PTSD(心的外傷後ストレス障害)の症状・原因・治療法┃診断基準やセルフチェック

更新日 2026年02月09日

blog_image

PTSD(心的外傷後ストレス障害/心的外傷後ストレス症)とは、命が脅かされる出来事や事故など過去の苦しい体験の後に、日常生活に支障をきたすさまざまな症状が起こる状態をいいます。

災害や戦争、性的暴行や犯罪被害、交通事故、DV(家庭内暴力)や虐待などもPTSDの原因です。

PTSDは決して珍しいものではありません。つらい症状に対処するには、適切な治療や被害後の社会的サポートがとても大切です。

この記事では、PTSDとは何か、どのような症状があるのか、診断・治療・日常でできるケア、相談先など詳しく解説します。

あなた自身の症状や苦しみを理解し、具体的な対処法を知ることが、PTSD克服のサポートになります。ぜひ記事を参考にしてみてください。

PTSD(心的外傷後ストレス障害)とは

PTSD(Post-Traumatic Stress Disorder。心的外傷後ストレス障害/心的外傷後ストレス症)とは、命の危険があるトラウマ体験に直面した後に、時間が経っても強い不快な症状が続く精神疾患のことです。

発生から1ヶ月以内の場合は「急性ストレス障害(ASD: Acute Stress Disorder)」と診断されますが、症状が1ヶ月以上持続し、日常生活や社会機能に支障をきたす場合に「PTSD」とされます。

WHOによる世界保健調査のデータによれば、日本で一生のあいだに生死に関わるトラウマ体験を経験する割合は約60%で、PTSDの生涯有病率は1.3%だとされています。

パニック障害の生涯有病率が1.0%であることを踏まえると、PTSDはありふれた精神疾患といえるでしょう。

(参考:国立精神・神経医療研究センター『第一部 基本知識』)

トラウマとの違い

トラウマとは、災害や暴力、事故など強い精神的苦痛・衝撃を伴う出来事によってもたらされる「心の傷(心的外傷)」のことをいいます。

トラウマ体験が原因で引き起こされる不調を「トラウマ反応」といいますが、多くは一過性であり、症状は重くないことがほとんどです。

受け止め方には個人差があり、同じ体験をしたとしても、すべての人にトラウマ反応が起こったり、PTSDを発症したりするわけではありません。

PTSDの症状

PTSDの症状は、主に以下の4つのカテゴリーに分類されます。

  • 侵入症状
  • 回避症状
  • 認知と気分の陰性変化
  • 過覚醒症状

それぞれ詳しく解説します。

侵入症状

侵入症状とは、意図せずにつらい記憶がフラッシュバックや悪夢として蘇る現象のことです。

思い出すことで心が動揺し、動悸や発汗など身体にも症状が起こることがあります。

症状

内容

詳細・具体例

記憶の侵入(侵入思考)

嫌な出来事を思い出したくないのに思い出してしまう

頭に勝手に浮かび、強い苦痛を感じる

悪夢

出来事に関するつらい夢を見る

夢の中で何度も体験することで眠れなくなることもある

フラッシュバック(解離性反応)

