投稿日 2026年06月08日
精神的なつらさやそれに付随する体調不良などを感じると、心の病気を心配する人は少なくありません。
その中でも症状が似ている病気に『統合失調症』と『うつ病』がありますが、その2つの病気にはどのような違いがあるのでしょうか?
この記事では、統合失調症とうつ病の違い、それぞれの病気の詳しい原因や症状、治療法の違いや併発の可能性などを紹介します。
症状や原因の違いを把握することは、適切な対処法や治療法につながるため、ぜひ最後までご一読ください。
統合失調症とうつ病の違いとは

統合失調症とうつ病は症状は似ていますが、原因や治療法に違いがあります。
どちらの病気にも、つらさやメンタル不調がみられるなどの共通点がありますが、精神医学的には違う病気です。
また、どちらも珍しくない精神疾患です。
厚生労働省によると、生涯有病率として統合失調症は100人中1人、うつ病は100人中6~7人が発症するといわれています。
(参考:厚生労働省「こころもメンテしよう」)
そして別々の病気のため、同時に発症する可能性も無視できません。
以下より、それぞれの病気の原因や症状について詳しく紹介していくため、比較したり、心当たりを確認したりしながら理解を深めましょう。
統合失調症の症状

統合失調症は大きく3つの症状に分けられ、初期症状や末期症状と呼ばれるものはなく、症状の現れ方には個人差があります。
統合失調症の3つの症状は以下の通りです。
- 陽性症状
- 陰性症状
- 認知機能障害
統合失調症の症状について紹介します。
陽性症状
統合失調症の陽性症状は、以下のように精神機能に歪みが生じる状態です。
- 幻覚:実際には存在しないものを五感で感じる。多いのは幻聴
- 妄想:実際には問題がないのに、被害妄想や思い込みを捨てられない
- 思考の混乱:頭の中で考えがまとまらず、途切れたり脱線したりする特徴が話し方に現れ、会話が成り立たない
うつ病も重度になると、『うつ病性妄想』と呼ばれる陽性症状に似た症状がまれにみられます。
自分を取るに足らないと考える『微小妄想』や、罪を犯したと感じる『罪業妄想』などです。
しかしうつ病では一般的に幻覚や幻聴は見られません。
陰性症状
統合失調症の陰性症状では、感情的な部分や社会的な部分で機能の低下や喪失が見られます。
具体的には以下のような症状です。
- 感情の起伏がない:顔の表情が動かなくなり、人と目を合わせなくなる
- 意欲の低下:趣味から興味を失い、身だしなみにも気を遣わなくなる
- 引きこもりがちになる:他者との関わりに興味がなくなる
- 言葉数が減る:質問に短く答える程度の会話しかしなくなる
統合失調症の陰性症状は、治療による改善後に目立つもので、意欲がなくなったり感情表現が少なくなったりする具体的な症状はうつ病に似ています。
認知機能障害
認知機能障害とは、記憶力や注意力・思考力・言語能力・生理能力や計画能力・問題解決能力などの認知機能が低下することで、日常生活に支障をきたす状態です。
集中力の欠如は本が読めない・映画やドラマなどの話の筋が追えないなどにつながります。
指示通りに物事が行えず、注意力が散漫になるため細かい作業の仕事や複雑な作業が難しくなります。
うつ病の症状

うつ病の症状は精神面の症状が統合失調症と似ている部分がありますが、身体面にも症状が現れます。
うつ病の症状について紹介します。
精神症状
うつ病の精神症状は主に抑うつ気分や意欲減退を初めとして、さまざまなネガティブな症状が見られます。
以下のような症状が2週間以上続いたら、うつ病の可能性があります。
- 一日中憂うつ
- 好きなことをしても楽しくない
- イライラする
- 何もやる気が起こらない
- 自分が価値のない人間に感じる
- 「自分は役に立たない」「消えたい」などの自責感がある
- 集中力が低下する
全体的に気分の落ち込みを感じますが、うつ病にみられる自分を責めたり罪悪感を覚えたりする症状は、統合失調症にはみられません。
身体症状
うつ病では、統合失調症では見られない身体症状が現れる場合があります。
うつ病の身体症状は以下の通りです。
- 食欲減退または増進、またはそれによる体重の増減
- 眠れない、寝過ぎる、夜中に覚醒する、朝起きられないなどの睡眠障害
- 疲れやすい、身体が重い
- 頭痛、肩こり、動悸やめまい、消化器系の症状など
これらの身体症状は一般的にうつ病に特にみられる症状ですが、統合失調症を併発している場合にも同様の症状がみられる場合があります。
統合失調症の原因

