仕事で鬱になる前兆?初期症状・サイン・対処法を解説!受診目安や事例も紹介

更新日 2025年12月16日

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「仕事に集中できない、うまく進まないことが多くなった」
「職場で泣いてしまうことがある」
「仕事で気分の落ち込みが続くのはうつ病の初期症状?」

こんなふうに感じるなら、それは仕事によるプレッシャーやストレスが、心身に症状として現れている可能性があります。

この記事では、仕事でうつっぽくなる・行きたくないときに考えられる原因、仕事に行きたくないときの対処法、考えられる病気などについて詳しく解説します。

「うつかもしれない」と感じるのは、心や身体からのサインかもしれません。悪化させないためにも、自分の状態や気持ちに向き合い、適切な対処につなげましょう。

仕事が憂鬱・つらいのはうつ病?

仕事がつらく感じるという状態自体が、必ずしも「うつ病」であるとは限りません。

職場環境や業務内容、日常生活などの影響によって、一時的に憂鬱・ストレス・疲労が見られることは珍しくないためです。

しかし、意欲低下や気分の落ち込みなど「うつかもしれない」状態が長期間続き、日常生活や仕事に支障をきたしている場合は、うつ病のサインの可能性があります。

精神疾患の労災認定は、過去最多の710人に

厚生労働省では、仕事の負担が大きいことが原因で発症した脳や心臓疾患、精神疾患の状況について調査を行っています。

令和5年6月30日公表の令和4年度『過労死等の労災補償状況』によれば、労災と認められたのは904人で、過去最多を更新。そのうち精神疾患は710人で、4年連続で過去最多を更新しています。

認定を受けていない人、病院を受診していない人を含めれば、その数はさらに多いと考えられます。

このことからも、仕事が原因でうつ病になるケースは決して少なくないことがわかります。

うつとは?うつ病と抑うつ状態の違い

「うつ」という言葉は日常でもよく使われますが、正確には「抑うつ状態」と「うつ病」は違うものです。

抑うつ状態は一時的な気分の落ち込みであり、睡眠や休息によって回復するケースも多いです。

一方、うつ病はこうした症状が2週間以上続き、日常生活が困難になる状態を指します。

現在は抑うつ状態であっても、長期化・重症化するとうつ病に発展する恐れがあるため、注意が必要です。

うつ病とうつ状態(抑うつ状態)の違いとは?症状や治療法、受診した方がいいケース

仕事でうつっぽくなる・行きたくないときに考えられる原因

仕事をするのが憂鬱に感じる・行きたくないと感じることには、以下のようないくつかの原因が考えられます。

  • 環境的な原因
  • 精神的な原因
  • 身体的な原因

原因を知ることで、自分の状態を理解し、対処法を選びやすくなるはずです。それぞれ詳しく解説します。

環境的な原因

職場の環境は、心に負担をかける大きな理由の一つです。

仕事にストレスを感じている人は多く、厚生労働省の『令和5年「労働安全衛生検査(実態調査)」の概況』によれば、仕事に対して強い不安・悩み・ストレスを感じている人の割合は82.7%でした。

  • 長時間労働や休日出勤が常態化している
  • 上司との関係が悪く、叱責・ハラスメントを受けている
  • 成果主義でノルマがきつく、常に数字に追われている
  • チーム内に相談できる人がいない
  • 仕事内容と自分の能力・志向のミスマッチがある
  • 正当な評価を受けられない
  • 勤務時間が不規則で生活リズムが崩れがち
  • 騒音がひどい、不衛生、空調が適切ではないなど集中が難しい環境

上記のような要因が続いたり重なったりすると常に緊張状態が続き、心の余裕が失われてしまいます。

精神的な原因

内面的な性格傾向や心理状態も、うつとの関連があります。特に、以下のような性格傾向がある人はうつ病になりやすいとされています。

  • 完璧主義で、常に成果を求めてしまう
  • 他人に頼れず、責任を一人で背負い込む
  • 「迷惑をかけたくない」と自分を追い詰める
  • 評価や人の目を気にしすぎる

