張状態になってしまうことで、これらの睡眠のトラブルが起きやすくなるのです。
重度になると悪夢を頻繁に見るようになり、「眠ることそのものが怖い」と感じるようになるケースもあります。
ここでは上記4つのタイプの特徴についてそれぞれみてみましょう。
入眠障害
入眠障害とは、布団に入ってもなかなか寝つけず、30分〜1時間以上経っても眠れない状態が続くことを指します。
ストレスによって脳が興奮状態になり、リラックスできずに眠気が訪れにくくなることが主な原因です。
例えば仕事や人間関係などの悩みを寝る前まで引きずっていたり、就寝直前にスマホやパソコンを使っていたりすると、脳が休まらずに覚醒状態が続いてしまいます。
そのため目を閉じていても心拍数が落ち着かず、眠りに入るまでに時間がかかってしまうのです。
中途覚醒
中途覚醒とは、いったん眠りについた後に夜中に何度も目が覚めてしまう状態を指します。
特にストレスが強い状態にあると、深い眠りに入りづらくなり、ちょっとした音や光、身体の違和感などで目が覚めやすくなります。
また、加齢によってもこの傾向は強まるため、年齢が高くなるほど中途覚醒を訴える人が増えるのも特徴です。
トイレに行きたくなる、夢を見て目が覚める、思考が止まらず再入眠できないといったケースが多く、結果として夜間の睡眠が断続的になります。
夜間に何度も目が覚めると、睡眠全体の質が低下し、翌日に強い眠気や疲労感が残ることがあります。
早朝覚醒
早朝覚醒は、普段起きたい時間より2時間以上早く目が覚めてしまい、そのまま再入眠できない状態を指します。
まだ暗い時間帯に目が覚めてしまうことが多く、再び寝ようとしても眠れずに布団の中で長時間過ごすことになります。
このタイプの不眠はストレスや気分の落ち込みと関連が深く、特にうつ状態の症状として表れやすいのが特徴です。
早朝覚醒が続くと十分な休息が取れないまま朝を迎えることになり、日中の活動に支障をきたすこともあります。
熟眠障害
熟眠障害は、睡眠時間は一見十分に確保できているにもかかわらず、「ぐっすり眠った感じがしない」「朝起きても疲れが取れない」といった感覚が続く状態を指します。
これは睡眠の質が低下しているために起こる現象で、特にストレスが蓄積しているときに起こりやすいとされています。
睡眠の中で深い眠り(ノンレム睡眠)が十分に得られず、浅い睡眠ばかりが続いてしまうことで、身体も脳も完全に休まらないまま朝を迎えてしまう状態です。
また、睡眠時無呼吸症候群などの睡眠障害が背景にあるケースもあり、本人の自覚がないまま眠りが妨げられていることもあります。
熟眠感が得られないことで、日中の集中力や記憶力が低下したり、強い倦怠感に悩まされたりすることが多く、生活の質に大きく影響します。
ストレスで寝つきが悪い場合の対処法

ストレスで寝つきが悪い場合の対処法として、以下が挙げられます。
- ゆっくり深呼吸をする
- 静的ストレッチを行う
- 音楽や香りでリラックスする
- 刺激物をなるべく控える
- 睡眠環境を改善する
- 規則正しい生活リズムを身につける
- 適度に運動する
ここでは上記7つの対処法についてそれぞれ解説します。
ゆっくり深呼吸をする
ストレスで寝つきが悪いと感じたときは、ゆっくり深呼吸をするのが効果的です。
ゆっくりと深呼吸をすることで心拍数や血圧を安定させ、心身をリラックスさせられます。
特に腹式呼吸を意識すると、自律神経が整いやすくなるでしょう。
具体的な方法は以下の通りです。
- 背筋を伸ばして鼻からゆっくり息を吸う(おへその下に空気をためていくイメージ)
- 口からゆっくりと息を吐きだす(吸ったときの倍の時間をかける)
- 1日10~20回ほど繰り返す
