「突然吐き気が込み上げてきた」
「最近いきなり胃の不快感が起こって気持ち悪い」
「吐き気や胃の不快感を感じるのに、病気で検査をしても『異常なし』だった」
突然吐き気が起こると、不安になってしまうものです。電車の中や外出先、人前などで吐き気が強まると、日常生活への影響も大きくなります。
吐き気は身体の不調だけでなく、心の不調で起こることもあります。
パニック障害(パニック症)の症状の一つとして吐き気が起こることも多く、悩んでいる方は多くいます。
この記事では、パニック障害と吐き気の関係についてわかりやすく解説します。
吐き気が起こる理由やメカニズム、具体的な対処法も紹介しますので、吐き気への不安を減らし、適切な対処を取るための判断材料として役立ててみてください。
パニック障害(パニック症)と吐き気の関係

吐き気はパニック障害の代表的な症状の一つです。
世界的な精神疾患の診断基準である『DSM-5』にも、パニック障害の診断基準として「嘔気または腹部の不快感」という項目があります。
ここでは、パニック障害と吐き気の関係について紹介します。
▶パニック障害とは?主な症状や原因、診断方法・治療法などを紹介
▶パニック障害になりやすい人の特徴│性格・年代・環境や遺伝など徹底解説!セルフチェックも
吐き気はパニック障害の症状の一つ
パニック障害(パニック症)は、突然前触れなく激しい『パニック発作』が起こり、それが繰り返される病気です。
パニック発作の症状としては動悸、息切れ、呼吸困難、めまいなどが知られていますが、吐き気や胃・お腹の辺りの不快感を伴うことも少なくありません。
パニック発作が起こりやすい場面としては、電車や会社の会議中、車の運転中、以前パニック発作を起こした場所などが挙げられます。
吐き気の症状がパニック発作を引き起こすこともある
吐き気はパニック発作の症状の一つとして起こるだけでなく、吐き気そのものが引き金となり、パニック発作につながるケースもあります。
不安や緊張が強くなると、自律神経のバランスが乱れて消化器系の機能に影響を与え、吐き気や胃の不快感といった症状が起こることがあります。
軽い胃の不快感をきっかけに「また発作が起きるのでは」「吐いてしまうのでは」と不安が一気に高まり、パニック発作を引き起こしてしまうのです。
パニック発作が起こればまたさらなる吐き気が生じ、悪循環に陥ってしまいます。
嘔吐恐怖症とパニック障害の関係
嘔吐恐怖症とは、自分や他人が嘔吐すること・吐きそうな状況・吐しゃ物などに対して強い恐怖や不安を感じる疾患です。
嘔吐恐怖症は限局性恐怖症の一種で、パニック障害と同じ不安障害のカテゴリーに含まれ、パニック障害と関連して発症することもあります。
なぜ?パニック障害で吐き気が起こる原因・メカニズム

パニック障害で吐き気が起こる背景には、複数の原因が関係していると考えられます。
原因を理解することで、吐き気に対する過度な恐怖が和らぎ、適切な対処や治療につなげやすくなるでしょう。
ここでは、代表的なメカニズムについて解説します。
自律神経の乱れ
パニック障害による吐き気の主な理由と考えられているのが、自律神経のバランスの乱れです。
自律神経は、意思とは無関係に呼吸・消化・体温調節・心臓の動きなど身体の機能を調節している神経です。
「交感神経(アクセル)」と「副交感神経(ブレーキ)」の2つがバランスを取り合うことで、身体の状態を最適に保っています。
しかし、強い不安や恐怖を感じると交感神経が優位になり、身体は「危険に備える状態」に入ります。
その結果、消化は後回しになり、以下のような変化が起こることで、吐き気や胃腸の不調といった消化器症状につながります。
- 胃の動きの低下……食べたものが消化されず胃に留まり、吐き気や胃もたれが生じる
- 胃酸の過剰分泌……増えすぎた胃酸が胃粘膜を刺激し、胸焼けや吐き気が生じる
- 胃腸への血行悪化……ストレスによって血管収縮が起こり、血行が悪化、胃の働きが低下し不快な症状につながる
ストレスホルモンの影響
強い不安や緊張を感じると、体内ではアドレナリンやコルチゾールといったストレスホルモンが分泌されます。
これらのホルモンは、心拍数を上げたり血圧を高めたりする一方で、消化機能を抑制する働きがあり、胃の不快感や吐き気に影響している可能性があります。
他の病気の影響
吐き気がある場合、パニック障害以外の病気が影響している可能性も考慮する必要があります。
例えば、以下のような精神疾患では吐き気や胃の不快感が見られることがあります。
- うつ病
- 強迫性障害
- 摂食障害
- 適応障害 など
また、貧血やホルモンバランスの乱れ、身体疾患の影響なども考えられます。
吐き気が長期間続く、頻繁に起こる、その他にも気になる症状が見られる場合などは、自己判断せず一度医療機関で詳しい検査を受けることが大切です。
▶適応障害とは?再発率や兆候・繰り返さないための対策・復職時の注意点を解説
過去のトラウマがきっかけで発症することもある
吐くことへの恐怖(嘔吐恐怖)の場合、発症のきっかけとしては、以下が考えられます。
- パニック障害のパニック発作の症状の中でも吐き気が強い
- パニック発作とは関係なく、風邪や胃腸炎などで嘔吐したときに発症
- 過去に嘔吐した際の羞恥心や不安、嫌な記憶などトラウマ体験により発症
パニック障害の症状によるものの場合もあれば、過去の体験がきっかけになって発症するケースも多いです。
嘔吐恐怖は、小学校くらいの小児期に発症するケースが多い傾向にあります。
▶パニック障害の原因は?ストレスとの関係や発症・発作のきっかけついて解説
パニック障害で起こる吐き気の特徴