統合失調症の原因は、遺伝要因・環境要因・脳の機能不全などが考えられています。
統合失調症はまだ原因が完全に解明されているわけではありませんが、これらの要因が複合的に関与していると考えられています。
統合失調症の原因について、それぞれの要因を詳しく紹介します。
統合失調症の原因 │ 遺伝要因
統合失調症は、同疾患が家族内にいる場合の発症リスクが高いと考えられています。
2017年に発表されたヒルカーらの研究結果では、一卵性双生児の発症一致率が33%、遺伝率は79%と推定されました。
(参照:Hilker et al. (2017))
また、新潟大学脳研究所によると、親が統合失調症の場合の子どもの発症リスクは通常の10倍ほど上昇すると考えるのが教科書的としています。
しかし統合失調症は遺伝だけではなく他の要因と絡み合って発症すると考えられているため、遺伝要因のみで発症する疾患と言い切れるものではありません。
統合失調症の原因 │ 環境要因
統合失調症の原因として考えられている環境要因とは、母体の状態や出生時・幼少期の状況によるもの、社会的ストレスがみられる以下のようなケースです。
- 母体の栄養不足やウイルス感染
- 母体時の薬物使用
- 出生時の合併症や低酸素状態
- 幼少期の経験や強いストレス、トラウマ
- 引っ越し、転職などの環境変化による不安やプレッシャー
- 入社、結婚などライフイベントに関するストレス
- 音、気温、季節、日当たりなど自然環境
環境に問題が起こると脳の発達や機能に悪影響を及ぼし、遺伝要因と併せることで統合失調症の発症リスクを高める要因となります。
統合失調症の原因 │ 脳の機能不全
統合失調症にみられる脳機能の異常は、神経伝達物質の過剰活動や、脳の前頭前野や海馬の容量減少(萎縮)などが引き起こしていると考えられています。
神経伝達物質であるドーパミンやセロトニンが過剰に働くときに、幻覚や妄想を引き起こしたり、不安が強くなったりするというのは、統合失調症でみられる症状です。
また、前頭前野や海馬、その周辺などの部位が萎縮するとうまく機能しなくなり、思考力や計画性の低下・意欲減退・感情の鈍麻などを引き起こす場合もあります。
しかしこれらの脳の機能不全の原因は統合失調症の原因と同様に確定しておらず、今の時点では遺伝や環境要因などが複雑に絡み合って引き起こされるものと考えられています。
うつ病の原因

うつ病の原因には、統合失調症と同様である遺伝要因と環境要因の他に、身体的な要因と性格要因があると考えられています。
また、どれか一つではなく複数の要因が絡み合って発症するとされているのは、統合失調症との共通点です。
うつ病の原因を詳しく紹介します。
うつ病の原因 │ 遺伝要因
うつ病になりやすい体質は30~50%の確率で遺伝することが判っています。
同じ環境下でもうつ病になりやすい人となりにくい人が存在するのは、遺伝要因が関係しているためです。
最近になって、HHV-6(ヒトヘルペスウイルス6)が潜伏感染している際に発現するSITH-1遺伝子を持つことで、うつ病を引き起こしやすいことが一部研究で指摘されています。
※出典:東京慈恵会医科大学
HHV-6にはほぼ100%の人が潜伏感染しているとされており、HHV-6から発現するSITH-1遺伝子は、うつ病を引き起こす性質があるとされるSITH-1タンパク質を産生します。
このように、HHV-6とSITH-1遺伝子が新生児期に母親から伝搬することで、うつ病の原因遺伝子となることが発見されています。
以上はまだ確立した定説ではなく、親がうつ病の場合に子もうつ病になると確定するものではありませんが、高血圧や糖尿病と同程度での遺伝率のため無視はできないでしょう。
うつ病の原因 │ 環境要因
うつ病の原因の一つとして一般的に知られているのがこの環境要因からくるストレス状況であり、うつ病の原因の中でも特に問題となる要因といえるでしょう。
環境要因となるストレス状況には、以下のようなものがあります。
- 仕事内容や職場での人間関係など
- 結婚や離婚などのライフステージや配置転換、転居や進学などの環境変化
- 家族や隣人問題、役割など責任の増大など
- 近親者との死別や離別、退職などの喪失体験
- 経済的損失、貧困、税金などの金銭問題
- 病気や事故などの健康問題
うつ病のきっかけとなる原因で特に多いのは人間関係や環境の変化で、結婚や昇進など、嬉しい出来事も環境の変化としてきっかけとなる場合があります。
うつ病の原因 │ 身体的要因
うつ病の原因には年齢や性別による症状や病気などの身体的要因も含まれます。
うつ病で考えられる身体的要因とは以下の通りです。
- 更年期や出産後、月経前後など、男女ともに言えるホルモンの変化
- 慢性的な疲労
- 糖尿病、脳血管障害など
- 感染症、がん、甲状腺機能障害など
- 薬の服用
- 認知症、パーキンソン病など
- アルコール依存症
- 統合失調症
病気が原因の場合、体調不良が持続するために休職や退職を余儀なくされる、経済的負担が発生するなどの二次障害によってうつ病を発症する場合もあります。
うつ病の原因 │ 性格要因
うつ病には、物事を悲観的にとらえやすい人や真面目な人がなりやすく、以下に紹介する3つの気質があります。
- 循環気質
- 社交的、親しみやすい
- 善良、親切
- 激しやすい面も持つ
- 執着気質
- 正義感が強い、正直
- 仕事熱心、凝り性
- 完璧主義、几帳面
- 仕事の質は高いが量はこなせない
- 懸命に働いた後に急速に落ちやすい
- ゼロか100の結果を決めたがる
- メランコリー親和型気質
- 常識人
- 気遣いを忘れず円満な関係を求める
- 他人の評価が気になる
- 問題が起きると自分の所為だと思い込む
うつ病になりやすい人は人格者で周囲の評価が高い人が多く、頑張り過ぎて心のバランスを崩しやすいといわれています。
統合失調症とうつ病、治療法の違い

