社交不安障害(SAD)とは?症状・なりやすい人の特徴・原因やセルフチェックを解説

更新日 2026年01月09日

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「人前で話そうとすると急に緊張して声が震える」
「初対面の場面でうまく言葉が出ない」
「周囲から自分がどう見られているかが常に気になり疲れてしまう」

こうした悩みは誰しも経験することがあるものですが、日常生活に支障が出るほど強い不安が続く場合は「社交不安障害」が関係しているかもしれません。

社交不安障害は平均発症年齢が13歳と若く、性格であると勘違いしやすいことから、自分でも気づかないまま悩み続けてしまうことが多い疾患です。

この記事では、社交不安障害の症状、原因、セルフチェック、治療法など詳しく解説します。

症状が長引くほど日常生活が苦しくなりやすいため、早めに正しい知識を身につけて、適切な治療につなげましょう。

社交不安障害とは?

社交不安障害(社交不安症/SAD:Social Anxiety Disorder)は不安障害の一種で、人前で話す・初対面の人と会う・食事をするなど、他者から注目される状況で強い不安や恐怖、緊張を感じる病気です。

「対人恐怖症」「あがり症」「赤面症」などといわれる症状も、社交不安障害に該当します。

人前で緊張すること自体は誰しも経験するものですが、社交不安障害の場合は通常の緊張とは異なり、日常生活に支障が出るほど強い不安や回避行動(不安を感じる状況や場所を避ける行動)が続くことが特徴です。

「社会不安障害」という言葉が使われることもありますが、両者に違いはなく、医学的には同一の概念を指します。

(参考:厚生労働省『社交不安障害(社交不安症)の認知行動療法マニュアル(治療者用)』)

社交不安障害の特徴

社交不安障害は、国内外の疫学調査から「よくある精神疾患の一つ」であることが明らかになっています。

ここでは、厚生労働省のデータをもとに社交不安障害の主な特徴について詳しく解説します。

(参考:厚生労働省『社交不安障害(社交不安症)の認知行動療法マニュアル(治療者用)

生涯有病率が高く7人に1人がかかる

社交不安障害の生涯有病率は、約13%であるとされています。

これは約7人に1人が一生のうちに一度は社交不安障害を経験する可能性があるということで、決して珍しい病気ではありません。

症状の重さは人によって異なり、軽度の場合は気づきにくいケースも多いです。

発症年齢が若く、治療されていないケースが多い

社交不安障害は10代〜20代前半での発症が多いとされ、平均は13歳です。

思春期〜若年の多感な時期に発症することもあり、「自分の性格のせいだから仕方ない」「相談しても理解されないかもしれない」と考えてしまい、治療しないまま見過ごされてしまうケースが多い傾向にあります。

10代〜20代前半は学校や職場など、他者の評価が気になりやすい環境に身を置く年代であり、周囲の変化も大きいため、症状を感じやすい傾向にあるでしょう。

他の精神疾患と併存している場合が多い

社交不安障害はうつ病、その他の不安障害(パニック症、広場恐怖症、強迫症など)、アルコール依存といった他の精神疾患と併存するケースが多く、約3分の1程度に見られるといいます。

不安から人付き合いを避け続けることで孤立して気分の落ち込みが強くなってしまったり、対人場面の緊張を和らげようとアルコールに頼ってしまうケースもあり、二次的に他の精神疾患を発症する可能性があるため注意が必要です。

男性の場合、女性よりも回避性パーソナリティ症を併発する割合が高いといわれています。

回避性パーソナリティ症とは、他者による拒絶や批判、恥をかくことを極度に恐れるあまり、人との関わりや交流の可能性がある状況を回避するようになる精神疾患です。

症状は社交不安障害と似ている部分もあるものの、治療アプローチは両者で異なるため、正確な診断が重要になります。

自然に改善することは少なく適切な治療が大切

社交不安障害は、放置して自然に治るケースは少ないとされています。

症状が慢性的に続きやすく、不安が起こる場面を避ける行動が積み重なることで、できることが徐々に減り、さらに自己評価が下がるという悪循環に陥りやすいため、早めに適切な治療を受けることが大切です。

社交不安障害の症状

社交不安障害では主に、人と話す場面や初対面の状況でさまざまな症状が見られます。

精神症状

精神症状は、社交不安障害の中心となる症状です。

特に「相手に変に思われるのではないか」「失敗して笑われるかもしれない」などの否定的な予測が頭から離れなくなり、コミュニケーションが難しくなってしまうこともあります。

人前で話すのが怖い
(対人恐怖)

人前で話したり、目上の人と話す機会で過度に緊張する。震えやめまい、たくさん汗をかくなどの症状も起こる

人前で話す場面で過度に緊張する
(スピーチ恐怖)

声が震える、頭が真っ白になる、言葉が出にくいなどが起こる

人に見られていることに恐怖を感じる
(視線恐怖)

