誰にでも起こり得るイライラですが、以前よりも怒りっぽくなった、ちょっとしたことで感情が爆発するなど、変化を感じていませんか?
イライラが続くのは、日常的なストレスだけではなく、心の不調が関係している可能性があります。
この記事では、イライラの背景にある原因や関連する疾患、セルフケア方法などについて詳しく解説します。
イライラが増えたことにお悩みの方や、感情コントロールについて知りたい方は、ぜひ参考にしてください。
些細なことでイライラしてしまうのはなぜ?

日常の些細な刺激に対して過剰に反応してしまうとき、心や脳ではさまざまな反応が起こっています。
そのメカニズムを理解することが、改善への第一歩となります。
ストレスによる脳への影響
慢性的なストレスを抱えていると、脳の感情をコントロールする部分である前頭前野や扁桃体の働きが乱れるとされています。
扁桃体の過活動は怒りや不安などの激しい感情を増幅し、些細な出来事にも敏感に反応してしまう要因になります。
強いストレスが続くことで、冷静さを保つための神経伝達がうまくいかなくなり、イライラが起こりやすくなるのです。
さらに、ストレスホルモンであるコルチゾールが慢性的に分泌されることで、脳の神経伝達物質のバランスが崩れ、感情を穏やかに保つ力が弱まるとされています。
日常の小さなトラブルに対して、通常よりも強く反応してしまうのは、こうした生理的な仕組みが関係している可能性があります。
(参照:「慢性的なストレスはからだにどのような影響を与えるか」公益社団法人 日本心理学会)
自律神経やホルモンバランスの乱れ
自律神経は、心身のバランスを保つ大切な働きを担っています。
睡眠不足や運動不足、栄養の偏りなどでこのバランスが乱れると、交感神経が優位になり、常に緊張状態が続くことになります。
その結果、些細な刺激に対しても過敏に反応しやすくなり、イライラや不安を感じやすくなるのです。
特に女性の場合は、月経周期や更年期などホルモンの変動が大きく影響します。
女性ホルモンであるエストロゲンの減少は、セロトニン(安定感や幸福感に関与する神経伝達物質)の分泌を減少させ、感情の浮き沈みを引き起こしやすくなります。
男性においては、加齢に伴うテストステロン低下は、イライラや抑うつ状態と関係があるとされています。
(参照:「LOH症候群(加齢男性・性腺機能低下症)診療の手引き」日本泌尿器科学会)
性格や思考パターンによる傾向
完璧主義や「〜すべき」と考えがちな方は、自分や他人に対する期待値が高くなりやすい傾向があります。
白黒思考や極端な結論付けといった認知の偏りも、感情を過敏に反応させる一因です。
また、幼少期の家庭環境や育った文化的背景が、怒りの感じ方に影響することがあります。
感情表現が控えめな文化や家庭で育った場合も、怒りをうまく表現できず内に溜め込む傾向があり、結果的に爆発的な反応につながるケースもあります。
思考のクセを理解することは、自分を責めるのではなく、改善へつながる第一歩として重要です。
イライラすることが増えてきたと感じたら

