投稿日 2026年05月29日
「風邪やインフルエンザのような症状がないのに、なぜか熱が続く」
「他に異常がないのに、解熱剤が思うように効かない」
このようなケースで考えられるのが、ストレスが関係する「心因性発熱(機能性高体温症)」です。
心因性発熱は、細菌やウイルスによる炎症性の発熱とは異なり、解熱剤が効きにくいことが特徴です。
この記事では、心因性発熱の原因や特徴、熱の下げ方、日常の対処法などについて詳しく解説します。
心因性発熱(機能性高体温症)とは

心因性発熱(機能性高体温症)とは、ストレスによって体温が上昇する発熱のことを指します。
通常の発熱は、体内で炎症が起こり、免疫反応によって体温調節中枢が働くことで生じます。
一方で心因性発熱は、ストレスによる自律神経の乱れが体温上昇に関与する点が特徴です。
血液検査などで異常が見つからないため本人のつらさが周囲に理解されにくいこともあり、悩んでしまう方もいます。
しかし、心因性発熱は決して珍しいものではなく、誰でも起こり得る一般的なストレス反応の一つです。
心因性発熱では、以下のような特徴が見られます。
- 倦怠感が起こり、疲れやすくなる
- 微熱が続くケース・高熱が一時的に起こるケースがある
- 風邪のように随伴症状が見られないことがある
- ストレス要因と関連して症状が起こることがある(状況依存性)
ストレスによる高体温は子ども・大人ともに珍しくない
心因性発熱は、小中学生の登校前に発熱するケースや、働き盛り世代が強い業務ストレス下で微熱を繰り返すケースなど、子どもから大人まで幅広くみられる症状です。
日本の子どもの不明熱の18%以上が心因性発熱だったという報告もあります。
成人でも、2週間以上発熱が続くものの検査値などに異常が見られなかった83名の患者のうち、48%となる40名が心因性発熱であったとする報告があります。
(参考:Tsukasa Nozu, Akira Uehara『The diagnoses and outcomes of patients complaining of fever without any abnormal findings on diagnostic tests』)
子どもの場合は学校生活や友人関係、家庭環境の変化、成人では長時間労働や責任の重さ、人間関係の緊張などが引き金になることもあります。
繰り返す発熱が生活に支障をきたしている場合は、身体だけでなく心の状態にも目を向けてみましょう。
なぜ?解熱剤で心因性発熱の熱が下がらない理由

熱があるとき、市販や処方された解熱剤を飲んで熱を下げようとする人は多いでしょう。
しかし、風邪のように細菌やウイルスが原因の熱とは異なり、心因性発熱は解熱剤を服用してもあまり効きません。
これは、心因性発熱の発熱の仕組みそのものが通常の感染症とは異なるためです。
一般的な発熱は、ウイルスや細菌感染によって炎症が起こり、発熱物質であるプロスタグランジンE2(PGE2)が作られることで起こります。
解熱剤は、このプロスタグランジンを抑えることで体温を下げるものです。
一方、心因性発熱では、心理的ストレスが自律神経に影響し、交感神経が過剰に働くことで体温が上昇すると考えられています。
炎症が原因ではないため、解熱剤が効果を発揮できず、薬を服用しても十分な効果が得られないと報告されています。
心因性発熱の熱の下げ方・治療法