出来事を再び体験しているように感じる

一時的に現実感を失うほど強い感覚になることもある

身体・精神的苦痛

出来事を思い出すきっかけで強い動揺が起こる

呼吸が速くなる・心拍数上昇など身体反応が出る

回避症状

回避症状とは、トラウマに関連する記憶・考え・感情・会話・状況・場所などを積極的に避けようとする行動のことです。

本来ならば危険ではない状況にも過剰に反応してしまい、生活範囲や活動が狭まり、日常機能にも制限がかかることがあります。

症状

内容

詳細・具体例

解離性健忘

出来事の一部が思い出せない

記憶が部分的に欠けている

分離

親しかった人への親しみが薄れる

人とのつながりを感じにくくなる

話題や会話の回避

出来事について話したり考えたりしない

話題に触れるとつらくなるため避ける

関連するものの回避

出来事を思い出させる物・場所・人などを避ける

ニュースやテレビ番組などを避けるなど

認知と気分の陰性変化

認知と気分の陰性変化とは、トラウマ体験を経験する以前よりも、考え方が否定的になったり、認知に歪みが生じてしまうことを指します。

自分が自分でないように感じられたり、現実から切り離されて感じたりすることもあります。

悪化するとコミュニケーションが難しくなって社会的な孤立が進んでしまったり、人間関係に深刻な影響が出ることもあります。

症状

内容

詳細・具体例

否定的な考え

自分や他人、世界を悪く考える

「自分はダメだ」「世界は危険だ」などの思考

非難

出来事の原因を自分や他人のせいにする

罪悪感や怒りを抱きやすくなる

否定的な感情

恐怖・怒り・罪悪感・恥などが続く

感情の起伏が激しく、安定しにくい

興味・意欲の低下

以前楽しめた活動に関心がなくなる

無気力・無関心な状態になる

前向きな感情の欠如

幸せ・満足・愛情などを感じられない

感情が麻痺しているように感じる

過覚醒症状

過覚醒症状には、常に緊張している、刺激に過敏、驚きやすい、睡眠障害、集中困難などがあります。

過覚醒の状態が続くと、正常な判断が難しくなり、自暴自棄な行動を取ってしまうこともあり、早めに適切なケアを受けることが必要です。

症状

内容

詳細・具体例

過覚醒

周囲に常に注意しすぎてリラックスできない

危険がない場面でも緊張が続く

過剰反応

音や動作に過敏に反応する

物音で強く驚く、身をすくめるなど

集中力の低下

以前なら集中できていたことに注意が続かず、作業に集中できない

思考が途切れやすい

睡眠障害

寝つきが悪く、途中で目が覚める

浅い眠りが多く、悪夢を見ることもある

怒りっぽさ

些細なことでイライラし、攻撃的になる

トラウマを思い出す刺激で衝動的反応をすることもある

無謀な行為

自分を危険にさらすような行動をとる

スピードの出しすぎ、喧嘩、過度の飲酒など

症状がPTSDによるものと気付かないこともある

PTSDになっていても、自分では気づかないこともあります。例えば、以下のようなケースです。

  • 症状と出来事を結びつけられていない
  • 自分では乗り越えたと考えている
  • 些細なことだと思っている など

原因がわからないままつらい症状が続くと、本人も周囲もさらに苦しくなってしまいます。

緊張や悪夢などが続く場合は、一度専門家に相談してみることが大切です。

PTSDの原因

PTSDを引き起こす主な原因は人によって異なり、命に関わる体験、暴力・虐待、事故、災害、性的暴行(レイプ)、戦争体験、重大な事故など多岐にわたります。

自分自身の体験だけでなく、親しい人や他人が被害を受けたことを知ったり、目撃したりすることも、原因になりうるとされています。

ただし、トラウマ体験をしたからといって、それだけでPTSDを発症するわけではありません。個人の性格や遺伝的要因、過去の経験、周囲のサポートなども発症に影響すると考えられています。

また、体験したトラウマの種類によってPTSDの発症率が異なるという報告があり、自然災害では比較的低く、戦闘や性的暴行などでは高い傾向があるといいます。

これは、自然災害では生死の危険が軽い人も含まれる一方で、戦闘や性的暴行の場合はほとんど必ず深刻な体験となるためです。

災害の場合は支援を受けやすいのに対し、性的暴行はつらい体験を打ち明けること自体が難しく、支援が得にくいことも関係していると考えられています。

(参考:国立精神・神経医療研究センター『第一部 基本知識』)

PTSDになりやすい人はいる?

トラウマ体験をしたからといって、すべての人がPTSDを発症するわけではありません。PTSDになりやすい傾向を持つ人には、いくつか共通するリスク要因があります。

  • 女性(女性の方が有病率が高い)
  • 被害を受けた後の社会的サポートが不足していた、生活のストレスが大きかった
  • アドレナリンの分泌が大きい
  • 過去に虐待・家庭内暴力をトラウマ体験した
  • 精神的に疲弊しており、ストレス耐性が低い状態だった
  • 危険な職業、他人のつらい出来事に接することのある職業 など

ただし、あくまでこれらは「なりやすさ」の傾向です。

発症にはさまざまな要因が絡み合っていると考えられ、「PTSDになる=心が弱い」というわけではなく、何の問題もなく生活していた人が発症することもあります

また、警察官や自衛隊員など命の危険がある職業や、救急救命士、消防隊員、ソーシャルワーカーなど、他人の命の危険に接することのある職業でもリスクが高まるとされています。

(参考:ハーバード公衆衛生大学院 社会行動科学学部『東日本大震災後、女性では男性より1.6倍心的外傷後ストレス症状(PTSS)が多い」』)

(参考:一般社団法人 日本トラウマティック・ストレス学会『第6巻第2号(2008年9月発行)抄録集』)

PTSDの診断テスト・セルフチェック

以下は、PTSDの傾向を確認するための診断テスト・セルフチェックです。

  • 小さな物音や動作にも、必要以上に驚いてしてしまうことがよくある
  • トラウマを連想させる状況や出来事に強い不安や苦痛を感じる
  • 過去の出来事を思い出させる人や場所、行動を避けている
  • 以前は楽しめていたことへの興味や喜びが減っている
  • 自分自身や他人、社会全体に対して否定的な気持ちを抱くことがある
  • 寝つきが悪い、途中で何度も目が覚める、悪夢を見るなど睡眠の質が悪い
  • 命の危険を感じる、または他人の危険な状況を目撃した経験がある
  • その出来事が何度も頭に浮かんだり、フラッシュバックや夢としてよみがえる
  • 症状が原因で、日常生活・仕事・人付き合いに支障が出ている
  • 上記の症状が1ヶ月以上続いている