感情の変化には、早い段階で気づくことが大切です。
イライラの回数や強さに変化があると感じたら、心のサインかもしれません。
ここでは、心のサインを見逃さないためのポイントを解説します。
感情の変化に気付くサイン
感情の変化に気付くサインは、人それぞれ異なります。
例えば、以前より怒りの感情がセーブできなくなった、小さなことで腹が立つなどは、心の疲れがたまっている可能性があります。
また、他人に触れられるとイライラする、電車の混雑や騒音に過敏になったなど、日常の些細な刺激への過剰反応も重要なサインです。
人との会話が面倒に感じたり、以前は楽しめたことが楽しく感じられなくなったりする場合は、感情の幅が狭まってきている兆候かもしれません。
心の疲れや限界が近づいている
責任感が強くまじめな方ほど、まだ頑張れる、自分よりもっと大変な人がいると、無理をしてしまいがちです。
ただし、心の疲れや限界が近づいていると、感情のコントロールが難しくなり、イライラや怒りとなって現れることがあります。
怒った後に強い自己嫌悪や罪悪感に襲われるのも、心のエネルギーが不足しているサインです。
気分の波が激しい、涙もろくなった、むなしさを感じるなどの症状も、心の疲労が蓄積している可能性があります。
体調不良が続いている、過食や拒食、過眠や不眠などの生活リズムのみだれなどが出てきたら、心の状態を見直す必要があります。
セルフチェックや感情記録をしてみる
イライラが起きたタイミングや原因、どのように対応したかを記録してみましょう。
自分の感情のパターンが見えてきて、対策を考えるのに役立ちます。
- 決まった曜日に多い(週の始め・終わりなど)
- 特定の人との会話でイライラしやすい(家族・友人など)
- 時間や場所の傾向がある(空腹時・通勤電車など)
このような傾向がわかるだけでも、事前に心構えや対策ができます。
感情を見える化することで、自分を客観的にとらえる手助けにもなります。
イライラの程度をグラフで表してみるのも、パターンが可視化できて、感情との向き合い方がより具体的になるためおすすめです。
イライラが続くときに考えられる疾患

イライラが長引いたり、日常生活や人間関係に支障をきたすほど強くなっている場合、背景に精神的な疾患がある可能性もあります。
ここでは、考えられる主な疾患について、詳しく解説します。
うつ病
うつ病は、気分の落ち込みがよく知られていますが、怒りっぽさや攻撃的な態度として症状が現れる場合もあります。
男性や高齢者は、怒りの形で抑うつ状態が表現されることもあり、本人も周囲も気づきにくいケースが多いです。
そのほかにうつ病の症状として、疲れやすさや食欲低下、不眠、興味関心の喪失などが見られます。
これらが2週間以上続く場合は、うつ病の可能性があるため医療機関を受診しましょう。
(参照:「うつ病 心の病気について知る」厚生労働省)
双極性障害
双極性障害は、うつ状態と躁状態を繰り返す病気です。
躁状態では、気分が高揚しすぎて自信過剰になったり、多弁になったりするだけでなく、怒りっぽくなるのも特徴のひとつです。
些細なことで激昂する、無謀な行動を取るなどの症状があります。
うつ状態では、一転して落ち込みや意欲低下が強くなり、この気分の波が社会生活に支障をきたす原因になります。
統合失調症
統合失調症は、幻覚や妄想といった「陽性症状」と、感情の平坦化や意欲の低下などの「陰性症状」が混在する精神疾患です。
初期には、周囲が自分を監視している気がするといった被害妄想や、他人との接触を避ける傾向が強まり、結果としてイライラや不信感が増すことがあります。
早期の気づきと治療が、回復の鍵となります。
(参照:「統合失調症 心の病気について知る」厚生労働省)
適応障害
適応障害は、環境変化や強いストレスに適応しきれず、気分の落ち込みや不安、イライラが数週間以内に現れる状態です。
他の疾患に比べて原因が明確なことが多く、ストレス要因が取り除かれると症状が軽減するケースもあります。
適応障害は、早期の対応により悪化を防ぐことができる可能性が高いため、異常を感じたらすぐに医療機関への相談をおすすめします。
▶適応障害について|タイプごとの特徴・発症の原因・予兆・治療法などを詳しく解説
不安障害(全般性不安障害・パニック障害など)
不安障害では、理由のない強い不安感や心配が続き、それが緊張感や過敏さにつながります。
全般性不安障害では、常に何かが心配な状態が続き心が休まらず、睡眠障害や集中力低下を伴うこともあり、その結果イライラしやすくなる傾向があります。
また、突然の発作が起きることで「また起きるかもしれない」と予期不安に苦しみ、周囲との関係にも影響する可能性があるため、注意が必要です。
発達障害
発達障害も、些細なことでイライラしやすい症状が現れる場合があります。
ADHD(注意欠如・多動症)は、衝動性が強く、感情のコントロールが難しい傾向があり、待つのが苦手、遮られると腹が立つなどから、思い通りにいかずイライラしやすいのも特徴です。
ASD(自閉スペクトラム症)は、予測できない状況や急な変化が苦手で、過剰反応を引き起こし怒ってしまうことがあります。
また、発達障害の方は、周囲とのすれ違いが怒りとして現れる場合もあります。
ただし、発達障害は病気ではなく特性と判断される点がほかの病気とは違う特徴です。
パーソナリティ障害
パーソナリティ障害は、考え方や対人関係のパターンが偏っていて、それが本人や周囲にとって困難を引き起こす状態です。
例えば、境界性パーソナリティ障害では、他者への強い依存と拒絶が交互に現れ、衝動的な怒りや強い衝動により問題行動が現れることがあります。
感情が不安定で、日常生活にも影響を及ぼすことが少なくありません。
強迫性障害
強迫性障害は、「〜しなければいけない」思考(強迫観念)と、それに基づく繰り返し行動(強迫行為)が特徴です。
例えば、何度も手を洗わずにいられない、施錠を何度も確認してしまうなどが挙げられます。
これらの行動がうまくできないと、強い不安やイライラが生じ、本人も苦しむ結果となってしまいます。
セルフケアで感情を整える