心因性発熱は風邪とは異なり、炎症が主な原因ではないため、体温を下げることだけを目標にしても十分な改善効果が得られないことがあります。
そのため、心因性発熱の治療は、まずは身体の病気が原因ではないことを確かめたうえで、原因となるストレスに対処し、生活習慣を整えるといったアプローチが中心になります。
ここでは基本となる対処法について紹介します。
ストレスへの対処
心因性発熱はストレスが原因であるため、ストレスに対処することが重要です。
自分がどのような場面で体温が上がりやすいのかを振り返り、負担となっている原因を把握して、仕事が忙しすぎる場合はしばらく休養する、特定のストレスがあれば距離を置くなど、考えられる原因に合わせて対処します。
本人が「なぜストレスで発熱するのか」を理解できていない場合は、心因性発熱の仕組みや対処法について説明することから始める場合もあります。
環境調整
環境調整とは、ストレスの原因となっている状況そのものを見直すことです。
子どもの場合は学校との連携や登校ペースの調整などを行い、大人では、業務量の見直しや配置転換の相談などが選択肢になります。
家庭内での役割分担を再検討することも、環境調整の一つです。育児や介護を一人で抱え込んでいる場合、周囲の支援を得ることで負担を減らすことができます。
環境を変えることに抵抗を感じる方も少なくありませんが、「発熱」という形で、自分の身体が限界を訴えている可能性もあります。
医療機関では、診断書の発行や職場・学校との調整支援なども行っているため、専門家に相談して、回復しやすい環境を整えることが大切です。
心理療法
ストレスが背景にある心因性発熱では、医師やカウンセラーによる心理療法が改善に重要な役割を果たします。中でも代表的な手法が認知行動療法(CBT)です。
認知行動療法では、「出来事そのもの」ではなく「出来事の受け止め方(認知)」に注目し、過度な不安や思い込みを整理していきます。
たとえば「失敗は許されない」「常に頑張らなければならない」といった考え方が強いと、無意識の緊張状態が続き、自律神経の乱れにつながります。
認知の偏りを修正し、現実的で柔軟な考え方へと調整することで、ストレス反応そのものを軽減することが期待できます。
自律訓練法
自律訓練法は、自己暗示を用いて心身をリラックス状態へ導く方法です。
静かな環境で「手足が温かい」「重たい」といった感覚に意識を向ける練習を繰り返し、自律神経のバランスを整えていきます。
心因性発熱では交感神経が過剰に働いていることが多いため、副交感神経を優位にするトレーニングは有効と考えられています。
特別な道具は必要なく、医療機関で指導を受けながら自宅で継続することが可能です。
薬物療法(抗うつ剤・精神安定剤など)
症状が強い場合や、うつ病・不安障害などを合併している場合には、薬物療法を検討することがあります。
抗うつ剤は気分の落ち込みや不安を和らげることで、睡眠薬は睡眠の質を改善することで、結果的に自律神経の安定につながります。
ただし、効果には個人差があり、あくまで対症療法です。
心因性発熱の改善のためには、心理療法や環境調整と併用し、ストレスに対処することが大切です。
心因性発熱の日常生活の過ごし方のポイント

心因性発熱の改善のためには、専門家による治療だけでなく、普段の生活の過ごし方も大切です。
自律神経は、睡眠不足や過密な予定、慢性的な緊張によって乱れやすくなります。熱を一時的に下げることよりも、体が過剰に反応しない状態をつくることを意識しましょう。
ここでは、今日から取り組める心因性発熱の日常生活の過ごし方のポイントを紹介します。
しっかり睡眠時間を確保する
十分な睡眠は、自律神経を整えるための基本です。
理想は毎日同じ時間に寝起きすることですが、まずは睡眠時間を削らないことが優先です。
睡眠の質を高めるため、寝る直前のスマートフォン使用を控え、照明を落とすなど、入眠しやすい環境を整えるといいでしょう。
「忙しいから仕方ない」と我慢を続けると回復の遅れにつながるため、睡眠時間を確保すること自体が治療の一部と考え、しっかり睡眠を取りましょう。
優先順位を決める
やるべきことが多すぎると、気持ちが休まりません。
すべてを完璧にこなそうとせず、「今日必ず必要なこと」と「延期できること」など、優先順位を明確にするだけでも、心理的な負担は軽減できます。
責任感が強い人ほど抱え込んでしまいがちですが、業務や家事を減らすことは怠けではなく調整です。
100%ではなく70%くらいの力に抑え、余白をつくることが回復につながります。
疲れる前に休憩する
「まだ大丈夫」と無理を続けると、体温の上昇につながる可能性があります。
「限界まで頑張ってから休む」のではなく、疲労が蓄積する前にこまめに休むようにしましょう。
1〜2時間に一度、数分間でも席を立つ、深呼吸をする、目を閉じるなど、短い休憩でも交感神経の過剰な働きを和らげることにつながります。
横になって脳を休める
強い緊張状態が続くと、身体だけでなく脳も休まらない状態になります。
短時間でも横になり、意識的に脳を休ませる時間をつくりましょう。眠らなくても、横になって目を閉じるだけで緊張がほぐれやすくなります。
ただし、横になるときに、スマホやテレビといった刺激があったり、過去や未来について考えて不安になっていたのでは、心は休まりません。
「何もしない時間」と決めて、ゆっくり脳を休めることが大切です。
じっとしていると不安になってしまい心が休まらない場合は、医師やカウンセラーに相談してリラックスできる方法をアドバイスしてもらうといいでしょう。
生活リズムを整える
人の体温は健康な時でも常に一定ではなく、朝は低く、午後に上がり、夜にかけて下がるというリズム(日内変動)があります。
朝から37℃以上ある、または深夜に体温が上がる場合は、睡眠や食事のリズムが乱れているかもしれません。
まずは起きる時間を一定にすることから始め、生活のリズムを整えることを意識しましょう。
朝に光を浴びる、できるだけ同じ時間帯に食事をとる、過度なカフェイン摂取は控えるといった対策も有効です。
仕事を休むことを検討する
なかなか熱が下がらない場合は、一時的に仕事を休むことも選択肢です。
休むことに抵抗を感じる方は少なくありませんが、ストレスを我慢し続けると、発熱以外の不調が生じてしまう可能性もゼロではありません。
限界を迎える前に、医師に相談することが大切です。
心因性発熱と一緒に起こることがある病気