統合失調症とうつ病の治療法の違いを紹介します。
統合失調症とうつ病の受診先は、精神科、心療内科、メンタルクリニックなどになるため、治療を検討している人、相談に乗って欲しい場合などには予約を取って受診しましょう。
統合失調症もうつ病も薬物療法と精神療法を行う
統合失調症とうつ病の治療では、どちらも薬物療法と精神療法を行います。
双方に行われる治療法は以下の通りです。
- 薬物療法
- 統合失調症:抗精神病薬。症状の再発を防ぐ。特に陽性症状を抑える
- うつ病:抗うつ薬。神経伝達物質のバランスを整える効果がある
- 精神療法
- カウンセリング
- 認知行動療法:ものの考え方、受け取り方に働きかける
- ソーシャルスキルトレーニング:特に統合失調症に適応。社会生活や対人関係を円滑にするためのスキルを学ぶ
精神療法の種類はさまざまあり、それぞれ症状や性格などを踏まえ、適切な方法を選んで行われます。
また、薬物療法では必要に応じて以下のような薬が追加されます。
- 睡眠薬
- 抗不安薬
- 気分安定薬
- 身体症状がある場合は対応した薬
薬物療法に使用される薬は、効果を実感するまで時間がかかる場合があり、服用を始めたら根気強く継続することが必要な場合が多いです。
どちらも再発を防ぎながら社会生活を自分らしく営めるようになることが目標であり、早期発見と早期治療がその後の経過に影響を与える病気です。
うつ病の場合は環境調整も必要
うつ病の場合は薬物療法と精神療法の他に、環境調整を行ってしっかりと休息をとるか、ストレスの軽減を図ることが求められます。
環境調整とは、うつ病の原因となった環境や状況を整えて改善することです。
仕事や職場の人間関係が原因の場合は、休職や配置換えによって調整することが望ましいです。
また、家庭内でタスクが多過ぎて負担がある場合は、家族で相談して家事分担するなどが挙げられます。
一人で抱え込まず周囲の人に理解を得て、無理のない環境を整えて回復を目指しましょう。
▶TMS治療はうつ病に有効!効果が期待できる症状の特徴やメカニズムについて解説
統合失調症とうつ病の併発について

統合失調症とうつ病は症状が似ていますが、併発するケースもあります。
精神医学上では別の疾患でもあるため「鬱から統合失調症になってしまった」と心配する人がいるかもしれませんが、珍しいことではありません。
しかし、統合失調症とうつ病は、症状は似ていても治療法に違いがある疾患のため、慎重に診断する必要があります。
また、うつ病が併発する疾患は統合失調症だけではありません。
精神疾患は発見が遅くなると治療期間が長引いたり症状が悪化したりするため、早めに専門家に相談し、早めの診断を受けましょう。
気分の落ち込みや意欲の低下を放置しないで
統合失調症とうつ病は症状が似ているため、自己判断によって診断が遅れてしまうと、つらい症状を我慢することになってしまいます。
回復に向けてしっかりと取り組むには、早めの発見と正しい診断が重要です。
当院では、宮城県仙台市にある『かもみーる心のクリニック仙台院』、東京都港区神谷町駅にある『かもみーる心のクリニック(東京院)』にてうつ病、統合失調症の外来を受けることができます。
また、通院が困難、通院へのハードルが高いという方は、オンライン診療・オンラインカウンセリングの『かもみーる』にて、いつでもどこでも悩みを相談できます。
統合失調症やうつ病の他に、意欲の低下、頭が働かないなど「病気じゃないかもしれないけれど不安」と感じている人は、ぜひお気軽にご相談ください。
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