このような呼吸を数回繰り返すことで、緊張や不安がやわらぎ、自然と眠気が訪れやすくなります。
静的ストレッチを行う
寝る前に静的ストレッチを行うことで、眠りを妨げる緊張感を緩め、心身をリラックスさせられます。
静的ストレッチとは、反動をつけずにゆっくりと筋肉を伸ばす動作のことです。
関節や筋肉をじわじわと伸ばすことで、血行が良くなり、心拍数や血圧が落ち着いて副交感神経が優位になります。
ストレッチを行う際は、呼吸を止めず、30秒以上かけて無理なく伸ばすのがポイントです。
強く伸ばしすぎたり勢いをつけたりすると逆効果になるため注意しましょう。
音楽や香りでリラックスする
心を落ち着かせる音や香りは、ストレスによる不眠の緩和に効果的です。
静かなピアノの音や波の音、雨音、小鳥のさえずりなど、自然の音にはリラックス効果が期待できます。
またアロマオイルの香りには鎮静効果のあるものも多く、就寝前に使用するとリラックスしやすくなります。
中でもラベンダーや白檀、沈香などは覚醒を抑える効果があるとされているため、香りが苦手でなければ使用してみるとよいでしょう。
刺激物をなるべく控える
寝つきを妨げる代表的な要因の一つが、カフェインやニコチン、アルコールといった刺激物の摂取です。
コーヒーや紅茶、緑茶にはカフェインが含まれており、摂取後も数時間にわたり覚醒作用が持続します。
そのため、夕方以降の摂取はなるべく避けた方がよいでしょう。
質の高い睡眠をとるためには、これらの刺激物との付き合い方を見直すことも大切です。
睡眠環境を改善する
快適な睡眠のためには、寝室の環境づくりも欠かせません。
部屋の明るさや温度、湿度、音、寝具の快適さなど、あらゆる要素が睡眠に影響を及ぼします。
理想的な睡眠環境は以下の通りです。
- 部屋の明るさ:真っ暗
- 温度:夏は26℃前後、冬は20度前後
- 湿度:40~70%
温度や湿度は加湿器やエアコンを使って調整するとよいでしょう。
また自分の体に合った枕やマットレスなどの寝具を選ぶことも大切です。
寝苦しいと感じる方は、一度睡眠環境を見直し、快適な環境を作りましょう。
規則正しい生活リズムを身につける
入眠をスムーズにするためには、規則正しい生活リズムを身につけることが大切です。
まずは毎日の起きる時間と寝る時間を一定にすることで、体内時計を正しいリズムへと導いていきましょう。
朝起きてすぐに太陽の光を浴びることで、脳は一日の始まりを認識し、約14〜16時間後に自然と眠気が出るようになります。
規則正しい生活リズムを維持するためには、休日もなるべく起床時間をずらさないことも大切です。
適度に運動する
日中に適度に運動することで、寝つきを良くする効果が期待できます。
ウォーキングや軽いジョギング、ストレッチ、ヨガなどの軽い運動を30分程度行うとよいでしょう。
寝る直前の激しい運動は交感神経を刺激してしまい、かえって眠れなくなる恐れがあるため、布団に入る4〜5時間前までに行うのが理想です。
日中の活動量が少ないと眠気が十分に起こらず、不眠を引き起こす恐れがあるため、毎日少しでも体を動かす習慣を持つことが大切です。
ストレス発散と生活習慣の見直しで不眠を改善しましょう
不眠にはさまざまな原因がありますが、ストレスが原因となっている場合には、深呼吸やストレッチ、音楽や香りなどで心身をリラックスさせることが大切です。
さらに睡眠を妨げる刺激物を控えたり、寝る前の行動や睡眠環境を整えたりすることでも、自然な眠気を誘いやすくなります。
もし今回紹介した内容を実践しても改善されない場合には、精神的・身体的疾患が原因となっている可能性もあるため、医療機関で相談してみてください。
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