心因性発熱は単独でみられることもありますが、ほかの心身の不調と重なって生じる場合も少なくありません。
以下に代表的な疾患と特徴をまとめます。
起立性調節障害 | 自律神経の働きが不安定になり、立ちくらみや倦怠感が出る。体温調節も乱れやすく、微熱を伴うことがある。思春期に多い。 |
発達障害 | 感覚過敏や対人ストレスの影響を受けやすい。環境変化への負担が強い場合、ストレス反応として発熱が出ることがある。 |
緊張型頭痛 | 長時間の緊張や姿勢不良で起こる頭痛。慢性的なストレス状態が背景にあり、頭痛と微熱が同時にみられるケースもある。 |
うつ病 | 気分の落ち込みや意欲低下が主症状。自律神経機能の変化により、原因不明の微熱や倦怠感を伴うことがある。 |
双極性障害 | 気分の高揚と抑うつを繰り返す。気分の波に伴い睡眠や自律神経が不安定となり、体温変動がみられる場合がある。 |
適応障害 | 特定のストレス因子に反応して心身の不調が出現する。ストレス状況と発熱が一致しやすいのが特徴。 |
不安障害 | 強い不安や緊張が持続する状態。交感神経の過活動により、体温上昇や動悸を伴うことがある。 |
PTSD(心的外傷後ストレス障害) | 強いトラウマ体験後に再体験や過覚醒が続く。持続的な緊張により、慢性的な体温変動や身体症状が出ることがある。 |
▶適応障害とは?再発率や兆候・繰り返さないための対策・復職時の注意点を解説
心因性発熱の受診の目安は?何科を受診する?

「心因性発熱かもしれない」と思ったら、まずは内科などで身体に原因がないかを確認しましょう。
ストレスのせいだと思っていても、実はなんらかの病気が隠れている可能性もあります。
検査の結果、血液検査や画像検査で明らかな異常が見つからず、それでも発熱が繰り返される場合には、心因性発熱の可能性を考慮し、精神科・心療内科に相談しましょう。
受診の目安は、以下の通りです。
- 原因不明の発熱が2〜3週間以上続く
- 発熱以外にも症状がある
- 脱水が疑われる症状がある
- 学校や仕事に支障が出ている など
このほか、気になる症状があれば、我慢せず医療機関を受診して相談しましょう。
普段の体温の変化を記録しておき、受診時に医師に伝えると、診断に役立ちます。
心因性発熱の熱がつらいときは無理せず休むことが大切
ストレスが原因となる心因性発熱に対処するためには、しっかり休むことが大切です。
解熱剤だけに頼るのではなく、生活リズムの見直しやストレスの調整に加えて、必要に応じて専門家を頼ることで、回復を早めることにつながるでしょう。
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体温の問題だけでなく、背景にある不安や生活状況も含めて一緒に丁寧に治療を進めていますので、繰り返す発熱でお悩みの方は、一人で抱え込まずご相談ください。