上の項目に該当する項目が多いほど、PTSDの可能性が高いと考えられます。

ただし、これはあくまで簡易的な自己チェックのためのものです。正式な診断はできず、似た症状を示す他の疾患(うつ病、適応障害、不安障害など)との区別も必要です。

つらい症状がある場合は、早めに専門機関に相談しましょう。

PTSDは他の病気を併発することも多い

PTSDは症状が複雑で、うつ病や不安障害、アルコール依存症や薬物依存症などを併発することも多いことが知られています。

海外の研究ではPTSDの約80%に他の精神疾患との合併が見られ、中でもうつ病は約50%と高い割合です。

また、頭痛や胃腸障害、疼痛症候群(原因となる怪我や病気が治っている、もしくは原因が見当たらないのに痛みが続くこと)などが見られることもあるといいます。

このためPTSDは診断が難しく、誤ってうつ病や不安障害と診断されるケースもあり、慎重に他の病気と区別することが求められます。

(参考:Springer『Double Trouble: Treatment Considerations for Patients with Comorbid PTSD and Depression』)

うつ病とは?症状・原因・治療法と自己診断チェックリスト

不安障害の種類別の症状・診断基準┃セルフチェックや治療法も解説

PTSDの診断基準

PTSDの診断は、『DSM-5』や『ICD-11』といった国際的に使用されている診断基準をもとに行われます。

  • トラウマ体験がある(本人が直接体験した、もしくは他人が死亡したり重症を負うのを目撃した)
  • 「侵入症状」「回避症状」「認知と気分の陰性変化」「過覚醒症状」の症状が見られる
  • 症状が1ヶ月以上継続している

主に上記のような基準に沿って、医師が慎重に患者さんの症状や状態を確認し、診断します。

PTSDの治療法・治し方

PTSDに対しては、以下のような心理療法(精神療法)が第一選択です。

心理療法の種類

内容

トラウマフォーカスト認知行動療法(TF–CBT)

トラウマに焦点を当て、思考と感情を整理しながら恐怖や不安を和らげる

眼球運動による脱感作および再処理法(EMDR)

眼球運動を繰り返しながら、つらい記憶を整理して心の負担を軽くする

持続エクスポージャー療法(PE)

トラウマの記憶や関連状況を段階的に思い出し、恐怖や回避反応を減らしていく

認知処理療法(CPT)

「自分のせいだ」といった歪んだ考えを見直し、現実的な考え方に変える

うつ病や不安障害を併発している場合は、SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)などの抗うつ薬を使用した薬物療法が効果的なこともあります。

PTSDの回復のために自分でできること

専門機関での治療と合わせて、以下のような日常的に取り組めるセルフケアを行うことで、回復の後押しになります。

無理はせず、できることから少しずつ取り組んでみるのがポイントです。

  • ストレッチと呼吸法(軽く息を吸い、ゆっくり息を吐く)を試してみる
  • 普段通りに過ごす
  • 瞑想やエクササイズを取り入れる
  • 規則正しい生活と運動を心がける
  • 苦痛でなければ、信頼できる人に打ち明ける
  • 他の人と一緒に過ごす
  • 刺激になるものを避ける

PTSDの過覚醒症状(常に緊張・警戒している状態)は交感神経の過剰な興奮によるものと考えられています。

交感神経に影響を与えるカフェイン、激しい運動、飲酒、大音量の音楽などは症状を悪化させる可能性があり、避けた方がいいでしょう。

(参考:国立精神・神経医療研究センター『第一部 基本知識』)

「自分はPTSDかもしれない」と思ったら専門家に相談を

PTSD(心的外傷後ストレス障害)は、命の危険があるようなトラウマ体験をきっかけに発症することのある精神疾患です。

PTSDの症状はつらく、日常生活に支障をきたすばかりか、人との関わりや仕事、自分らしささえも奪ってしまうことがあります。

しかし、PTSDは「治療できる心の傷」です。適切な支援や治療を受けることで、少しずつ心の緊張が和らぎ、再び安心して暮らせるようにできます。

「もしかしたら自分はPTSDかもしれない」「親しい人にPTSDの症状があり、心配」という場合は、相談窓口のある施設に足を運んだり、心療内科・精神科で相談してみましょう。

対面では相談しにくい場合は、オンラインで医師・心理士に相談できる『かもみーる』をご活用ください。

自宅など自分がリラックスできる場所で相談できるため、専門機関に出向くことに抵抗がある方や忙しい方も、自分のペースで診察やカウンセリングが受けられます。

一人で我慢せず、苦しみを打ち明けるだけでも、心が軽くなることがあります。ぜひお気軽にご相談ください。

▶︎カウンセラー(医師・心理士)一覧はこちら

▶︎新規会員登録はこちら