例えば、真面目な人や何でも自分で抱え込んでしまいやすい人は、ストレスを外に出せず、溜め込んでしまうことがあります。

身体的な原因

身体に起こる不調が、心の不調につながることも少なくありません。

  • 睡眠障害(不眠・過眠)
  • 慢性的な疲労・体調不良
  • 内科疾患やホルモン異常
  • 栄養不良・食事不規則
  • 運動不足・体力低下

体調が悪いときは、心も弱ってしまいがちです。仕事を休むことで自己嫌悪に陥るなど、悪循環を生むケースもあります。

仕事でうつっぽくなる・行きたくないときの対処法

うつっぽさは、心からのSOSかもしれません。そんなときは「頑張る」ではなく「立ち止まる」選択が必要です。

ここでは、今日からできる対処法を紹介します。

信頼できる人に相談してみる

まずは家族・友人・同僚・先輩など、自分を受け止めてくれそうな相手に話してみましょう。

「どのように感じているか」「いつからつらくなったか」「何が一番重く感じるか」といった具体的に伝えると、相手も理解しやすくなります。

もしも相談できる人がいない場合は、心療内科や精神科で、医師やカウンセラーに相談することも有効です。

専門家と話すことで、自分の症状がどの程度か、どの治療法が合うかなどを客観的に把握できるようになります。

ストレスを減らす工夫や、「こんな症状はうつ病の可能性がある」など、具体的なアドバイスももらえるため、相談するだけでも心が軽くなることがあるでしょう。

業務の負担を減らす環境調整を行う

可能であれば上司や人事と相談して、業務量・勤務時間・業務内容の見直しを図ることで、負担を減らせる可能性があります。

まずはテレワークや時短勤務などの制度があれば活用し、必要に応じて業務内容の変更や部署異動を申し出るのも有効です。

「仕事の量や内容」「仕事の責任の大きさ」「対人関係」など、仕事のどんなところがストレスになっているのか振り返って考え、原因に合った対処を取りましょう。

休職する

どうしてもつらいときに無理をすると、症状が悪化してしまう可能性があります。

限界を感じているなら、思い切って休職することも立派な選択です。休職期間にしっかり治療と休息を取ることで、回復につながります。

休職は一般的に、以下のような流れで進めます。

  1. 医療機関を受診する
  2. 診断書を取得する
  3. 会社に伝え、休職のための手続きを行う

引き継ぎが必要な業務の場合は、引き継ぎを行ってから休職期間に入ります。

なお、休職制度は会社独自の制度であるため、前もって休職制度について確認しておきましょう。

一定の条件を満たせば「傷病手当金」が利用でき、休職中の生活を支えることができます。

退職や転職を検討する

職場環境が原因で回復が見込めない場合や、復職を考えると体調が悪くなる場合は、退職や転職を検討した方がいいケースもあります。

ただし、抑うつ状態やうつ病のときは判断力が鈍りやすく、衝動的に決めると後悔につながってしまう可能性があります。

まずは一旦休みを取ったり休職したりしてじっくり考えられる状況をつくり、家族や友人、医師に相談したうえで慎重に検討することが大切です。

休職するか、それとも退職(転職)するか、自分なりの判断基準を持っておくと、後悔しない選択につながるでしょう。

仕事でうつっぽいときに考えられる主な病気【特徴・サイン】

仕事で憂鬱な気持ちになったり、行きたくないと感じるとき、うつ病以外にもいくつかの病気の可能性が考えられます。以下で、代表的な病気の特徴とサインを紹介します。

うつ病

うつ病は持続的な抑うつ気分、興味・喜びの喪失などが特徴です。日本人の15人に1人が一生のうちに経験するといわれ、珍しい病気ではありません。

以下のような症状が2週間以上持続し、日常生活にも影響する場合、うつ病の可能性があります。

精神面のサイン

・気分が落ち込む
・やる気がなくなる
・何をしても楽しくない
・自分を責める思考が止まらない
・将来への不安や絶望感
・注意力・判断力の低下

身体面のサイン

・動悸

・頭痛

・吐き気

・倦怠感

・肩こり、腰痛

・便秘や下痢

・めまい

・睡眠障害

また、上記のようなうつ病の初期症状が、「仕事が進まない、集中できない」「職場で泣いてしまう」のような形で現れることもあります。

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適応障害

適応障害は、ストレス要因(環境変化・仕事・人間関係など)への反応として出る心身の不調です。

うつ病は原因がはっきりしないことが多い一方、適応障害はストレス源がなくなれば改善しやすいという特徴があります。

適応障害とうつ病は症状が似ており、適応障害からうつ病へ移行してしまう方もいます。

精神面のサイン

・強い不安や焦り
・涙もろくなる
・攻撃的になる
・感情の波が激しくなる

身体面のサイン

・動悸
・頭痛
・吐き気
・倦怠感
・肩こり、腰痛
・睡眠障害

行動面のサイン

・仕事へのやる気が低下する
・小さなミスが増える
・無断欠勤や遅刻が増える
・コミュニケーションを避ける
・過度の飲酒、暴飲暴食

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不安障害

不安障害は、過剰な不安や恐怖が続く精神疾患の総称です。

仕事に関係するタイプとしては、パニック障害・社交不安障害・全般性不安障害などがあります。

不安障害とうつ病は併発しやすく、悪化するとうつ病を引き起こすケースも少なくありません。

種類

主な特徴

サイン・症状

社交不安障害

上司や同僚の前で発言できない、人前で極度に緊張する

・汗が出る

・声が震える

・逃げたくなる

・顔が赤くなる

パニック障害

通勤電車や会議中に突然の動悸・めまい・息苦しさを感じる

・動悸

・過呼吸

・めまい

・死への恐怖

全般性不安障害

常に悪いことを考えて不安が止まらない

・落ち着かない
・過度な心配
・緊張感がある
・怒りっぽくなる

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燃え尽き症候群(バーンアウト)