パニック障害を含む不安障害で見られる吐き気の症状には、身体疾患とは異なる特徴が見られることがあります。
以下で、特徴と詳細をまとめました。
特徴 | 詳細 |
特定の状況で悪化する | 電車の移動中、人前で話す状況、試験、特定の場所など、緊張や不安を感じる場面で症状が強く出やすい |
症状に波がある | 常に続くのではなく、不安の程度や日によって強弱の波がある |
「吐きそう」「気持ち悪い」という感覚が目立つ | 実際に嘔吐することは少なく、「吐きそう」「ムカムカする」といった不快感が中心 |
嘔吐恐怖がある | 吐くことへの強い恐怖(嘔吐恐怖)があり、それが症状を悪化させる場合がある |
検査で身体に異常が見つからない | 検査を受けても消化器系など身体に明らかな異常が見つからない |
一般的な胃腸疾患の吐き気は食後や体調不良時に生じやすいですが、パニック障害に関連する吐き気は特定の状況や心の状態に影響されて強く出る傾向があります。
吐き気以外のパニック障害の症状

パニック障害では吐き気の他にも、以下のようなさまざまな身体症状・精神症状が複数同時に現れることがあります。
- 動悸・心拍数の増加
- 息苦しさ、空気が足りない感じ、深く息が吸えない
- めまい、ふらつき、立っていられない、意識が遠のく感覚
- 手足や身体が小刻みに震える
- 胸の違和感
- 手足のしびれ
- ほてり
- 悪寒
- 非現実感があり、自分が自分ではない、周囲が現実でないように感じる
- 「このまま倒れるのでは」という強い不安
- コントロールを失ってしまうのではないかという感覚
パニック障害で起こるパニック発作は突然始まり、多くは5〜20分ほど、長くても1時間以内には治まることが一般的です。
パニック障害で吐き気のみが起こるケースもある
パニック発作ではなくても、強い不安や緊張、ストレスのある状況で吐き気のみが起こる方もいます。
これは、過去に吐き気や嘔吐でつらい思いをした経験や、不安やストレスが胃腸に影響しやすい体質であることなどが理由として考えられるでしょう。
たとえ症状が吐き気のみであっても、それが繰り返されることで「また気持ち悪くなるのでは」「吐いてしまうかもしれない」という予期不安が強まれば、日常生活が制限されたり、症状が悪化してしまう可能性があります。
パニック障害で吐き気が起きたときの対処法

パニック障害による吐き気は、実際に症状が出ると強い不安を感じてしまうものです。
不安の悪循環を断ち切るためにも、「起きてしまった吐き気にどう対処するか」と「吐き気を起こしにくくする日常的な工夫」について知っておきましょう。
ここでは日常で実践しやすい方法を紹介します。
▶パニック障害の対処法|自分でできることと周囲ができるサポート
腹式呼吸・深呼吸
吐き気を感じたときにまず試してほしいのが、腹式呼吸によって呼吸をゆっくり整えることです。
楽な姿勢になって、鼻からゆっくり4秒かけて息を吸い、口から6秒かけて吐きます。
息を吸うときはお腹が膨らむのを感じ、息を吐くときはお腹がへこむのを感じながら行うのがポイントです。これを数回繰り返しましょう。
呼吸に意識を向けることで不安から注意をそらす効果も期待できます。
筋弛緩法
筋弛緩法は、身体に力を込めてから緊張を意図的にゆるめるときの脱力感により、リラックス状態を作り出す方法です。
手、肩、顔、お腹、背中、脚などの筋肉に順番に数秒間グッと力を入れ、その後一気に力を抜きます。
「緊張」と「脱力」の感覚の違いに意識を向けながらこの動作を繰り返すことで、リラックス状態になる効果が期待できます。
食事に注意する
吐き気がある場合、胃腸に負担をかけにくい食事を意識することも大切です。
脂っこい食事やスパイスなどの刺激物は、なるべく避けるようにしましょう。
また、空腹・食べ過ぎはどちらも吐き気を誘発しやすいため、少量をこまめに摂る工夫をするのがおすすめです。
また、パニック障害の方は避けた方がいいものもあります。
カフェイン(コーヒー、エナジードリンク)、アルコールはパニック発作を引き起こす恐れがあるため、避けましょう。
医療機関で相談する
吐き気が続く場合や、生活に支障が出ている場合は、早めに医療機関で相談しましょう。
受診する科に迷ったら、吐き気以外にも不安、緊張などが強い場合は精神科や心療内科、下痢や腹痛など体の不調が強い場合は内科を受診するのが一つの目安になります。
かかりつけ医がいる場合は、まずはかかりつけ医に相談してみてもいいでしょう。
「吐き気くらい」「我慢できるから大丈夫」と放置せず、早めに相談することで、不安が軽減し、症状の慢性化を防ぐことにつながります。
パニック障害の吐き気に対する医療機関での治療法