日常の中でできるセルフケアを取り入れることで、イライラの改善や緩和が期待できます。
無理のない範囲で、心と身体のバランスを整える習慣を身につけましょう。
呼吸・運動・休養の見直し
深呼吸やストレッチ、軽いウォーキングなどは、副交感神経を刺激しリラックス効果をもたらします。
息をゆっくり吸って、ゆっくり吐き出す呼吸を1日に数回行うだけでも、神経の過活動を抑える効果が期待できます。
また、睡眠の質を高めることも重要です。
就寝前にリラックスすることを心がけ、眠る時間を一定にすることで、体内時計が整い、感情の安定につながります。
考え方のクセを見直す習慣
「〜すべき」「〜でなければならない」といった思考は、自分を追い込んでしまいやすく、イライラの元になりかねません。
そうした考えに気付いたときは、他の考え方はないか、本当にそれでいいのかと、自分に問いかけてみましょう。
これは、認知行動療法で用いられる手法で、思考の幅を広げ、柔軟な視点を取り戻す助けになります。
自分の思考パターンに気付き、クセを見直す習慣を身につけましょう。
日常の中でできるストレス軽減
感情を落ち着かせるためには、ストレスを感じにくい環境を整えることも重要です。
リラックス方法は人それぞれで、好きな音楽を聴いたり、散歩をしたりと好きな方法で構いません。
大切なのは、緊張している五感を緩めてリラックスすることです。
短時間でも、自分のための時間を意識的に取り入れることで、心の余裕が生まれてイライラしにくくなります。
専門家への相談を検討するタイミング

セルフケアを行っても改善が見られない、生活に支障が出ている場合は、専門家に相談することが大切です。
早めに相談することで、よりよい対処法が見つかる可能性があります。
受診を考えるタイミングとは
イライラが長期間続いていたり、対人関係や仕事に悪影響が出ていたりする場合は、医療機関への相談を検討しましょう。
感情のコントロールができずイライラしてしまう、些細なことで怒ってしまう、そして、その後強く落ち込んでしまうなどの状態が続くときは、心のバランスが崩れている可能性があります。
自己判断では見落としやすい症状もあるため、専門の医師に相談して診断を仰ぐことが重要です。
心療内科・精神科でできること
心療内科や精神科では、問診や心理検査を通して症状の背景にある要因を把握し、必要に応じてカウンセリングや薬物療法が行われます。
医師との対話を通じて、今感じているイライラが一時的なものなのか、それとも何らかの疾患が関係しているのかが明らかになることもあります。
治療と聞くと身構えてしまう方も多いですが、相談することから始めてみましょう。
些細なことでイライラが続くときは専門機関へ相談しよう
些細なことでイライラしてしまう背景には、ストレスや生活習慣の乱れ、さらには精神的な疾患が関係していることもあります。
イライラしてしまう自分を責めるのではなく、その状態に気付き、改善のための行動を始めることが大切です。
セルフケアを通して心と身体のバランスを整え、それでも辛さが続く場合は、心療内科や精神科など専門機関の力を借りることも、選択肢のひとつです。
無理をせず、自分のペースで改善・回復への道を進みましょう。
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