仕事に全力を注いできた人ほど注意が必要なのが、燃え尽き症候群(バーンアウト)です。主に、以下の3つの症状が見られます。

  • 情緒的消耗感(例:やる気が起きない、疲れ果てた感じがする など)
  • 脱人格化(例:自分の仕事に価値を感じなくなる、仕事の結果をどうでもいいと感じる など)
  • 個人的達成感の低下(例:目標を達成しても達成感がない、やりがいを持てない など)

まさに「燃料切れ」のような状態で、まずはしっかり休息することが必要です。

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休日は元気なのに平日がつらい「非定型うつ病」とは?

「非定型うつ病」は、気分反応性(良いことがあると一時的に気分が良くなる反応)や過眠・過食傾向など、通常のうつ病と異なる特徴があるタイプです。

休日は比較的元気なものの、平日になると症状が強まる場合、非定型うつ病の可能性も考えられるでしょう。

非定型うつ病は周囲からは元気に見えることもあり、「仮病」「甘え」など誤解されやすいですが、本人は大きな苦痛を抱えています。

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仕事でうつっぽくなる・行きたくないときの受診目安

仕事に行くのがつらいと感じたとき、どの程度で医療を受けるべきか迷う方も多いでしょう。以下は、受診を検討すべき目安となるサインです。

  • 2週間以上気分の落ち込みが続いている
  • 寝ても疲れが取れない
  • 常に身体が疲れている感じがする、だるさを感じる
  • 不眠気味、眠りの浅い日が続いている
  • 食欲がわかない、食事を美味しいと感じない
  • 集中力や判断力が低下している

「うつっぽい気がするけど、自分ならまだ大丈夫」「このくらいは大したことない」など自己判断で放置すると、症状がどんどん悪化してしまう可能性があります。

「仕事は行けるから、普通に生活できるから、うつ病ではない」とは限らないため、注意しましょう。

心療内科や精神科では「なるべく薬は使わずに治したい」「まずはカウンセリングを受けてみたい」など、希望を考慮した治療が受けられるため、まずは一度相談してみましょう。

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仕事の業務内容変更・プレッシャーでうつ病になった事例

厚生労働省の働く人のメンタルヘルス・ポータルサイト こころの耳では、仕事の影響でうつ病を発症した男性の事例が詳しく紹介されています。

この事例は、能力や評価が高かった34歳の男性社員が、急なプロジェクト変更や過度のプレッシャーによりうつ病を発症したケースです。

男性は社歴8年目で、おとなしい性格ではあるものの人当たりが良く、能力も高く評価されていました。

しかし、担当業務の分野外での対応を強いられ、自宅での勉強や努力を続けるものの、納期や失敗に対する上司の厳しい叱責が重なり、徐々に自己否定感や不安、不眠・食欲不振などの症状が見られるようになっていきます。

ときどき欠勤することを心配した上司が本人と面談し業務軽減を図るも改善せず、産業医からの診断を受けて治療と自宅療養を開始。

その後の復職までの段階的な様子が紹介されています。

うつ病発症に影響したと考えられる要因

・努力家で妥協しない性格

・プライドがあり、周囲に質問や助けを求めることができなかった

・分野外の慣れない仕事に取り組んでいた(これにより失敗も増えた)

・職場の雰囲気がとげとげしく、ストレスが溜まる環境

・プロジェクト責任者による激しい言葉での叱責

このケースの場合、上記のような妥協しない性格や高いプライド、職場環境など複数要因が重なることで、うつ病の発症につながったと考えられます。

うつ病は「甘え」ではなく、むしろ「自分の限界を超えて頑張りすぎた」ことでエネルギーを使い切ってしまい、発症するケースが少なくありません。

早期に兆候に気づき、適切に対処して悪化を防げば、うつ病の発症を回避したり、回復を早めたりできます。

「まだ大丈夫」「自分がうつ病になるはずない」と軽く考えず、まずは一度専門家に相談してみましょう。

仕事が憂鬱なのはうつ病の可能性も。一人で抱え込まず相談しよう

仕事のストレスは、誰にでも起こるものです。

しかし「朝起きられない」「涙が出る」「集中できない」といった症状が続く場合は、限界のサインかもしれません。

我慢を続けると、症状が悪化して長期休職や離職につながるリスクもあります。闇雲に無理をするよりも、一度立ち止まって休むことも大切です。

家族や同僚に相談するのが難しい場合は、専門家に話を聞いてもらうといいでしょう。

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