人に見られていると過度に緊張し「監視されている気がする」「他人が自分のことを噂している」と感じ、行動が制限される

電話に出るのが怖い
(電話恐怖)

間違えたらどうしようという懸念から声が震える、言葉が詰まるなどが起こる

人と食事をするのが怖い
(会食恐怖・嘔吐恐怖)

食べ方や表情を見られるのが気になり、「変に見えていないか」「咀嚼音がうるさいのではないか」などの不安が強まり食事が喉を通らない。緊張によって嘔吐するのではないかと不安がある

人前で文字を書くのが怖い
(書痙:しょけい)

書類を書く際に緊張で手が震えてうまく書けない

自分の体臭や口臭に強い不安がある
(自己臭恐怖)

他者と接する際に自分の体臭や口臭が人に不快感を与えるのではないかと緊張・不安が起こる

他人がいると排尿できなくなる(排尿恐怖)

職場のトイレや公衆トイレなどで用を足せなくなったり、極度に焦りを感じる

この他にも、「仲が良い相手でも一対一になるのが怖い」「初対面の相手と話すときに過度に緊張する」「人前でお腹が鳴るのではないかと強い不安を感じる」「自宅以外では常に緊張状態になる」などの症状が見られることもあります。

人前で不安を感じるのは誰にでもあることですが、社交不安障害ではその程度が大きく、日常生活に支障が出ることもあるのが特徴です。

身体症状

精神的な症状に加えて、身体にも症状が現れることがあります。

  • 顔が赤くなる、顔が火照る
  • 口が渇く
  • 動悸・息苦しさを感じる
  • 身体が震える
  • めまいや吐き気がする
  • 腹痛が起こる、何度もトイレに行きたくなる
  • 顔がこわばる

緊張すると顔が赤くなることに対して強い恐怖を覚える症状は「赤面恐怖」と呼ばれます。

これらの症状は緊張からくる自律神経の乱れによって起こり、自分の意志ではコントロールできないものです。

重症化すると、パニック発作(極度の不安や恐怖が突然起こり、数分から数十分続く状態)が起こることもあります。

症状が起こる・苦手意識を持ちやすいタイミングや状況

社交不安障害の症状は、「他者に注目される」「評価される可能性がある」「失敗が気になる」といった状況で起こることが多いです。

社交不安障害の方は、以下のような場所に苦手意識や負担を感じることがあるでしょう。

  • プレゼン、会議、発表
  • 初対面の人との会話、挨拶
  • 人との雑談
  • 会食、飲み会
  • 電話応対
  • 面接
  • 美容院など店員との会話
  • デートや合コンなど異性との交流

社交不安障害の原因

社交不安障害の原因はまだはっきりしていませんが、最近の研究では脳の神経伝達物質(セロトニン、ドーパミン、ノルアドレナリン)の機能障害が発症に影響しているのではないかとされています。

しかし、原因は一つではありません。

この他、性格傾向や遺伝、過去の経験(人前で恥ずかしい思いやつらい思いをしたなど)、家庭環境(親や養育者との関係性、トラウマなど)などが複雑に関連して生じると考えられています。

社交不安障害になりやすい人の特徴

社交不安障害は誰にでも起こり得る疾患ですが、なりやすい人には以下のようないくつかの特徴が見られます。

性格傾向

・真面目で責任感が強く、完璧主義
・自分に自信が持てない
・心配性
・他者からの評価や意見に敏感
・話し方や考え方が否定的
・内向的でプレッシャーを感じやすい
・新しい環境に慣れるまで時間がかかる

年代

10代〜20代前半に多い(平均13歳)

性別

やや女性に多い(男性11%、女性15%)

その他

・否定される養育環境で育った

・家族や親族に精神疾患に罹患した人がいる

・いじめや虐待などによるトラウマがある

社交不安障害はやや女性に多く見られるものの、うつ病や他の不安障害では女性に2倍多く見られることを考えると、性差が少ない病気といえます。

(参考:日本不安症学会 / 日本神経精神薬理学会『社交不安症の診療ガイドライン』)

(参考:清水栄司『社交不安症と脳の性差の進化生物学』)

社交不安障害のセルフチェック方法

社交不安障害かどうかを自分で正確に診断することはできませんが、日常のどんな場面で不安が強まるのかを振り返ることで、受診の目安にできるでしょう。

  1. この1ヶ月の間に、人前で話すときに強い恐怖や不安を感じた
  2. 恥ずかしい思いや失敗をする状況に強い恐怖や不安を感じる
  3. 特定の場面で強い恐怖や不安を感じる(電話を取る、スピーチや会議、会食など)
  4. 日頃感じる恐怖や不安の程度が強く、常軌を逸していると感じる
  5. 強い恐怖や不安のために特定の状況や場所を避けている
  6. 強い恐怖や不安のために学校・仕事・日常生活で支障を感じている
  7. 人と接する機会のほとんどで苦痛を感じる