精神科や心療内科といった医療機関では、パニック障害の症状に合わせて、薬物療法や精神療法で治療を行います。
薬物療法:吐き気を和らげる
吐き気がつらい場合、以下のような薬を用いた薬物療法によって吐き気を抑える治療が有効です。
- 抗うつ薬(SSRI、SNRI)
- 抗不安薬
- 制吐剤(吐き気止め)
- PPI(胃酸分泌抑制薬)
- H2ブロッカー
- 消化器運動改善薬
不安や緊張をリラックスさせる抗不安薬や抗うつ薬のほか、吐き気が強い場合には、必要に応じて吐き気止めを併用することもあります。
精神療法:不安への対処法を身につける
精神療法では、カウンセリングや心理療法が行われ、パニック障害の不安に対する対処法を学んでいきます。
代表的なものに認知行動療法(CBT)があり、不安を引き起こす認知の歪みをより現実的な捉え方へと修正していきます。
このほか、曝露療法(エクスポージャー法)、自律訓練法、支持的精神療法などが状況に応じて行われます。
パニック障害と吐き気についてのよくある質問

ここでは、パニック障害と吐き気についてのよくある質問と回答を紹介します。
Q:パニック障害で吐き気がある場合は医療機関を受診すべき?
パニック障害による吐き気で強い不安を感じている場合や、日常生活に支障が出ている場合は、一度早めに精神科や心療内科で相談してみましょう。
パニック障害の吐き気は、強い不安やストレスによって自律神経のバランスが乱れることが主な原因です。
吐き気の原因を理解し、不安やストレスへの対処法を身につければ、パニック障害の症状をコントロールすることができます。
日常生活でできるセルフケアだけでなく、医師やカウンセラーの助けを借りることも考えてみましょう。
Q:市販薬の吐き気止めはパニック障害に効果がある?
吐き気・胸焼け・胸のつかえ感に効く市販薬としては「半夏瀉心湯(はんげしゃしんとう)」や「半夏厚朴湯(はんげこうぼくとう)」といった漢方薬が知られています。
ただし、市販の吐き気止めや漢方薬は、一時的に吐き気や動悸、不安感を和らげる助けになる可能性はありますが、根本的な治療にはなりません。
パニック障害は放置すると、症状が繰り返されることで不安や恐怖が強まり、症状が悪化してしまうことも多いため、早めに医療機関を受診することが大切です。
Q:一日中吐き気が続くのはパニック障害?
パニック障害は、症状に波があることが特徴の一つです。
吐き気が一日中続くというよりは、不安やストレスがあるときに症状が強くなったり、日によって症状の程度に違いが見られます。
一日中ずっと吐き気が続く場合、パニック障害ではなく、他の消化器系の病気や身体の病気が原因となっている可能性もあるため、一度医師に相談してみましょう。
パニック障害の吐き気は治療でコントロールできる
吐き気はパニック障害の代表的な症状の一つです。
吐き気が起こる原因やメカニズム、吐き気が出たときの対処法を知っておくことで、不安の軽減に役立つでしょう。
一方で、症状が長引いたり、外出や仕事に支障が出ている場合には、早めに医師に相談することが大切です。
薬物療法によって吐き気を和らげ、精神療法によって吐き気への恐怖や考え方を整理することで、再発しにくい状態を目指すことができます。
オンライン診療・オンラインカウンセリングの『かもみーる』では、パニック障害による吐き気や不安症状について、丁寧な診察やカウンセリングを行っています。
吐き気や不安でお悩みの方は、お一人で抱え込まず、ぜひ一度ご相談ください。
▶︎カウンセラー(医師・心理士)一覧はこちら
▶︎新規会員登録はこちら