当てはまる数が多いほど、社交不安障害の傾向が強いと考えられます。

このような症状が一時的ではなく、長期間続いている場合は、一度精神科や心療内科で専門家に相談してみましょう。

社交不安障害の診断基準と重症度

社交不安障害をはじめとした精神疾患では、世界的な基準である『DSM-5(アメリカ精神医学会)』や『ICD-10(WHO/世界保健機構)』の診断基準をもとに診断を行います。

また、社交不安障害の重症度を評価する尺度としては、以下のようなものが使われます。

LSAS/LSAS‑J
(Liebowitz Social Anxiety Scale/リーボヴィッツ社交不安尺度)

不安や恐怖、回避行動の度合いを4段階で評価し重症度を分類

SPS
(Social Phobia Scale/社会恐怖尺度)

他者から見られることに対する不安を測定する尺度

BSPS
(Brief Social Phobia Scale/面接者評価尺度)

不安や恐怖、回避行動、身体的症状を評価して重症度を分類

SAD‑D
(DSM‑5 Social Anxiety Disorder Severity Scale)

DSM‑5に基づいて作られた尺度。質問に対し過去7日間どの程度当てはまったかを評価し、重症度を分類

(参考:社交不安症の評価スケール

社交不安障害と間違われやすい病気

社交不安障害は、以下のような病気と区別することが大切です。

  • 回避性パーソナリティ障害
  • 広場恐怖症(パニック障害)
  • うつ病
  • 自閉スペクトラム症(ASD)
  • 適応障害
  • 心的外傷後ストレス障害(PTSD)
  • 身体的疾患(バセドウ病、心疾患、呼吸器疾患、神経疾患) など

上記のような病気は社交不安障害と似た症状が見られることもあるため、症状が続く場合は放置せず、一度医師に相談しましょう。

うつ病とは?症状・原因・治療法と自己診断チェックリスト

適応障害とは?再発率や兆候・繰り返さないための対策・復職時の注意点を解説

パニック障害になりやすい人の特徴│性格・年代・環境や遺伝など徹底解説!セルフチェックも

社交不安障害の治療法

社交不安障害の治療方法は、主に精神療法(心理療法)と薬物療法の2つがあります。

医療機関では、問診や診断結果をもとに、一人ひとりに適した治療計画を立てていきます。

精神療法(心理療法)

主に認知行動療法(CBT)が用いられる。対人場面での不安を生む「考え方のクセ」を整理し、現実的で柔軟なとらえ方を学ぶ

薬物療法

SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)やSNRI(セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬)がよく用いられる。脳内の神経伝達物質のバランスを整えることで不安や緊張を軽減する作用がある。

精神療法(心理療法)では、認知行動療法の他にも、自律訓練法(AT)、マインドフルネス、カウンセリングが行われることもあります。

社交不安障害についてのよくある質問

ここでは、社交不安障害についてのよくある質問を紹介します。

Q:社交不安障害の自力での治し方は?

「自分は社交不安障害かもしれない」と考えている方の中には、「病院に行かずに自力で治したい」という方もいるでしょう。

自力でできる社交不安障害のセルフケアとしては、以下のようなものがあります。

  • 腹式呼吸
  • カフェインを避ける
  • 規則正しい生活を送る
  • 失敗しにくい環境を用意し、成功体験を積み重ねる

ただし、これらはあくまでセルフケアであり、治療ではありません。

症状が重い場合には改善が見られなかったり、やり方を間違えると悪化してしまう可能性もあります。

医療機関では「薬を使わずに治療したい」などの相談もできるため、重症化する前に一度相談してみましょう。

Q:社交不安障害で障害者手帳はもらえる?

社交不安障害の症状を伴う精神疾患により、健康的な社会生活が困難になった場合、精神障害者保健福祉手帳(精神障害者手帳)を受け取れる場合があります。

精神障害者手帳の申請には医師の診断書が必要となるため、精神科や心療内科を受診して相談してみましょう。

社交不安障害でつらいときは我慢せず専門家に相談を

社交不安障害は誰でもかかる可能性がある病気で、約7人に1人が経験するともいわれています。

その一方で、若年で発症することから「自分の性格の問題」と勘違いされ、適切な治療が行われていないケースが少なくありません。

社交不安障害が悪化すると回避行動が強くなり、これまで以上に社会生活を送ることが困難になってしまう可能性があります。

放置して自然に治ることは稀であるため、人前に出るときに強い不安や恐怖を感じるといった場合は、早めに精神科や心療内科で相談してみましょう。

オンライン診療・オンラインカウンセリングの『かもみーる』では、忙しい方や実際にクリニックに足を運ぶのには抵抗がある方も、自宅から自分の好きなタイミングで医師の診察や有資格の心理士によるカウンセリングを受けられます。

社交不安障害にお悩みの方はもちろん、「社交不安障害を持つ家族を支えるのに疲れた」とお悩みのご家族の方もご相談いただけますので、ぜひ一度お気軽にご相談ください。

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